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魔王様はお終い16

 吸血鬼という種はモリビトが作ったという事実は、文明界では知られていない。というかモリビトの存在自体殆ど知られていないのだから当然だ。

 モリビトつまり、私にとってはシルバから聞く吸血鬼の情報は一般には知られていないので、私は吸血鬼には詳しいサイドになる。しかし、吸血鬼という人達と一度も交流した事は無い。

 欲国北部にある交易都市ヤクトで、傭兵団に所属していた少年が吸血鬼だったらしいが、素性や性質や考え方など何も知る時間は無かった。そう言えば、あの少年も厳密には吸血鬼では無い別の種族みたいな話しもあったし、結局は人柄や民族的な事は分からない。


 一方で、吸血鬼の種としての情報はシルバから聞いている。そもそも、鬼と付く種族は通常の人種とは生命の成り立ちが異なる事を示している。

 生命の成り立ちとは、生命樹の在り方であり、吸血鬼は生命樹と血液が密接に関係付けられた種というのがモリビトの定義だ。血液の操作が可能な操血術なる術が行使可能で、それによって身体強化や高速治癒などが可能となるらしい。

 ただし、それだけでは吸血鬼とは呼ばれない。血液を人の限界を超えて操作する血鬼術なる物があり、肉体の構造すら変えて外界の獣並の膂力を発揮するそうだ。当然デメリットもあり、血鬼術を使用した吸血鬼は元の状態に戻る為に、人種の生き血を大量に摂取する必要があるのだと言う。

 血鬼術を使用して吸血を行う事が出来なかった吸血鬼は、人成らざる者に変容してその精神は崩壊し、多くの者は自壊して朽ち果てるそうだ。

 また、吸血鬼から派生した種として血鬼という種も存在する。性質は基本的に吸血鬼と同じだが、血主という個体が数人の血鬼の情報を体内で管理する事で、血鬼は吸血無しで血鬼術の行使から元に戻る事が出来るそうだ。吸血鬼は試作種であり、血鬼は汎用種なのだ。

 吸血鬼はモリビトに作られた。これは事実であり変える事の出来ない事だ。作られたという事は、何らかの設計が成されいるのだろう。色々あるのだろうが、私が受け取ったメッセージは一つだ。吸血鬼は人種を減らす種だ。目的が何なのか不明だが、そう言った機能が備わってしまっている。

 吸血鬼を作ったのは、恐らくイドラというモリビトだろうが、シルバからこの話を聞いたときもイドラの名前は出なかった。モリビトにとっては禁忌の存在なのか、そんな気もしてきた。


 世の中に居る吸血鬼は住まう地域が大別して2箇所らしい、一つは自立を望んだ吸血鬼が北の外界より南下して月光国という国を作りそこに住んでいる。もう一つは、モリビトの庇護を希望し、法国に住まう人達だ。今回、竜宮都市へのモリビト移住のキーになっている吸血鬼は後者である。

 今日は、吸血鬼の代表者とモリビトの管理者の二人に会う予定だ。まずは、モリビト吸血鬼サイドの認識を確認しておこうというつもりなのだ。


 中央島の転移用白樹がある建物にて待機している。ここは、法国、欲国からの転移でよく使うので、転移白樹がそのままドーム状の建造物になっているのだ。転移した目の前にタイタスが居たりして初めての人がびっくりしない為の目隠しも兼ねている。


「今日来るモリビトは誰さんだっけ?」


「ルドルという人体構造の研究者が来ると聞いている。我も会った事は無い」


「吸血鬼の方は?」


「ルドルから紹介するそうだ」


 そんな話をしていると、空間の裂け目的に見える転移門が開き、中から二人の人物が現れた。


 一人はかなり特徴的なフォルムの人だった。尖った耳の特徴からモリビトなのだろうが、黒光りする日に焼けたような肌に、黒いボーリング玉かのようなツルツルのスキンヘッド、そして最も特徴的なのはボディビル世界選手権覇者のようなバキバキの筋肉が満載された肉体だ。服はギリシャ神話の神様が着ているみたいな謎布を巻き付けた感じだ。

 もう一人、こちらは吸血鬼の方のようだが、痩せた面相に大きな赤い瞳がこちらを見ている。白髪に斑らで赤い髪束が混じっていて、返り血でも浴びたのかのように赤が主張している。衣服は白い厚手の全身マント一枚しか分からない。隙間から見える筋が目立った足の甲から、素足でいるということは分かった。


「ルドルか?」


「はい! あてくしが吸血鬼の身体構造研究をしております、ルドルでごぜえます!」


 明らかに調整をミスったマイク越しのような大声量に耳がビリビリする。そして、かなりキャラも濃そうだ。


「声が大き過ぎるな。様々な種が集まる場故、ここでの振る舞いには注意してくれ」


「はい! 理解したのでごぜえます! この度は、シルバ氏にお会い出来て光栄の極みでぇす!」


 声量はましになったが、まだデカい。


「そちらは吸血鬼の?」


「はい! オリガ氏でごぜえます! 現在、最強の吸血鬼であり、あてくしの最大の協力者でありまぁす!」


「静かにしなさい禿頭。なんですかこの磯臭い場所は、わたくしは不愉快です」


 オリガと呼ばれた人は、なかなか粗暴な印象だ。バイスは汚い口調だが、この人は丁寧な言葉で刺すタイプなのだろうか。そして、喋る時に歯が見えたが、ノコギリのようなギザギザの歯が並んでいた。シズキが猛獣の歯だとしたら、この人は大型の鮫という印象だ。


「気分を害したのであれば我が悪い。オリガよ申し訳ない事をした。だが、我々は其方に協力して欲しい事があるのだ。今暫くは我々に時間をもらいたい」


「あなたがわたくしを満足させるに値する力があるのであれば、協力しないでもないです。ですので早く始めてほしいのです。殴り合いを」


 オリガがそう言って瞬間に時が止まった。久しぶりに発動した危機管理高速思考モードだ。という事は何か攻撃が私に向かって来るという事だ。

 そうしてオリガの方を見たが、何故かオリガの像が安定して視認出来ない。まるで磨りガラスの向こう側に居るかのように像がぼやけている。動きはゆっくりのままだが姿を鮮明にとらえられないのだ。

 オリガはシルバに向かっていっているが、このまま攻撃が進行したとして私にどういう危険があるのか把握しづらい。

 そして、この高速思考モード中も普通の速度で動く存在が二人居る。シルバとルドルだ。気付いた時には、既にオリガの拳をシルバとルドルが止めていた。


 時が元に戻り、バシっという乾いた音が響いて、オリガの拳はルドルの掌で止まっており、シルバの杖から伸びた複数の枝がオリガの体を拘束していた。


「オリガ氏! まだ暴れるのは少し早いのですよー!」


「この地の法は、法国でも通用する物だ。この行為が法国でどう扱われるのか知らぬ訳ではあるまい? ならば、今は大人しくしておいてもらおうか」


 流石はモリビトだ。この手の高速戦闘はお手の物で処理してしまう。前にシルバに聞いたが、局所的な予知によって先行して行動出来る防御術がモリビトにはあるそうだ。そうなるとモリビトに攻撃を当てられる存在などいるのだろうかと思ってしまう。


「モリビトはいつもこうだとして、気に要らないのが一人居ますね。そこの黒髪はわたくしの攻撃を察知したのに、何もしなかったのですよね? これは吸血鬼に対しての侮りと見てよいですか?」


 何もしなかっただけで、何故がこの人の機嫌を損ねてしまった。


「あ、気に障ったのなら謝罪します。私は戦闘の素人なので、攻撃がどうのとか言うのは全然分からないんです。さっきもただ動けなかっただけで、侮ったとかそんな意図は全くありません」


 そう言ってすぐにまた時が止まった。止まった時の中で、オリガはいつの間にかシルバの拘束から抜け出していた。

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