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メイル:歩幅

「さて。メル、これからどうしたい?」


「ボクは、メイルとなら何でも大丈夫なのだよ」


「そうか……じゃあ」


 メイルにはある目的が出来ていた。丸腰ではメルを守れない。その為、護身用の武器を探していた。鍛冶屋が有る街に行けば、求めている武器と出会えるかも知れないと、メルさえ良ければ行きたいと思っていたのである。


「どこでもいいんだよな?」


「メイルの行きたいところなら」


「済まない。少しワガママに付き合ってもらう」


 メイルが、メルの歩幅に合わせて歩く。そもそもメイルが武器を欲したのには理由があった。


※ ※ ※


 遡る事、二ヶ月前。メイルとメルとでの旅を再開して暫くの事……。


「何なんだ、お前達は」


「銀髪のガキ。さては潜りだな? オイラ達を知らないとはよ」


「リバルナ盗賊を知らないっぺ?」


 上半身裸の男達が棍棒を持って、小さな街を襲っていた。偶然居合わせたメイルだったが、この時はまだ、瞳術を上手く使いこなせてはいなかった。


「盗賊? 僕は生憎、盗賊なんかに興味なくてね。興味がないから関心を持てない。リバルナ? 全く知らないぞ」


「知らなくて正解だったな。オイラ達、リバルナ盗賊の恐ろしさを思い知らせてやる」


 街を襲っていた盗賊達が、一斉に駆け寄ってきた。自分達の邪魔をしたメイルのことが気に食わないらしい。取り囲まれるメイル。この時も、メイルは丸腰だった。


「「ヤー!」」


 振り下ろされる棍棒。丸腰のメイルには、それを防ぐ手段はなかった。一通りに殴り終えた盗賊は、盗んだ金品を手に街を出ていく。道端に倒れるメイル。なんとか街の人達の手当てを受けて、事なきを得たが、メイルの気は全く晴れなかった。


「僕……何にも出来ずに……」


「キミのお陰で命は助かったんだ。感謝しているよ、ありがとう」


 お礼を言われて悪い気はしなかったが、やはり素直には受け入れられなかった。今度また盗賊に襲われたとき、どうやって対処すればいいのか……メイルの思考はそれで一杯だった。


「メイル!?」


 街の人から知らせを受けたメルが駆けてきた。街に買い物へ出ていた為、メイルとは別行動だった。


「メル……って、何で泣いている!? 大した事にはならなかった。安心しろ」


「出来るわけない! メイルにもしもの事があったら……! ボクは……!」


「済まん。もう泣かないでくれ」


 優しくメルの頭を撫でながら、メイルは心に決めていた。今度盗賊に会ったとき、もう負けないために強くなろうと。メルを悲しませない為にも、〝左目〟と戦う為にも、と。


※ ※ ※


「メイル、ボクに無理して合わせる必要なんかないのだよ? メイルのペースで歩きなよ」


「並んで歩くのは嫌か?」


「違うのだよ。ボクは、メイルに無理をしてほしくないだけなのだよ」


「無理なんかしてないぞ。僕は僕のペースで歩いている。それに……」


「それに?」


「……こういうのも悪くない」


 メルの横に居ることが、いつの間にか当たり前になっていた。そして、そのことを素直に受け入れている自分がいる。メイルの心境に変化があった。


「メル」


「うん? どうしたのだよ、改まって」


「僕は、その……君のことが……」


 歩みを止めて向かい合う。メイル自身、自分で何をしているのか分からないでいた。只、言わなければ前に進めないという〝なんとなく〟がそうさせていた。


「メイル?」


「……メル、君のことが好きだ!」


 メルの目が点になる。言葉の意味は理解できるが、言葉の真意が分からないでいた。身体中が熱くなる。メイルに真意を訊こうと口を開く。だがしかし、声が出てこない。混乱の果て、メイルの胸に飛び込んだ。


「「……」」


 二人の間に続く沈黙。暫くしてようやくメルが顔を上げた。目を真っ赤にしている。メイルはビックリするが、メルはそのまま背伸びをした。ビックリしていたメイルの目が更に大きく見開いた。


「ボクだって、メイルのことが大好きなのだよ!」


 ぎゅっと手を繋いだ二人。同じ歩幅で歩く二人は、見えない糸で無事に繋がれたのだ。メイルは願った……『大切な人を守る為に、強く在りたい』と。



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