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主人公にも安息を  作者: マト4
BW乱戦編
132/141

EXP.132 雨水

いつも遅れてしまって申し訳ありません。

もうすぐこの作品も終わりですので、もう少しだけお付き合いください。

【カレン視点】ギルド地下一階


「イライラする……」


「落ち着け、茜」


とは言いつつも私も焦りを感じていた。近接・遠距離どちらも効かないOSを相手に私達は後退のみで時間を稼ぐ事も出来ない。

やはりOS持ちを倒せるのはOS持ちだけのようだ。


「あぁ、もう!」


茜は手榴弾の様なアイテムを起動させ、男に向かって投げる。液体スライムに触れて爆発するが、もちろん男に効くはずもなく。

ただ、爆風の熱を感知した火災報知器が鳴り、小雨ほどの水がスプリンクラーから降り出すだけだ。


「ハァ……オレはァ、もう、飽きたんだけどヨォ、お前らはァまだオレとヤル気なのかァ……?」


苦い顔の私達とは打って変わり、男の方は退屈そうにしている。先程までのニヤついた顔は消え、今では口を大きく開けて欠伸をする有様である。


「アンタがさっさと帰れば良いのよ、チート頼りがっ」


茜の発言を聞いて男の目の色が変わる。欠伸は歯軋りに変わり、散っていた液体スライムが男の元に集まっていく。


「ッたくヨォ……何も無え癖にヨォ、オレにケンカ売るとァ。虫ケラの分際でェいい度胸だなァ、オォイッ!」


怒りを露わにした男の罵声に従う様に液体スライムが地を走り、茜の二歩手前ほどで宙に舞い波の様に襲い掛かる。


「そんなのっ」


茜は両手の拳銃ハンドガンを投げ捨て片手長剣を握り、液体スライムを切り裂く。

これは彼女のエクストラスキル『剣作成セイバー』。鍛治スキルが反映された獲得スキルで、即席で剣を作ると言う「オールブレード」に似て非なる物。


「この程度でアタシを倒せると思……」


「だから、テメェは虫ケラなんだヨォ」


切り離された液体スライムは囮だった様で、刺状になった複数の液体スライムが障害物を縫う様にして伸びて来る。


光矢アロー


矢を放ち何本か撃ち落とすが視認できるだけでも五本以上は変わらず茜に向かっていく。

先程、茜が拳銃ハンドガンを投げ捨てた事がここに来て悔やまれる。私も茜もダメかと思ったその時、


鉄壁ウォール


液体スライムを拒絶する様に分厚い壁が眼前に現れる。地面に描かれたラインを目で追うと、そこには時雨が立っていた。

濡れた髪を掻き上げる仕草をする時雨、その口が開く。


「フっ……水も滴るいいおとっ!?」


蹴られた。

時雨は前方にいた茜に腹を蹴られ、地面に後頭部を強く打ち付ける。


「オ・マ・エは……遅れて来た分際で何、カッコつけてんのよっ!」


「なんだとっ、貴様の妹に頼まれたから仕方なく助けに来てやったというのに、なんだその態度は!」


「流石アタシの妹。それに比べてお前ときたら……たらたらと遅れて来た分際でその態度はなんなのよ!」


二人は口喧嘩をしながら互いの襟首を掴み合う。

この状態になってしまったら宥められる人物はただ一人、先程の会話に出てきた茜のリアル妹で、彼らのチーム『EXTRA 』のリーダー兼オペレーターの「ソプラノ」だ。

基本的に自己中心的な考えを持つ二人は反りが合わない。だが、何故か二人ともソプラノの言うことには従うのだ。


そんな解説を踏まえた所で、時雨の意識が他に向いた事で鉄壁ウォールが解除されてしまう。


「二人とも、敵の前で喧嘩をするのは、どうかと思うのだが……」


「……オレもォ、そのアマに賛成」


なんか敵に賛同された……。

ウチの連中がすいません。


「まあ良い、お前の妹の頼みだからな。だが、助けてやるのは今回限りだぞ」


「ハァ? アタシは頼んでないし、お前が勝手にアレと戦おうとしてるだけでしょ」


また互いの襟首を掴み始める。


「ふん、助けてやるのだから礼の品でも考えておけ」


「ボランティア野郎に何でアタシが礼を言わなきゃいけないのよ」


私は思うのだが……この二人、実は仲良い?


「イチャついてねェで早くしろヨォ」


「「イチャついてなどいない(なんかナイ)!」」


相手も私と同じ考えらしい。

二人は不満そうにしているが、私は彼の意見に賛成だぞ。


村鮫むらさめ、我に力を」


時雨が鞘から青の刀身を抜き放つと同時に駆け出し、上段から男を斬り裂く。


「オレの身体はヨォ、液体スライムだからナァ、そんなの効かねェんだヨッ」


男の切り離れた部分がくっ付き、足元から刺のような液体スライムが時雨目掛けて飛び出す。


鉄壁ウォール


時雨は足下から鉄壁ウォールを出現させ、宙を舞いながら距離を取る。


「なるほどな……これはかなり手強い」


「テメェはオレを斬ったからなァ、そんなに褒めても見逃さねェぞ」


「能力だけでなく本人も質が悪いな」


冗談を言いながら時雨は再び走り出し、男の数歩前で脇構えから刀を振り上げる。


『滝登り』


刀に引っ張られる様に地面に溜まっていた水が、洪水の如く男に向かっていく。


「ハッ、オレにはどんな攻撃だろうと効かねェって言ってんだろうガッ!」


男の液体スライムが時雨を目指して地面を伝っていくが、同時に時雨の水が男の身体スライムを削っていく。


「ッ、痛えェ……」


「なるほど。点や線の攻撃に対しては強いが、面の攻撃には弱い。だが、ある程度のダメージなら即座に回復できる……正しく無敵だな」


時雨の推論通り先程までと異なり男の回復が間に合っていない。


「テメェ……なかなかやるじゃねェか」


「お褒めに預かり光栄だ」


「ムカつくナァ……いいぜ、本気出してやるヨ」


液体スライムが男を覆う様に広がっていき、更にそれを覆う様に刺状の液体スライムが展開される。


「来いヨ、ホスト野郎」


完全防備の男に対して、時雨はただ刀を構えて口を開いた。


「生憎、オレ様は女に媚びを売らん」




ご意見ご感想お待ちしております。


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