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ウル・ティタ:互角

 ティタから槍を受け取ったウルは、それを素早く構える。炎で染められた槍は、触れれば只では済まない程の熱を帯びている。


「炎の槍、か。厄介ではあるだろうが、大したことはなさそうだ」


「そいつはどうかって!」


 力一杯に地面を蹴りあげ突っ込んでいく。勢いよく突いた槍は、ギルを捉えるには至らない。ギルの動きを予測するのは並大抵ではなかった。


「どうした? 当ててみるんだな」


 ギルの突き出した右拳が、距離を取っているウルの目前へと現れる。ウルはその隙を見逃さず、槍をギルの拳に突きだした。刺さりはしなかったが、ギルの表情に変化があった。


「……熱気か!」


 拳を押さえるギルの姿を見たウルは自信をみせる。やはり、ギルも炎には弱いのだ。それを見ていたライドは、煙草を取り出した。


「ウル。私も炎を出そう。ギルフォードの戦意を削ぐ」


「いんや。大尉は稲妻を頼むって。痺れさせて奴の動きを封じるんだ」


「……よかろう。ならば、攻撃は任せたぞ」


 ライドに稲妻が発する。狙いを定めたライドは迷わずギルに放った。なんとか避けたギルだったが、ライドの追撃には反応出来ずに食らってしまう。痺れて動けなくなったギルは、抗いも虚しく這いつくばった。


「ギルフォード。お前の負けだ、降参したまえ。兄としての忠告だ」


「だ……れが……!」


「呂律もろくに廻らんクセに、一丁前に反抗か。その威勢は買おう。が、お前は罪を……人を殺めた。十九歳という年齢を考慮しても、極刑は免れんぞ」


 ライドの目は冷たく、それでいて怒りを秘めていた。軍の人間として〝罪人〟を見過ごす訳にはいかない。しかし、目の前に居る〝罪人〟は〝弟〟でもある。軍には素性を隠している。ギルの捜索に出れたのはその為だ。


「観念するんだ、ギルフォード。私の手で捕まえてやることが、お前にしてやれる配慮だ」


 手錠を掛けようとするライドだったが、実の弟に手錠を掛けることに一瞬の迷いが生じた。その一瞬がギルにチャンスを与えてしまう。ギルの左目が光る。ギルの周りに複数の穴が現れた。


「馬鹿な兄貴だ。そんなんで軍人が務まるかよ。甘い……兄貴は……どうしようもなくだ」


「テメエ、何する気だって!」


「逃げさせてもらう。流石のオレも数的不利とみた」


「逃げるだって!? この状況で」


「瞳術は奥深い。まあそれは、お前の変身も同じだが」


「ギルフォード!」


 穴の中へと吸い込まれていくギルに対して、ライドとウルは呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。


「……何をモタモタとしていたんだ、私は! ……」


 ギルという嵐が去り、ルワンに穏やかな風が吹き抜ける。だが、ライドの心境は穏やかではなかった。兄としての自分と、軍人としての自分。ライドの心を強く締め付けていた。

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