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二十三話 掃討

収穫祭から少し経ったある日。


詰所に戻ると、なにやら兵の出入りがやけに多いことに気がつく。


「オーウェン、なんだか慌ただしいな。」

「ええ。たった今報告が上がったんですが、近辺で魔物が出まして。……いま討伐隊を編成中です。」

「またか。……最近多いな。」

「ええ、本当に。」


この間は魔鋼窟近辺に魔怪鳥の群れ、一昨日は地下水路に大岩鼠の群れ。

今日は城壁周辺で火蜥蜴《サラマンダー》が複数出たとのことだ。


「火蜥蜴か。厄介だな……今回は私も向かおう。」

「助かります。」


討伐隊と共に、城壁へと向かう。

周囲の地面や城壁に、複数の火蜥蜴が確認できた。


「……成体か。ついてきて正解だった。」


火蜥蜴の成体は、馬程度の大きさがある。

それが轟轟と燃え、火を吐いて走り回るので厄介極まりない。

オーウェン達だけでも対処は可能だろうが、手こずる事は間違いなかった。


「……弩、構え!」


オーウェンが声を張る。

弓兵たちが弩を引き絞り、城壁の火蜥蜴へ放つ。

……なかなか当たらない。


「やはり速いな。」

「ええ。面倒ですね。」


ならば。

私は翼を広げた。


「…….あれは引き受ける。地上の個体に対処してくれ。」

「承知しました。」


私は地を蹴って飛び立ち、真っ直ぐ目標に向かう。

火蜥蜴の吐いた炎が襲いかかるが、それを魔力に分解して吸収する。


「落ちろ。」


私は火蜥蜴の尻尾を掴み、腕力でもって壁から引き剥がすと、遠心力を乗せてそのまま地上へと投げ下ろした。


したたかに地面に叩きつけられてもがいている火蜥蜴に、腰に携えていた剣を抜き、投げつける。

剣は火蜥蜴の頭を地面に縫い止め、そのまま息の根を止めた。


「……あちらもか。」


向こうで勢いよく壁を駆け上っていくもう一匹を見咎め、私は再度羽ばたく。

そしてそのまま滑空して火蜥蜴の背後に回り、空中で一回転すると、踵落としの要領で頭を蹴り抜いた。

本当は殴り潰すのが早いのだが、それをすると城壁を傷めるのでしない。


城壁の下で、待ち構えていたオーウェンが落ちた火蜥蜴の首を落とした。


「お見事です。」

「ああ。」


あとは、地上の火蜥蜴を二頭残すのみだ。

地上部隊は動きの速い相手にしばらく手こずっていたが、最終的には討伐を成功裡に終えた。


あとは後始末だ。


「……?」


死骸を片付けていて、ふとその首元の鱗に違和感を覚える。鱗をめくってみて、私は眉を顰めた。


「……オーウェン。」

「何ですか。」

「これを。何だと思う。」

「…………何でしょうか、これは……金属の楔?」


引き抜いてみると、魔石が埋め込まれた楔のようなものが出てきた。明らかな人工物だ。


「……何だと思う。」

「私には何とも……。」

「そうか……。」


門外漢二人が考えていても結論は出ない。

ひとまず持ち帰り、タルトに分析を頼むことにした。


現場をオーウェンに任せて先に戻ると、私は工房にいたタルトに声をかけた。早速先ほどの装置を検分してもらう。


装置を分解しながら、タルトは首を傾げている。


「どうした、タルト?」


「……んー……なんか変?」

「タルトでも分からないか……。」


私の問いに、タルトが首を横に振る。


「んーん。これね、つけた相手の見てるものを、見れるんだと思う。」

「……!」


重要な情報だ。私はタルトに先を促す。


「……なにが変なんだ。」

「仕組みはわかるけど、こんな組み方見たことない。」


これもまた無視できない情報だった。

タルトが見たことがないとなれば、この近辺で作られたものではないのだろう。


「そうか、……ありがとう。」


軽くタルトの頭を撫で、工房をあとにする。

向かう先は執務室だ。


「アーノルド、私だ。居るか。」

「ああ。」


扉を開け、私は即座に切り出した。


「急ぎの話がある。」


アーノルドの錆色の瞳が、こちらを見た。


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