EXP.135 勝負
ネカマに対して「おっさん」という単語は、挑発や煽りなどとはレベルが一段階は違い、宣戦布告も同然の言葉だろう。
この言葉でこいつがキレて、その隙をAIRAに倒して貰う。その後、オレが無事救出されて事なきを得る。
という予定だが、この作戦の問題はAIRAがオレの意図を汲み取れるかどうかという大きな不安材料があり、こればかりは確認のしようが無い一か八かの賭けだ。
「もう、興奮してきたじゃない。本当に良い罵倒をするわね、貴方」
「くそっ、耐性が高すぎてオレの口撃が効かねえ」
ちくしょう! AIRA以前の問題だった。
こんな時、師匠が使ってた体から剣が出るヤツがあればなぁ……。
「そんな事ないわ。乙女の心は硝子でできているもの」
「傷ついてるアピールすんじゃねえよ」
「この短時間で、わたしの内心を理解し始めるなんて……いい男ね」
現状打破の目的は達成したが、より悪くなるとは……ついてないな。
まあ、オレの失敗ごとAIRAがなんとかしてくれるだろう。
「ソーマ、女子に優しくない……。そんなだからモテない……」
どうしてAIRAさんはオレの対人スキルを冷静に考察してるの?
「あの〜AIRAさん。どうして今、そのような話をなされているんですかね?」
「お姉様が男子は女子に優しくするものだって言ってた……。ソーマも女子に優しくすれば、多分モテる……」
「今の問題はモテるモテないじゃない!」
AIRAは天然で、ボケる。こんなんでも長い付き合いだ、それは分かっていた……分かっていたが、分かっていたつもりだったが、ここまでとは……。
しかも、さっきからオレの名前普通に呼んでんじゃん! お酒の設定はどこいったんだよ!?
「ふふふ……面白いわね、貴方たち」
「褒めてもソーマは渡さない……」
「AIRAさん、別に褒められてないと思うよ」
何故か満足げなAIRAさんを眺めながら思考に耽る。
マジでいい案を考えねえと……。
こんなふざけた状況のため忘れがちだが、オレとAIRAはかなり危機的状態だ。
オレは手足をAIRAは武装を損傷しており、その上コミュニケーションは取れず、強敵が目の前にいる。
といった、整理すると本当にヤバい状況だ。
「あら、諦めてしまったのかしら?」
ネカマが話しかけてくるが、そんなこと聞いてる場合じゃない。
ったく、人が考え事してる時に話しかける奴って何考えてんのか分かんねえ。
「それは違う、と思う……」
「そうかしら? 先程から何も喋らないし、戦意を感じなくなっているのだけれど」
「ソーマは妥協することはあるけど……諦めたりはしない……」
そうだ、オレが目指すのは勝利でも敗北でもない。
引き分けだ。
誰もが平等に損得を得る。だからオレは「引き分け」という解決策が好きなんだ。
相手の方が強いのは明白、なら相打ち覚悟で挑むのが基本。
やる事は決まった。あとは最も簡単な方法でAIRAと意思疎通を図る。
「おい、ネカマ。やるならさっさとやりやがれ」
「あら、もう諦めてしまったの? なら仕方ないわ。頂くわよ、貴方の大事な物」
「AIRA、撃て!」
オレの言葉を聞いたAIRAは、条件反射の動きでスカートで隠していたと思しき拳銃を取り出し、構える。
トリガーに指をかけた瞬間、AIRAが右に吹き飛ぶ。
「AIRAっ」
最初にネカマが搭乗していた人型ロボットの左腕が外側に振り抜かれている。どうやらAIRAを吹き飛ばしたのはあの腕のようだ。
「やっぱり何か企んでいたのね。貴女とは仲良くなれそうだったのに」
「私は最初から嫌い……」
「あら、そう」
ロボットの胸部が開きネカマが乗り込む。目が光りだし、背後に移動していた武装の大盾が左腕に、ギルド本部を撃ったであろうライフルが右腕に装着される。
「なら仕方ないわ、貴女を始末してあげましょう」
遅れながら明けましておめでとうございます。
今年まで長引いてしまい申し訳ありません。
次回も遅くなってしまうかもしれませんが、お許しください。
ご意見ご感想お待ちしております。




