EXP.4 初めての戦闘
僕は白紙の紙にサインして彼女に渡す。
彼女は紙を受け取ると僕に見せつけるように持つ。
「ユウキ君、魔法を見せてあげよう」
なんだか、彼女は上機嫌で話しかけてくる。
その言葉を聞いて、目を輝かせる。
「本当ですか?」
彼女は紙を僕の目の前に出して、
「カモフラージュ解除」
すると、先ほどまで白紙だった紙に文字が次々と浮かび上がる。
僕は眉を寄せ質問する……。
「これは、一体……?」
「カモフラージュという魔法スキルさ、アイテムやプレイヤーの見た目を変えるんだよ。スゴくない?」
「……その紙は何ですか……?」
「これは、入団手続き書さ。これをギルドに提出すると[チーム]に加入され、門が使用できなくなるものさ。私とギルドのは例外だがな」
「また詐欺ですか⁉︎」
彼女は少し考え、再び口を開いた。
「騙しはしたけど。契約された異界人とギルドの門しか使えなくなるだけだから、詐欺じゃない」
「だましてる時点でアウトですよ!」
「いやいやいや、契約を結ぶことで君のステータスはアップされるんだよ」
…………!
「ちなみに、どれくらい強化されるんですか……?」
「5Pずつ全振りかな」
無人である僕の基本ステータスは全て5Pずつなので、+5Pされるだけで、かなり能力値が上がる。
「わかりました。改めて、よろしくお願いします。シアさん」
床に降りて正座になり、頭を下げる。
「物に釣られるとは君もまだまだだなぁ」
言われても、否定できない自分がいる。
「やっと、わかってくれたかユウ君」
「なんか馴れ馴れしいですね……」
「良いじゃないか!」
彼女は部屋の外にも聞こえそうな、盛大な笑い声を出した。
仲間ができて、よっぽど嬉しかったんだろうか?
「そんじゃ、頑張ってきてくれよユウキ君!」
「ハイッ!」
彼女はメニューとは別のウインドウとホロキーボードを表示する。
「私は行けないから、こちらから指示を出すよ」
「はぁ……」
彼女がホロキーボードを操作していると急に、僕の目の前に黒い渦が出現する。
「これは……?」
「門と言って、軸世界への道と言ったところだ。帰りもコレを使うから、着いたら場所を覚えてね」
「はい」
僕は彼女に返事を返すと黒い渦に足を踏み入れた。
…
目を開くと先程までいた部屋とは違い、森林にいた。辺りを見回すと、そこら中に大きな岩がある。上を見上げると木々が空を隠すが、わずかに日光が射し込んでいる。
キョロキョロしていると耳元に雑なノイズが走る。
「ごめんね、雑音が入っちゃって。オペレーションのやつ使うの初めてだったからさ」
「いえ、大丈夫です」
僕が返事を返すと耳元に微かな笑い声が聞こえた。
「え〜と、いま君がいるのは『ボッカ地底平原』というフィールドなんだけど……生きてるかい?」
「そんな、すぐには死にませんよ」
「そうだよね〜。ま、近辺を探索してみてくれ」
「わかりました」
彼女の指示通り近辺の探索を開始し、林の先を覗くと少し大きい猪を発見する。
「大きい猪を発見しましたが、あれがモンスターなんですか?」
「ああ、君の発言から推測するかぎりソレは[ワイルド・ボア]だろう。カーソルを合わせてみるんだ」
「どうやるんですか?」
「動く物をずっと見つめてると出るよ」
彼女の指示に従い、猪をずっと見ていると。[ワイルド・ボア]という名前とHPバーらしきものが表示される。
「出ました、[ワイルド・ボア]です」
「それじゃあ、背後から奇襲するんだ」
「はい」
指示通り草むらをかき分け猪の背後の茂みに回る。腰に装備されている初心者用の短剣を手に取り、草むらを飛び出し猪に突撃を開始する。
短剣は見事に命中し、猪のHPバーを半分ほど奪い去る。
猪も素直にはやられまいと、こちらに向かって突進してくる。
だが、サイドステップで見事に回避され猪の怒りは最長点に達していた。
再び突進を開始する猪に対して僕は、サイドステップではなくターンで避けカウンターを繰り出す。
HPバーが0になり、猪は断末魔の声を上げ、硬直したかと思うと爆散して消えた。
「ふう……」
僕は安堵のため息を吐いた。
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