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ウル・ティタ:悲劇

「ウル。起きなさいよ、ウル!」


「なかなか返事がこないわね。ウル君、朝が本当に苦手なのね。大尉の所に泊まっていた時も、大尉が相当手を焼いていたらしいもの」


 ドアを何度もノックする。何度も呼び掛けるも返事はない。ティタは、仕方なく苦肉の策に出た。


「起きなさい!」


 ドアのノブをコアの力で変形させると、一気に室内へと入っていく。案の定ウルは、ベッドですやすやと寝ていた。仰向けになっているウルのお腹の上には、ルーが丸まって寝ている。


「飼い主に似るとは言うけれど、朝寝坊なとこまで似なくてもいいよ!」


 ウルの耳朶みみたぶを引っ張り、頬を引っ張り……挙げ句、鼻を摘まんだり。ティタによる目覚まし攻撃に観念したのか、ウルが堪らず起き上がった。


「おはよう。今日もゆっくりなお目覚めだよ」


「……? ゆっくり……何時?」


「九時だよ。チェックアウトまで、あと三十分」


「もうチェックアウトかぁー~! 仕方ない、起きるって」


 顔を洗いに洗面所に向かうウル。その後をちょこちょこ付いていくルー。飼い主と飼い猫の行動に、キリナは可笑しくなってしまった。


「キリナさんの前なのに」


「マイペースでいいわね。ワタシ、ウル君を見習おうかしら」


「キリナさん!」


「ふふ。今のは冗談だけど、ちゃんと自分を持たなければならないのは確かよ。ワタシは職業柄、特にね」


 洗面所から、バタバタと駆けてくるウル。歯ブラシを加えながら窓を眺める。


「コラ! ちゃんと磨きなさいよ」


「くぁんびぃぶぅんばぁ! びぃぶぼぉ!」


「ウル君!?」


 口を濯ぎに洗面所に戻ったと思ったら、さっさと窓際に帰ってきた。ウルの顔が真剣である。ルーもどこか落ち着いていない。


「ウル……もしかして」


 コクッと黙って頷くと、足早にチェックアウトを済ますウル。その後を必死に付いていくティタとキリナ。


「ティタちゃん。ウル君は!?」


「第六感が働いたんだと思うんです。ウルの向かう先には……ギルが居ます!」


※ ※ ※


「しぶとい。そんなにオレに楯突いて楽しいか?」


「はあ……はあ……。師匠の仇ー!」


「……金縛り……か。オレに楯突くのも頷ける。しかし、縛るだけでは敵わないぞ? オレには」


 ギルの左目が光る。立っているのもやっとな程の傷を負っているダイの背後に、巨大な穴が発生する。


「瞳術使いを敵に回したのが、お前の運の尽きだ」


 巨大な穴へと吸い込まれていくダイ。次々に穴を発生させていくギルは、ダイを穴から穴へと飛ばしていく。身体の自由が利かないダイは、されるがままだった。


「そこの! 指名手配中のギルだな! 手を挙げろ」


「軍の人間か。余計な邪魔を」


 ギルを取り囲む軍人達だったが、ギルが発生させる穴の前では無力だった。吸い込まれては吐き出される。腕や足を折られる者もいた。


「お前には大サービスだ。師匠の元に送ってやるよ!」


 穴から武器を取り出すと、それをダイに突き付ける。ニンマリと微笑むギルに、ダイは恐怖しか感じれなかった。


「……師匠の造った物の方が……全然斬れそう……だ」


「そうか。試してみようか」


 それは、一瞬の出来事だった。スパッと、二の腕から下が斬り落とされる。短くなった左腕に、ダイは言葉を失った。だが痛みはやって来る。激しい痛みがダイを襲う。言葉にならない声をあげながら、二の腕から流れ出る血によって赤く染まる半分の腕に絶望した。


※ ※ ※


「どうなってるんだって!?」


 軍人達が倒れている異様な光景に、ウルは目を丸くする。緊張感がウルを包む。


「また会ったな。オレのファン」


「ギル。やっぱ居やがったか」


「まあいいや。ああ、預かりもんだ、ほれ」


 放り投げられる布袋。それを受け取ったウルは、重さで尻餅をつく。それを見たギルは笑みを浮かべる。


「何だよこれ」


「開ければ分かる。見るのはオススメせんが」


「はあ?」


 ギルの忠告を無視して封を開ける。その中身を見たウルは絶句した。感情の概念が壊れていく。喜怒哀楽のどれにも当てはまらないモノがウルから湧き出てきた。激しい感情を炎に変えて、ウルは涙を浮かべながら立ち上がった。


「知っていた〝頭〟か?」


「ああ」


 ウルはギルを睨む。激しい殺意を向け、ウルは戦闘態勢に入った。



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