↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/40

二十四話 凶刃

結局、火蜥蜴《サラマンダー》討伐で押収した魔道具の出所は分からずじまいだった。


「……やはり心当たりはないか。」

「うん、中央のと魔道具とも全然違う。知らない組み方。」

「そうか。」


「どうします、副官殿。」


難しい顔をするオーウェンに対して、私は軽く肩をすくめた。


「なにもしない。」

「……何故?」

「どうせこれで終わりではないだろうからな。放っておいても手掛かりが向こうから来る。」

「そういうものですか……。」

「多分な。ヴォルフには声をかけておく。」


わざわざ細工をした魔物を寄越してまで、相手はこちらを探っているのだ。

偵察だけで終わる道理はない。


確実に、まだ次がある。


備えはしておくに越したことはないが、手掛かりがない以上、今できることは少ない。


私は山積みの雑務を片付けるべく、執務室へと向かった。


普段通り仕事をして、飯を作り、風呂に入る。

そしてそのまま自室に戻って、私は眠りについた。


……頬に微かな風を感じて、私は目を覚ました。

窓は開いていなかったはずだ。異常はそれだけではない。

……背後に誰かがいる。


その気配は、静かだが確かな殺気を伴っていた。


「[焔よ]。」

私は素早く精霊の言葉を発する。


背後で炎が逆巻き、悲鳴が上がる。

背後に立っていた気配が、もんどり打って床に転がった。


私は勢いよく布団を跳ね除け、即座にその人影を押さえ込んだ。


「[雷よ]。」


殺さない程度に魔法を行使し、相手を無力化する。

ひっくり返して覆面を剥ぐが、見たことのない顔だった。


「……何者だ?」


ここで、詰所の方からバタバタと足音がした。

まだ起きていたのであろうイアンと、一拍遅れでフランが飛び込んできた。


「ノーラ殿、物音がしましたが……っ、これは……」

「姉さん、何かあったの?……!!」


二人の視線が、刺客へと向けられる。


「刺客、ですか……。」


イアンは険しい顔で刺客を見下ろし、フランは青ざめた顔で絶句していた。


ここで、もう一つ足音が近づいてきた。見回り中のオーウェンだ。


「……副官殿、何事ですか。」

「ああ、オーウェンか。……刺客を捕らえた。」

「刺客……!?」


ここで通信用のペンダントに魔力を流し、アーノルドとヴォルフにも緊急事態を知らせる。

気絶している刺客は、後ろ手に縛り上げ拘束しておいた。ついでに脚も縛り上げておく。


ヴォルフが部屋に入ってくる。

そして縛り上げられた刺客を見て、取り乱すこともなく言った。


「……おいでなすったか。」

「ああ。」

「アンタら、何でそんなに落ち着いてるんです……。」


我々の態度を見て、オーウェンが渋い顔をした。


「……何事だ。」


アーノルドが戸をくぐって、中に入ってきた。

……こいつまで居ると、流石に部屋の中が狭い。


「刺客だ。寝込みを襲われかけた。」

「……なるほど。」


アーノルドの双眸が、わずかに細められる。


「無事か。」

「無論だ。」


短く安否確認を済ませ、私は刺客へと向き直る。

そして転がっている刺客の側に寄り、肩を掴んで揺すり起こした。


「………っ!」


「目が覚めたか。貴様には色々と聞きたいことがある。」


「だっ、誰が……!」

「素直に吐くのならば、助命を約束しよう。そうだな、領主殿。」

「……ああ。」


刺客の瞳が微かに揺れる。交渉の余地はありそうだ。


「雇い主について、教えてもらおうか。」

「俺は……」


男が何かを話しかけ、すぐに不自然に目を見開いた。

そのまま苦しそうにもがき始める。


「あ……、……ッカ、ハ……ッ」


そして激しく痙攣すると、男はそのままガックリと項垂れた。私は男を仰向けに転がし、軽く揺する。


「おい……!……死んだ、のか?」

「恐らくは。……呪いの類でしょう。」


イアンが眼鏡を上げながら推論を述べた。


そしてフランが、その背後で小さく呟いた。


「…………口封じ……。」


重苦しい沈黙が、部屋の中に流れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。