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新訳 我と汝  作者: マルティン・ブーバー
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第1部 (29)

 人間のとる二通りの態度により、世界は人間にとって二通りとなる。

 人間は自己の周囲の存在を知覚する。諸事物そのものと存在者を諸事物として知覚する。人間は自己の周囲の出来事を知覚する。諸事象そのものと様々な行為を諸事象として、様々な特性からなる諸事物を、様々な契機から成る諸事象を、空間の網の中の諸事物を、時間の網の中に挿入された諸事象を、他の諸事物や諸事象によって限定され、計量可能で比較可能な諸事物や諸事象を、秩序づけられた世界を、分離された世界を知覚する。こうした世界はいくらか頼りになり、密度と持続性がある。その構成は見渡すことができ、繰り返し取り出すことができる。それを人は眼を閉じて反復し、眼を開けて再確認する。つまりこうした世界は、君がそう思うなら君の皮膚に密着してまさしくそこに存し、君がむしろそう望むなら君の魂の中にうずくまる。こうした世界はまさしく君の対象であり、君の好みに応じて対象であり続けるが、君の外にあっても内にあっても、君には元来よそよそしいままである。君はそうした世界を知覚し〈真理〉として自分に取り入れ、君の取り入れるがままに任されるが、それは自らを君に与えることがない。それについて君は、他者と〈意思疎通〉し得るだけである。そうした世界は、たとえそれぞれの者に異なった姿を見せようとも、君たちに共通の対象として存するべく用意されている。だが君は、そうした世界で他者と出会うことはできない。君はそうした世界がなければ生命を守り続けることができない。その世界の信頼性が君を維持している。しかし君がその中で死ぬならば、君は無の中に葬られるのである。

 あるいは、人間は自分に向かい合うものとして存在や生成に出会うが、それは常にただ単一の実体であり、実体としてのみのそれぞれの事物である。そこに存するものは出来事となって彼に明らかとなり、そこに生起するものは存在として彼にもたらされる。こうした唯一のものとして現前しているのは他には何もないが、こうした唯一のものは宇宙的である。尺度や比較は逃げて消え失せている。測り知れないものがどれだけ君にとって現実になるかは、君次第である。様々な出会いは世界に分類されていないが、それぞれが君にとって世界秩序の象徴である。そうした出会いは互いに結びついてはいない。しかしそれぞれの出会いは、君が世界と結合しているということを君に保証する。このようにして君に出現する世界は当てにならない。何故ならそれは常に新しく君に出現し、君はその世界の言うことを真に受けるわけにはいかないからだ。そうした世界は濃密ではない。何故ならそこでは万物が万物の中に浸透しているからだ。そして持続性を欠いている。何故ならそれは呼び寄せなくてもやって来て、引き留められても消えていくからだ。そうした世界は見通しが利かない。見通しが利くようになそうすれば、君はそれを失うのだ。そうした世界はやって来る。やって来て君を連れ出す。それが君に達しなければ、君に出会わなければ、消えてしまう。しかし再び姿を変えてやって来る。そうした世界は君の外に在るのではなく、君の根源に触れているのだ。そして君が〈我が魂の魂〉と言ったとしても、言い過ぎたことにはならない。しかし用心せよ。それを君の魂の中に移し替えようとすれば、その場で君はそれを滅ぼしてしまうのだ。その世界は君の現存だ。それを有することによってのみ、君は現存を有するのだ。そして君はそれを、経験し利用するために君にとっての対象にすることができ、繰り返しそうせざるを得ないが、こうなるともはや現存はない。君とその世界との間には与え合う相互性が存する。君はその世界に対して〈汝〉と言ってその世界に君を与え、その世界は君に対して〈汝〉と言って君に自らを与える。その世界について君は他者と意思疎通し合うことができず、君は一人でその世界を相手にする。しかしその世界は君に、他者と出会ってその出会いに耐えることを教えてくれる。そしてその世界は、それが何度も到来するという恵みを通して、それと何度も別離するという悲哀を通して、君を〈汝〉のほうに、様々な関係の平行な諸線が交差する〈汝〉の中へと連れて行く。その世界は、君が生を維持するよう君に助力することはなく、ただ永遠を予感するよう君に助力するのみなのである。

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