↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/40

十話 不本意(挿絵あり)

最近、城の連中が私を副官呼ばわりし始めた。


初めはオーウェン。


「副官殿、このあと稽古ですか。」

「……副官?」

「あなたのことです。」

「違うが?」


そして家令の男。


「おや、副官殿。旦那様はあちらです。」

「だから副官ではないが。」


果てはヴォルフ。


「副官になったんだって?大出世じゃねえか。」

「なった覚えはない。」


フランにぼやいたら、


「いいんじゃない、似合ってるよ。」


と返ってきた。

イアンにも訴えてみたところ、


「妥当な評価かと。」


といってにっこり微笑まれた。

見事に味方がいない。


……理解に苦しむが、どうやらこの事は私以外には共通認識らしい。


何故だ。

私はもとよりただの食客であるし、戦闘専門だ。


悶々としながら、普段通り執務室へ飯を持って行く。


「飯だ。」

「ああ。……ノーラ、後で意見を聞きたい。」

「分かった。」


アーノルドが食べ終わるのを待ってから、警備の配置についてああでもないこうでもないと談義していると、執務室に小柄な少女が入ってきた。


名をタルト。ドワーフのはぐれもので、過去にヴォルフが拾ってきたのだという。


挿絵(By みてみん)


「ああ、タルトか。どうした。」

「副官さん、ヴォル爺さまが呼んでる。」

「分かった後でいく。……それと副官じゃない。」

「でもみんな呼んでる。」

「……。」


まっすぐな目でそう言われると、強く否定できない。

とりあえず話を一旦切り上げて、門へと向かう。


「……よう、副官殿。」

「貴様面白がってるだろう。」

「実際面白いからな。」


「……で、何の用だ。」

「いや、タルトが研究費を欲しがってんだ。坊ちゃんに掛け合ってみてくれよ。」

「何で私が……。」

「まあ、お前が一番執務室に出入りしてるからだな。」


これもまた真っ向から否定はできない。


「……。掛け合ってはみるが、期待するなよ。」


戻る途中でオーウェンともすれ違う。


「ああ、副官殿。ちょうどいいところに。」

「だからお前ら……ああもう、何の用だ。」

「装備品の入れ替えをしたいのですが、この一覧を領主殿に渡していただけますか。手が離せなくて。」

「……よこせ。」


他にも何件か伝言やら要望やらを受け取って、執務室へ戻る。


「……随分と大荷物だな。」

「……何でだろうな。」


とりあえず受け取ったものを執務机に広げていく。


「こっちがタルトの研究費のメモ。」

「分かった、見ておく。」

「こっちはオーウェンから預かった装備品の目録。」

「ああ、そんな時期だったな。」

「これとこれは備品の補充依頼か。まあ、買い出しのついでにこちらでやっておく。」

「悪いが頼む。」

「これは飲み屋のツケ伝票か……ヴォルフに返しておく。」

「そうだな。」


「……。」

「……どうした?」


「いや……何でもない。」


何でもなくはない。

今日一日、私が何をしていたか振り返る。


「…………。」


少なくとも、戦闘職の食客はそこには居ない。

私は深くため息をついた。


不本意を顔に貼り付けたまま、私は執務机から書類をひと束抜き取り、黙々と仕分けを始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。