表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/130

メイル:緊張

 メイルは困っていた。今、目の前で繰り広げられている父娘の言い争いを、どう収束させようかと考えていた。


「パパには関係ないのだよ。ボクの想いは、ボクのものだよ!」


「パパは認めない。ぜーったい認めない。十歳で色恋だなんて認めない!」


 両者互いに譲らない平行線。とてもメイルが口を挟める隙はなかった。


「ボクは、旅を続けるのだよ! ボクの旅に口出しは無用なのだよ!」


「〈精進の儀〉だから、そこは仕方ない……が、異性と旅をするのは認めない」


「……あの……えーっと」


 無理矢理会話に入ったメイル。メルの父親は相変わらずメイルを鋭い目付きで見る。なんとかそれを耐えながら、メイルはメルに提案した。メルは納得していない。


「メイルはボクが嫌いなの!?」


「そういう問題じゃないぞ。我が子を大事に思うのは、親にとって当たり前だ。ここはひとつ、僕とは離れて旅を続けるんだ。まずはひとつ、心配事を減らしてあげるんだ」


「ボクはメイルと離れたくないのだよ。メイルと会えていなきゃ、ボクはリリッシュにも着けずに挫けていたのだよ」


「だからだ。だからまずは、君が一人でも立派に旅が出来ることを証明するんだ」


 メイルの眼差しが、メルの心に突き刺さる。メイルの言っていることは充分に理解できる。理解はできるが、〝想い〟が決断を鈍らせる。メルは、メイルの身体に飛び付いた。驚くメイルだったが、拒絶をすることはなかった。頭を撫でてゆっくりと剥がす。泣いているメルの涙を拭って、にっこりと微笑んでみせた。


「メルのお父さん。僕、彼女とはここで別れます。だけどお願いです、彼女と会うことを許可してください。彼女の気持ちは承知してますが、僕にとっては、まだ友達です。友達と会うのは許してほしいんです。お願いします!」


 頭を下げたメイル。人に頭を下げるのは、旅を始めて二度目だ。最初は自分の為だったが、今回は他人の為である。それを見たメルの父親は、『分かった』と了承した。メイルは深い溜め息を吐いて座った。


※ ※ ※


「それでは気を付けて。無事を祈る」


 メルの父親がメルを見送る。そこにメイルの姿はなかった。メイルとは少し前に別れたのだ。


(……メイル……メイル……)


 メルの心は、恋心一色だった。メイルのことを考えまいと思えば思う程、その想いは強くなってしまう。

 ポツリポツリと涙を流して立ち止まる。大粒の涙が地面を濡らす。彼女の視界は涙で閉ざされた。


(ボクは……こんな気持ち……初めてだったのだよ!)


 十歳の初恋。その初恋は実らず埋もれた。芽吹くことを許されなかった種は、芽吹くことを諦めた。種は種のまま、想いを封じ込めて埋まることに決めたのだ。


(バイバイ。ボクの恋)


「オーイ? さっきから呼んでいるんだぞ」


「え!?」


 木に凭れかかり呼ぶ少年。金髪の少女の初恋の相手が、目の前で待ち構えていた。


「待ちくたびれたぞ。僕をいつまで待たせる気だったんだい?」


「ど……して?」


「友達と会うのは許してもらえたろう? 僕はそれを守ったまで」


「最後のお見送りのつもりなの?」


「何を言ってるんだか。ほれ、行くぞ」


「え、でも!?」


「いつまでも追っては来ないさ。あの場は、ああでも言わないと収まらなかった。それじゃ不満か?」


「ボク、メイルと一緒に居たい! 居たいのだよ!」


 メイルに駆け寄り抱き付くメル。メイルは案の定照れている。そんなメイルの頬に柔らかい感触が伝わった。


「君は何を!?」


 耳まで赤くなるメイルをよそに、メルはとびっきりの笑顔を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ