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主人公にも安息を  作者: マト4
BW乱戦編
139/141

EXP.139 銀髪伝説 その13

あの日のことを、いつも思い出す。


このゲームを始めた日。

モンスターから逃げる為に洞窟中を走り回って、行き止まりで、


「もう駄目だ」


このゲーム初めて数十分で起動してしまったことを後悔したり、なんで僕ばかりこんな目に合うのかと不満ばかりだった。

そんな時、颯爽と助けてくれた楓月さん。


僕も、いつかあんな風になりたいっ! そう思った。

だから今は…………。



【ユウキ視点】十分前


「仕方がない。シア、君も異論はないね。よし、ラン君、やりたまえ」


「えっと、私は何をしたらいいのでしょうか……?」


「あそこの壁を撃てばいい」


ランさんは戸惑いながらメニューを操作し自身の装備を出現させるのだが、それは『大砲』そのものと表現するしかない銃火器だった。


「あれ? でも、撃ってしまったら次弾まで時間がかかりますよ」


「構わないとも」


ヤスイさんが僕に視線を向ける。


「わかりました。では、皆さん。危ないので私の後ろに下がってください」


ランさんは大砲に備え付けられた把手らしき物を掴み、多銃身回転式機関砲ガトリングガンのように構えて口を開く。


爆裂弾ブラスト貫通弾レーザー


大砲から僅かに漏れる熱気に似た何かを全身に浴びて、とてつもないエネルギーだと理解する。


粒子砲ブラスター


言葉を失った。

以前、僕は林の技を見て『凄い』の一言だったのだが、ランさんのは……言葉が出ない。

ランさんの一言と共に前方が光に包まれて、白しか見えなくなる。

光が消えるとそこには、トンネルくらいの大穴が空いた壁だけがあって……。


「ふぅ……」


頑張って感想を言うとしたら……、


「今まで、すみませんでした」


「え、急にどうしたんですか!?」


怖い。

人生で最も怒らせてはいけない人を見て、僕は『恐怖』の二文字以外に浮かばなかった。


「そんなことより……早く行ったほうがいいんじゃないですか?」


「そうでした。ランさん、ありがとうございました」


軽くお礼を伝えて、風穴に鎖状チェーンを取り付ける。

これであとは飛び降りるだけだけど……ちょっと怖いなあ。


「僕たちは先に上へ行っているから」


ヤスイさんはランさんを連れて部屋を後にする。二人きりになった僕とシアさんは、無言のまま時間が過ぎていく。

このままじゃいけないと何か話そうとした時、シアさんが口を開いた。


「ユウキ君……」


「シアさん……文句は帰ってから幾らでも聞きますから」


「でも……私は嫌なんだ! 君に何かあったら私は悲しいし、やった奴が憎いし、無力な自分が嫌いになる」


シアさんの荒ぶる感情が言葉になって溢れ出る。


「これはゲームだ。でも、私にとってはVRゲーム現実リアルもなんにも変わんないんだよ! だから君や林君、カレンと一緒に居るのが私にとってはかけがえのないものなんだ…………だから君たちが傷つくのもそれを見るのも、嫌なんだ!」


彼女の想いを僕は聞いているだけだった。こんな時、なんて声をかけたらいいか僕には分からない。だけど、


「まあ、これはVRゲームなんだから……こんなこと言うのもおかしな話ーー」


「そんなことありません!」


一つだけ分かったことがある。


「今、僕が居るのはVRゲームの中……なら今の僕にとっての現実リアルVRここなんです! だから、ここに居る間は現実ほかのことなんてどうでもいい!」


誰かへの想いを、自分への想いを、僕はシアさん自身に否定して欲しくなかった。


「シアさん、あとで打ち上げをしましょう」


「打ち上げ?」


「僕とシアさん、林とカレン、もっと誘ってみんなで! 僕はこれから人を……とりあえず林を誘いに行ってきます。なので、シアさんはいいお店予約しといてください」


それだけ伝え、風穴から飛び降りる。

微かにシアさんの声が聞こえたような気がするが、それよりも今は集中しよう。

林たちの居る場所で鎖状チェーンの伸縮を止めて、窓は……剣で割れるかな?


「あれか、『パニッシャー』」



剣を正眼に構えると、Lokiが口を開く。


「また君、か〜……今回は手ぇ抜いてあげないよ?」


「僕だって今回は斬りますよ」


今の台詞が癇に障ったのか彼の右の口角が少し上がったように見える。

売り言葉に買い言葉だったが、確かに言われる側だったらムカつくだろうと思う。


「なら、斬ってみな……散弾スプレッド


Lokiの両手にそれぞれ正方形が現れ、小さなキューブへと分裂していく。


防御形態シールドモード


剣を引き、突き出した左腕の盾で迫りくるキューブの嵐から身を守るが、腕や足を僅かに削られていく。


追尾弾ホーミング追尾弾ホーミング


弾幕から身を守っている為、動けない僕に対してLokiは次の魔法スキルの詠唱を始めている。


斬撃追尾弾イーグル


弾幕が止んだのと同時に攻撃に転じようと走り出すが、前方では既に完成した魔法スキルが動いていた。


一本の白く光る刃がコンパス の針のようにくるくると回っており、止まったと思った瞬間にこちらに向かって飛んでいる。


「くっ……」


咄嗟に振った剣で弾くと、刃は方向を変えて進んでいく。勢いのまま壁に突き刺さるのを確認して走り出す。


今なら次弾の詠唱中でLokiは攻撃に移れない。その隙に倒す。

さっきと同じスキルなら弾けばいいし、切り替えて散弾スプレッドを使ってきたら飛翔エリアルで避けて……。


その時、背後から強烈ななにかを感じる。視線や気配と呼ばれるものではなく、なにかが僕に向かって来ていることがわかった。


「っ、んな!?」


振り向きざまに左腕の盾で裏拳を放つと、盾に先程の刃が突き刺さっている。剣をぶつけて叩き落とすと、床に触れるや否やくるくると回りだす。


「もう一本『斬撃追尾弾イーグル』」


戸惑う僕に向けてLokiは二本目の刃を放つ。これを剣で弾くも足下にあった刃が再び僕に向かって飛んでくる。


「こうなったら……飛翔エリアル


これ以上刃を増やされる前にLokiを倒す。

風を使って二本の刃を躱しながら近づき、一本を盾で受け止め、二本目を剣で弾く。


「そんなに距離、詰めちゃっていいのかい?」


Lokiの詠唱がもうすぐ終わる。次に現れるだろう刃を剣で弾けば、あとは距離を詰めてLokiを倒すだけだ。


電光散弾スパーク


散弾スプレッドと同等の範囲に電気プラズマが溢れかえる。


「っ、飛翔エリアル!」


後方に逃げるように電撃から距離をとった瞬間、背後に刃を感じるも間に合わず。

背中に鋭い痛みが走った。

申し訳ありません。

思った以上に長くなってしまい、もう一話に分けることにしました。

何卒お許しください。



ご意見ご感想お待ちしております。


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