EXP.3 説明と書いて詐欺と読む
部屋に入るとシアさんが、ベッドの側にあった椅子をテーブルの近くに移動した。
「まあ、座ってくれ」
「失礼します」
僕が椅子に座ると彼女は、「オープン」と口にする。彼女の声に反応し、小音の効果音と共にウインドウが開かれた。
「こうやって、特定の言葉を言うととウインドウが出てくるんだ。閉じる時はクローズって言えば閉じるよ」
僕は試しに、「オープン」と発してみる。
するとウインドウが開かれ、いちばん上に『MENU』と表示されておりその下に【ステータス】、【スキル】、【アイテム】、【コミュニティ】、【システム】の順に表示されている。
「え〜と、まずは【ステータス】について、レベルアップ時のステータスポイントを振って職人スキルのレベルを上げたり、装備フィギュアを操作して装備を変えられるよ。
次は【スキル】について、レベルアップ時にステータスポイントと別でスキルポイントが2Pずつもらえて、そのスキルポイントを振ってスキルの習得や熟練度を上げたり出来るよ、ちなみに新しいスキルはプレイヤーのデータからシステムが判断して選択するんだよ。スゴくないかい?」
片手を上げて彼女にいちど説明を止めてもらい。
「あの〜、質問なんですけど」
「なんだい?」
「スキルの使い方は?」
彼女は少し悩んでから口を開き、
「あ〜。……君が習得してから説明するのじゃダメかい?」
「だっ大丈夫です。なんかすいませんでした」
「いや、質問する事はとても良いことだよ」
「はあ……」
ニコニコしている彼女を見ていると、背伸びしている少女に見えてくる。
「それでは、説明に戻るね。どこまで話したっけ……?」
「スキルが終わったところです」
「え〜と、【アイテム】は名前どおりで物を収納したり、出したり出来るけど容量が決まってるから気をつけてね。
次は、【コミュニティ】だけどコレも名前どおりで、[パーティー]、[フレンド]、[チーム]のプレイヤーと連絡を取るものなんだ。
最後に、【システム】。まぁ、ゲームの設定やログアウトするときに使うんだ」
「なるほど」
大体このゲームを把握してきたぞ。
「他に知りたいことは?」
「え〜と、[チーム]についてとマップの出し方と戦闘フィールドの行き方ぐらいですね」
「あの〜、[チーム]についてはその時、教えるけど良いかい?」
「大丈夫です」
「じゃあ、マップだけど異界人しか使えない。ま、異界人もデータがないと表示できないし後は、地図を買うしか無いけどあのアイテムは高いから……」
「そっそうなんですか……」
「え〜と次に、軸世界への行き方は異界人に門を開けてもらうかギルドの使うしかないかな。異界人は門ひらくと目的地の約80m範囲のどこかに転送される。ギルドの門は絶対サテライトに着くけど、お金がね〜」
「……」
「ま、野良の異界人を捕まえた方が早いし安くすむかな」
説明の後半はギルドとか言う組織の悪口だったなぁ。というか、この後どうするか……。
「そこで君に物は相談なのだが、ニュービーの君を無料で軸世界に送ってあげるからデータと狩りの儲けの3割を私にくれないか……」
「……」
「……」
「…………え」
「私はこのゲームの金で食ってるんだが、今月は良いカモがいなくて……」
「詐欺ですか……」
「いやいや、詐欺じゃないよ。一人暮らしがキツイんだよ」
「恩を売って金を巻き上げる気だったから、あんなに親切だったんですね……」
「ぐ……否定できない私がいる」
彼女は苦い顔をしながら、否定を続ける。
「だから、以前カモになった人に見つからないようにマントなんか着けてたんですね……」
「ギクッ」
心の声が聞こえてくるなぁ……。
「頼む、この通りだ」
彼女は椅子から降り、土下座してくる。きっと一人暮らしは大変なのだろう。仕方ないな……。
「もう、仕方ないですね……。その仕事、引き受けます」
彼女は顔を上げるとオープンと呟き表示されたウインドウを操作し、一枚の紙とペンをオブジェクト化して僕に差し出す。
「この紙にサインを頼むよ」
「なんですかコレ?」
「訴えられた時ようにね、保険だよ」
「キャラクターネームを書けば良いんですか?」
「そのとおり、この辺に書いてくれれば良いよ」
彼女は紙を指差す。
僕は白紙の紙にサインした。
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