EXP.9 一攫千金
『Getting rich quick』と書かれ、コインやサイコロの絵が描かれた看板が設置された店である。彼女はその店の扉を開いた。
「やあ、ギル。何か良いものはないかい?」
「ギル」と呼ばれた男は、ドレッドヘアーにバンダナを巻き、エプロン姿という格好の長身の男である。
左手に持っていたカップを右手に持つ布で拭くという作業をしていたが、その手を止め口を開く。
「チームのお誘いなら、お断りだぜ。シア」
「その必要は無いぜ!」
その言葉を聞くと男は、彼女の後ろにいる僕を瞳に写す。
「ま、座れよ」
男の言葉に従い、僕達はカウンターの席に着く。
「注文は?」と聞かれるが、メニューがわからない僕は彼女に視線を送る。
「じゃあ……。コーヒーを2つ頼むよ」
「あいよ」
男はメニューを出し、コーヒーを作り始める。
「で、ボウズ。コイツに何を吹き込まれた?」
「え」
「だから、彼は私のチームに入ってくれたんだってばっ!」
「俺はボウズに聞いてる」と言われ彼女は黙り込む。
「で?」
「シアさんには、ゲームの事を伝授して頂く代わりに僕が彼女の生活を支えるとい事で、交渉成立してます」
「そうか……」
男は納得してくれたようだった……。そんな話をしているとコーヒーが完成し、僕達の前に差し出される。
カップを取り口をつけ、黒い液体を飲みこむ。
僕は少し驚いた。
少しの甘さが苦味を引き立てていて、美味しかった。〈戦闘で言うところの、攻防が完結している〉と言った所である。
「まあまあだね」
「お前は、普通に美味しいって言えねぇのか?」
男はコチラに視線を移し 口を開く。
「口に合わなっかたか、ボウズ」
僕の表情を見て、質問して来る。
カーソルを合わせ、表示された名前を口にする。
「とっても美味しいです。ギルバートさん」
「そうかそうか。ならいいんだ」
男は再び、手元のカップを拭き始める。
「あと、ギルで良いぜ。ボウズ」
静かに時間が流れていく。
……
「で、用件は?」
ギルさんの一言が沈黙を破る。
「とても、言いづらいんだが……。防具が欲しい」
「確かに、初心者用は危険だからな」
ギルさんは、メニューを出し交渉を始めようとする。しかし、
「そんなのじゃなくて。彼女のが欲しいんだ」
その言葉を聞くと途端にギルさんの表情が変わる。気づくと、シアさんの表情もかなり変わっている。
「アイツのは、高くつくぜ」
「何としてでも借金は返す。だから、頼むよ」
「話だけは通してやる」
話が終わると二人の表情が元に戻る。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。ユウキ君」
「はい」
僕達は立ち上がり、店を後にすべく扉の前とカウンターで、あいさつを交わす。ギルさんは笑顔で僕達を送り出した。
店を出ると宿屋に向かって歩き出す。
彼女は、口を開く。
「あの店はお得意様だから。レアドロなんかは、あの店で買い取ってもらうと良いよ」
「わかりました……?」
5分後ー
宿屋の部屋にて、僕達は椅子に座って休んでいた。
「それじゃあ、昼食のために一回ログアウトしようか?」
「そうですね」
視界に映る時間を確認し、返事をする。
「1時くらいで、良いかい?」
「大丈夫です」
返事をしながらメニューを開き、
「じゃあ、落ちる前に……」
彼女のセリフが終わる前に僕は、ログアウトした。
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