EXP.136 説明会
いつも遅くてすいません。
もうすぐなので何卒よろしくお願いします。
【ユウキ視点】ギルド最上階
目を開くとそこは天井。右を向けば、椅子に腰掛けメニューを操作しているヤスイさん。
「僕は……」
「おや、無事に目覚めたようだね」
横になっていた身体を起こそうとして自身の身体が重いと認識する。そしてその理由はひと目でわかる。
シアさんが僕に抱きついているからだ。
「ど、どうかしたかい?」
「いや、僕の台詞なんですけど……」
女子に抱きつかれている。にも関わらず冷静なのは男としてどうかと思うし、相手にも悪い。
わかってはいるんだけれども、縦四方固めと錯覚するほどにがっしりとした抱擁に僕は、喜びや劣情よりも痛みや戸惑いを強く感じている。
「とりあえず、動けないので退いてもらえますか?」
「わ、私の行動に対してのツッコミはこれでお終いなのかい!?」
「いや、あの……ちょっと腕に力が入らなくなってるので」
本当にヤバイかもしれない。腕の痛みを感じなくなってきた。
「私がここまで大胆な行動に出ているのにユウキ君はそうやってスルーするのかい!?」
「いえ、一瞬だけドキッとしました。だけどそれよりも腕がちょっと……」
「一瞬『だけ』ってどういうことだいっ!?」
暫くシアさんの説得に時間をかけ、ハグから解放される頃には僕の両腕は瀕死と言える状態だった。
「それで……どうしてこんな状況になったんですか?」
「えっと……」
シアさんがブツブツと何から話そうか悩んでいる間にヤスイさんが解説を始める。
「簡単なことだとも。彼女は日々我慢している君への想いを君が寝ている間にちょこぉっと、出してしまっただけのことだよ」
不本意ながらその状況を容易に想像できるところが残念で仕方ない。
「まあ、要するに、彼女は君に発じょっ!?」
「んー? 今よく聞こえなかったからもう一回言ってくれるかな、ヤスイ」
「ぐふっ……シア、僕が君に聞かれて困るような事は何一つない。だから何回でも言おう。君は彼に発ーー」
そこでヤスイさんの言葉が切れた。
僕から言えることはこれだけです。
…
「ところで……林とス、スノードロップさんはどちらに?」
揉めていた二人が(一方的な)喧嘩を止め、ソファに腰掛ける。
何から話そうか悩んでいる様子のシアさん、に代わり口を開くヤスイさん。
「林君とスノードロップ君には避難してもらったよ」
「そうですか……。それで、お二人は?」
「僕はこう見えてもホワイトワールドを管理している者だからね、ここを動けないんだよ」
「本当に不本意だけどね」
不貞腐れたようなシアさんを一旦放置して話を続けていく。先程の「ここを動けない」という部分について質問してみる。
「確か君は『戦争』未経験なんだよね?」
「はい、始めて……まだ半年も経ってませんから」
よくよく考えてみると始めてからまだ半年、振り返ってみると色々なことがあったなぁ、と感慨に浸りそうになるのを我慢して話を続けてもらう。
「このゲームのルールとして……他種族に攻め込まれた際、管理者権限を持つプレイヤーの位置情報が常に相手へ送られるんだ」
「そしてその管理者を戦争中に倒せば、ワールドに貯め込まれているお金やコアなんかの何割かを獲得できるっていう仕様さ」
コアって確か……武器の研磨や『魔術武器』の材料だったはず、それと膨大な金額。この二つが手に入れば、一気に自軍の強化ができるってことか。
「だから僕と一緒にいると敵さんに殺されてしまう。それを避ける為にスノードロップ君をシェルターへ避難、そしてその護衛を林君に頼んだという訳さ」
「二人のことは分かったんですが、敵がここまで来るのって無理なんじゃ……」
「いやいや、敵はワールド順位二位の魚人だ。一位の戦鬼と互角の実力を持っている。恐らく既にギルドの二階……もしかしたら三階まで到達しているかもしれない」
ホワイトワールドの上級プレイヤーが防衛するギルドを攻略するなんて、僕には凄いとしか言えない。
「最悪、僕がロストしてもスノードロップ君が無事なら元に戻すのに時間も余りかからないだろう」
「スノードロップさんが無事ならってどういうことですか?」
「ん? うーん……まあ、口外しないと言うなら説明しても良いけども」
僕が頷くのを確認してヤスイさんは話し出す。
「僕は自分がロストする可能性を考慮して、ホワイトワールドが保有している土地に貯蓄の何割かを送って備蓄してもらっているんだ」
「保有している土地……ですか?」
「そう、所謂『ゾーン』と呼ばれている場所のことだ。その中でも全体の三、四割……このギルドと同等の物品を貯蓄しているのが『防衛都市サテライト』。スノードロップ君が管理しているゾーンなんだ」
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