EXP.21 First star
金曜日の午後4時頃。
帰宅した僕は制服から部屋着に着替えると、ヘッドギアを装着し異世界に飛び立つ。
…
僅かな浮遊感から地に着地すると相変わらず、彼女がベッドの上で本を読んでいた。
だが、珍しく機嫌が良いらしく、鼻歌が空気に響いて来る。
「こんにちわ」
「ん……やあ、ユウキ君」
「何か良いことでもあったんですか?」
「ギルから君宛に荷物が届いた!」
僕の視界に開かれたトレードウインドウのOKボタンに触れる。
ウインドウを閉じると、手元にズッシリとした重さの木箱が出現した。
「これは……」
木箱を開けるとそこには、今まで見たことの無い様な黒光りするほどの漆黒の鉄板の数々。
隣から覗き見る様にして木箱の中身を見た彼女が口を開く。
「これは……ライトアーマーだね……」
「……このゲームで鎧なんかあるんですか? 見たこと無いんですけど……」
「あるけど、防御力の高い防具ってのはその分身体が重くなるんだ。だから、このゲームでは一般的には防御力と素早さの二択でどちらを取るか聞かれれば、大半は受けるよりも回避を取るんだよ」
その言葉を聞いて、黒い鉄板を一枚取る。見た目によらずとても軽く感じる。
「ま、鎧を着用する奴も探せばいるだろうけど……」
「スゴイですね! 軽いけど、頑丈そうですよ!」
「かなり、金がかかってるだろうね……」
僕は今にも彼女に抱きつきたいぐらいに嬉しいが、彼女は自分の借金を考えると苦笑しか浮かばないだろう……。
心配そうな僕の表情に気がついたのか、彼女は笑顔で提案をしてくる。
「一回、装備してみたら良いんじゃ無いかい?」
「そうですね」
木箱から大量の黒い鉄板と黒い布を全て取り出すと、一つのアイテムとしてメニューに表示される。その名は、
「『ファースト・スター』……」
「ふむ……一番星か……。厨二病がっ」
「シアさん……借金を作ってまで、こんな良いのくれてありがとうございました……」
嬉しさのあまり、僕の頬には感激の雫が流れた。
「つ、ついでに武器も新調して来たらどうだい?」
「ハイッ!」
彼女の笑顔に僕は涙を拭き今までで見せた中で、一番の笑顔を咲かせて見せた。
★
武器を新調する事にしたけど、どうしようかなぁ……。
あの後……武器を買う事になったから、勢いよく宿屋を飛び出したのだが。
どこに行けば良いのか、わからない!
内心で叫ばずにはいられない。
とりあえず、あの人に相談してみるか……。
→
場所は変わり、ギルドの受付にて銀髪の少年は林檎の少女に問いかけていた。
「武器を新調したいんですけど……、オススメのお店とかありませんか?」
「そうですね〜……。あ、少しお待ちして頂けますか?」
「大丈夫ですけど……」
赤い果実は受付の裏口に入っていった。
…
すぐ近くの椅子に座り、下を見つめて待つこと6分ー。
「お待たせしました」
顔を上げると彼女が立っていた。
「上司に許可を頂いて来たので行きましょうか?」
「はい」
林には二重人格があったけど、この人は本物の天使だ……。
「こっちです。ついて来てください」
その言葉に従い、赤い果実の後を追う。
入り口から見て左側のエリアに向かう。換金所や酒場、飲み食いしながら談笑するプレイヤー達。
の先、二つしかないエレベーターの前にたどり着く。彼女がボタンを押して上がってきたエレベーターに乗り込む。
しばらくすると僅かな鈴の音が鳴り、扉が開く事でエレベーターが目的地に着いたことを知らせる。扉の先には別の世界が広がっていた。
先ほどまでいた階層は情報屋との相談場や酔った人々の笑い声からして、正直なところギルドというより酒場に思えてくる。
対してこの階層は、所々で開かれてる露店の数々、何より冒険者っぽい人しかいない…。
「ここは?」
「ここは、地下一階の商店街です」
「商店街……?」
ご意見ご感想お待ちしております。




