約束の日
季節は冬から春へ。春の心地いい陽気が、これまた心地いい睡魔となって襲い掛かる。
ベッドの中で丸くなる少年。鳥の囀ずりに目を覚ましてはいたが、なかなかベッドから出れずにいた。
そんな少年を起こしに来る少女。少年の名前を呼びながら、掛け布団を勢いよく剥いでいく。
「もうちょっとってェ」
「だーめ! 少しずつ早起きを出来るようになってきてるんだよ。ここで挫けたら駄目」
黒髪の少年ウルは悶え、茶髪の少女ティタは制する。二人にとっては最早、恒例と化していた。
「相変わらずの朝寝坊か?」
「ウルくんってば、ティタちゃんに起こされたくて起きないのかな?」
銀髪の少年メイルと金髪の少女メル。
ウルの寝起きの悪さを知っている為か、あまり気にする素振りはなく、ガラガラと、部屋の窓を開ける。
「ウル。あまり待たせるのはよくないぞ」
「……待たせる……あ!?」
ガバッと飛び起きるや、せっせと身支度を終えたウル。シャキッと醒めた目を見開いて深呼吸をする。
「ロイズ司令部だっけって?」
「場所を指定したのはアンタよ? 自分で言っといて忘れるわけ!?」
「あはは!」
髪を掻きながら苦笑いをするウル。
三人は、堪らず溜め息をついた。
※ ※ ※
「いらっしゃい。大尉の部屋で待ってるわよ」
金髪の髪を纏め、軍服に身を包んだ女性の名はキリナ。階級は少尉。メルの実姉でもある。
そんなキリナに連れられて、ウル達は大尉の部屋に向かう。ウル達にとっては、随分と通い慣れた部屋だ。
「来たのだね。時間通りとは素晴らしい」
ウル達を出迎えた男性の名はライド。短く髪を整えて、軍服を着こなすその姿に心奪われる女性は多いらしい。階級は大尉。
「あれれ? どこに居るのだよ」
「お手洗いに行っている。直ぐに戻ってくる筈だ」
ライドの言葉通り、待ち合わせの者は直ぐに戻ってきた。眼帯を着けた少女メリーである。
「早い。焦っていたの?」
「メイルの奴が五月蝿くてな。全くって」
「五月蝿いとは何だ! 当然だろう!」
「だってって」
「……相変わらずのようだ。ウルは変わっていない」
「変わらないというのも困りもんだぞ?」
「変わらないのも悪くない。ウルはウルでいい。ウルだからいいんだしょ」
その表情を緩ませて、にこやかに笑うメリー。
今日から彼女は旅に出る。〈精進の儀〉という三年間の旅だ。故郷を離れ、様々な場所を訪れる。
「メリーちゃん。準備は万端なの?」
「うん。そう言うメルは?」
「ボクは万端なのだよ! ね、ティタちゃん」
「当然よ。〈精進の儀〉の先輩として、しっかり後輩のメリーちゃんの見本にならないと、ね」
「これはこれは頼もしい発言だって。俺もその心構え、見習わないとって」
大尉の部屋を後にしたウル達は、手荷物の再確認をする。充分に確認を終え、旅立ちの時間を迎える。
「皆、気を付けて。旅のご武運を祈っているわ」
「行ってくるのだよ、お姉ちゃん!」
「行ってきます、キリナさん!」
メルとティタの声に、手を振って応えるキリナ。
キリナの隣では、ライドも手を振っている。
「気を付けたまえ。世界は広い。精々頑張りたまえ」
「はい、行ってきます」
「その言葉、そのまま返してやるって。大尉」
「行ってくるしょ」
五人の少年少女が、ロイズ司令部から旅立つ。
ウル、ティタ、メイル、メルにとっては二年目の、メリーにとっては初めての〈精進の儀〉が始まった。




