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二十話 土産

運び屋を伴って、辺境領へ戻る。


運び屋は自分の馬車、私は馬での移動だ。


道中、馬車の在庫から、辺境領の連中への土産になりそうなものを探させてもらう。


「大したもんはねぇけど?」

「ああ。」


……まず目が止まったのは、手鏡だ。


「気になんの?」

「ああ、買い取る。」


品物を端へ避ける。

この間、フランの手鏡が割れたという話を聞いたところだったのだ。


その側に、中身のわからない細工箱があったので、なんなのか聞いてみる。


「あー、そりゃガラクタだな。魔道具のパーツだけどそれだけじゃ使えないぜ。」

「……これも貰う。」

「お前さ、話聞いてた?」


タルトあたりには利用価値があるかもしれない。


「酒はあるか。」

「奥の樽と、そっちの木箱の中身は全部酒だ。」

「……適当なのを二樽と、何か美味い酒を選んどいてくれ。」

「あいよ。」


こっちは詰所の連中とヴォルフの分だ。


イアンの土産は何が良いだろうか。


「インクはあるか。」

「あるけど……それ本当に土産か?」


「……そっちはなんだ。」

「傭兵用の携行食だな。一本やるよ。」


受け取って、食べてみる。味は悪くない。

オーウェンと城の兵が喜ぶだろう。


「箱でくれ。」

「……備品の買い出しになってないか?」

「分からん。」


此処まで選んで、私はふと考えた。

アーノルドにも、土産がいるだろうか。


「悩んでんのか?……誰への土産だ?」

「領主殿だ。」

「領主殿に土産……?」


運び屋が訝しげな顔をする。


「あんまり高級なもんはないけど、……まあこの辺か?」


高価な置物や美術品、宝石の類を薦められるが、どれもピンとこない。


ふと、荷物に混ざっておいてあった木箱が目についた。


「あれは?」

「ん?ああ、大型種族用のペンだな。ほら。……モノは悪くないが、贈答用としては地味だな。」

「なるほど。……これもくれ。」

「こんなんでいいのか。」

「ああ。」


行きと同じようにまた2日かけて、私たちは辺境領へと戻ってきた。


「ノーラ副官殿!戻られましたか!」

「ああ。……ノーラでいい。」


そのやりとりを聞いて、運び屋がなんとも言えない顔をした。


「マジだったのかよ。」

「ああ。」


門を抜け、街へと入る。

そして壁沿いに進み、まっすぐ城へと戻る。


すれ違う領民が。軽く会釈をしたり声をかけたりしてくる。

それに応じていると、隣の運び屋がまた微妙な顔をした。


程なくして、領城へと辿り着く。

門の傍で、ヴォルフが我々を迎えた。


「よぉ、戻ったか。」

「ああ、問題ないか。」

「特にねぇな。土産は?」

「ほら。」


私は酒瓶をヴォルフへ渡す。


「おっ、いいねえ。」

「仕事中に飲むなよ。」

「へいへい。」


門を抜け、中へ入る。


ちょうどいいところにオーウェンが来た。


「……副官殿、戻られましたか。」

「ああ。オーウェン、土産がある。」

「土産ですか?」


私は運び屋が引く荷車に乗った、携行食の木箱を指す。


「携行食だ。味は悪くなかった。兵たちの分もある。」

「おお、ありがたいですね。いただいていきます。」


さて、帰った報告がてら先に土産を配ってしまおう。

家令を探して、運び屋を見つけた旨と、後で執務室に寄る旨を伝える。


「承知いたしました。旦那様に伝えて参ります。」

「ああ、頼んだ。」


城の外へ出る。

タルトは工房にいなかったので、詰所に先に寄る。


「おかえり姉さん。」

「おかえりなさいませ、ノーラ殿。」

「ああ。……ほら、土産だ。」


私は手鏡と、インクの瓶を机に置いた。

「鏡……覚えてたんだ。」

「ああ。」

「ノーラ殿……大切に保管します。」

「いや、使え。」


「頭ァ、俺たちには?」

「お前らは酒だ。まだ飲むなよ。」


わっと歓声が上がる。飲むなとは言ったが多分無理だろうな。


一旦荷車を置きに門まで戻る。

タルトが外から走ってきた。城の外にいたのか。


「あっ、副官さんだ!」

「タルト、どこか出かけてたのか。」

「うん!実験!!」

「そうか。……土産あるぞ。大したモノじゃないが。」

「ほんと!?」


タルトが目を輝かせる。


私はタルトに細工箱を渡した。


「魔道具の部品だそうだ。何かに使えそうか?」

「うん!ありがとう!」


ふと、タルトの目が馬車へと向いた。

正確には、馬車の外に置いてある大きな袋。

中からは、鉱石が幾つか転がり出ている。


「あれ、なに?」

「そりゃクズ魔石だ。大した使い道はないぜ。」

「見せて!」

「おう?」


タルトがクズ魔石を手に取り、ためつすがめつする。


「………。」

「タルト?どうした?」


「……!……、お宝だ―――っ!!!」


「えっ」

「えっ」


「……ねえ、これまだある?」

「ああ、廃品として押し付けられたから大量にあるけど……欲しいなら持ってくかい?」

「いいの?やったーーー!!!」


タルトはいそいそとクズ魔石達を荷車に乗せ、それを引いて工房の方へと去っていった。


「なんだったんだあの嬢ちゃん?」

「いつものことだな。」

「そうか……。」


土産もあらかた配り終わったので、執務室へ報告に向かう。

運び屋の方は、使用人に声をかけて応接間に通してもらった。


「アーノルド、戻った。」

「ああ。……ご苦労だった。」

「運び屋を応接間に待たせてある。」

「分かった、向かおう。」

「あと、土産だ。」

「……土産?」


私は書類の山越しに、箱を手渡した。


「……。ペンか。使い勝手が良さそうだ。」

「ああ。」

「ちょうどペン先が傷んで来ていた。使わせてもらう。」

「そうか。ならちょうど良かったな。」


「先に行っている。」

「ああ。すぐに向かう。」


執務室を後にして、応接間に入る。

領主の椅子の後ろに控えていると、運び屋が声をかけてきた。


「なあ、ノーラ。」

「なんだ。」

「辺境伯領には変人しかいないのか。」

「……そうかもしれんな。」


程なくアーノルドが入ってきて、仕事の話が始まった。

運び屋は、初めこそ緊張していたがすぐに仕事の時の顔になった。


「……では、この条件で。」

「ええ、末長くご贔屓に。」


運び屋とアーノルドが握手を交わすのを、私はなんだか不思議な感じで眺めていた。


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