EXP.69 想いの強さ
「今、愛しの声がしたっ!!」
実況席からカクトさんの声がする。
「げっ……」
カレンはゆっくりと席を立ち、出口へと向かい始める。
「あ、カレーン! 俺に会いに来てくれたのか? 今からデート行こうぜー!!」
「ギャー、こっち来ないで帰って!」
全力疾走で逃げるカレン、それよりも早いカクトさん。
「光矢っ!」
なるほど、それで武装してたのか。
カレンが弓を構え次々と矢を放っていく、カクトさんは飛翔で躱しつつ距離を詰めていく。
「どんどん迫る悪の手!」
「今回カレンさんは冷静さが欠けているせいで命中率が落ちてます」
「前回やられた事を思い出したのかっ?」
何故か試合よりも熱の入った実況(煽り)を始めるお二人。
とは言っても、止めようにもあのレベルは無理がある……。かといって高レベルプレイヤーは……、
「ガン、neko。二人を止めて来てくれないかい?」
「面倒くさい」「めんどくせぇ」
これである。
「それに」とガンさんが付け加える。
「もうすぐ捕まる」
nekoさんの予言通り、カレンは捕まっていた。
「ギャー! 離せっ いちいちお姫様抱っこをするな!」
「お前はいつだって俺のお姫様だからな」
「ふぇ!? ……毎回毎回、変に口説くのやめて。恥ずかしいから……」
顔を真っ赤に染め手で覆うカレンの声は徐々に弱くなっていく。そんな彼女を抱えカクトさんは会場を後にした。
「あーあ、今日はもう帰って来ないな〜あれは」
「デートって言ってましたもんね……」
シアさんと林の言葉を聞き心の中で、
カレンって色々と大変だな〜と呟いた。
…
【楓月 視点】
「お疲れ様、楓月」
試合が終わりリオの淹れてくれた珈琲を飲んでいると、扉がスライドしガンとnekoが現れる。
「お疲れさん」「お疲れ……」
「二人も飲む?」
頷く二人を席に座らせキッチンに向かうリオ。
ギルさんの珈琲は濃くのある苦味が美味いが、リオの淹れる珈琲は砂糖やミルクを入れる分また違う味わいがある。
「それで、お二人さんは何の用だ?」
「勝った祝いだ」
「何言ってんだよ、他の理由だろ?」
nekoは眠そうにあくびをしながら目を擦っており、ガンはメニューをいじりながら口を開く。
「あとどれくらいだ?」
「他との接触か? そんなの聞かなくてもわか……」
「言い間違えた」
俺の言葉をガンは無理矢理遮った。
「あと余命どれくらいだ?」
なんだその話か……。
「知らねえよ」
「本当に……?」
nekoの眼差し……いや、ガンとリオもか後つじきりもなんだかんだで心配してそうだな。
「最後になるかもしれねえから『今日、俺が出てもいいか?』なんて言ったんじゃねえのか?」
「そりゃあ、考え過ぎだ……」
一呼吸、
「心配してるみたいだけどな、お前らが思ってるほど俺はやわじゃねえ」
「ただいま〜……」
「お、お疲れさん」
疲れきったつじきりが作戦室に現れる。
「ま、お前がそう言うなら……祝い酒でもするか」
「お酒だー!」
「マジで酒瓶、持ってきてたのかよ」
酒に反応して元気になるつじきり、酒瓶を並べていくガン、お気に入りの酒を守ろうと抱きかかえるneko、カップをテーブルに置きつまみを用意しにキッチンに行くリオ。
そんないつまでも変わらない騒がしい仲間を見つめながら、届く事はない小声で呟いた。
「最高だよ、お前ら」
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