EXP.131 奥の手
【楓月 視点】ポイントF
戦闘開始から十数分が経過。
やっと相手のOSについて仮説を立てられる程度には観察した。
「しっ」
「あっーーぶねーなマジで」
まずは速度の上がる剣撃。最初は敢えて手を抜いて徐々に速度を上げてるのかと思ってたが、それ程の実力があるなら緩急をつけたりもする筈だがその様子は無い。
「少々その奇術も見飽きましたな」
そして二つ目は距離を取っても次の瞬間には急接近されるスキル。だが、そのひとつ前のモーションが一貫して同じな事。
刀を下段に下ろす際、納刀を連想させるモーションが必ずある。それがOSの起動条件とかだとは思うが……、
「爺さんだって変な技使ってるだろ!」
「そこを突かれると反論の余地がありませんな……」
距離を詰められて冷静に考える時間も無い。スキルなしでも恐ろしい剣の腕前、それに加えて速度が上がるOS。
この爺さん、現実では一体何をしているのか? 疑問でしょうがない。
「そろそろ終わりにしましょうか」
先程まで狙いを急所(主に首)に絞っていたスタイルが変わり、急所など関係なく斬りかかって来る。
爺さんは宣言通り、終わらせるつもりの様だ。
「そっちがその気なら……仕方ねえ、俺の奥の手見せてやるよ」
剣先を地面に突き立て、声高らかに宣言する。
「行くぜ、爺さん。『暴風』!」
…
【レイド視点】ポイントC
「おらおらおらっ!」
「くっ、先程までの闘志の無さが嘘の様だなっ」
「っらぁ!」
常時展開型の巨大防壁が全方位からの猛攻を受けて砕ける。
単純な物理攻撃だけで破るとは……この剣士、強いな。撃ち落としたいが飛翔で飛び回られて照準が合わせられん。
予備の凝縮防壁でなら防げるだろう。だが、そのタイミングを中・遠距離の敵が見逃すはずもない。
「ならば、これでどうだっ」
剣を躱す為に背後に下がりながら上空に飛び上がり、剣士から距離を取って右手から散弾型・貫通弾を放つ。
この剣士はこの弾に貫通性がある事を知らない。つまり、防げばそのままLOST。避けたところを狙い撃つ。
「あァっ、それがどうした!」
剣士は飛翔を使って上空に飛び上がり、散弾を躱してこちらに向かって来る。
予想以上の速度と飛翔を使った変則的な動きには称賛しか無いが……単なる囮とは言え、こちらとしても負ける訳にはいかない。
「ケルベロス、タイプBに移行っ」
展開型の巨大防壁のエネルギーを分割し、凝縮防壁を二つ生成する。
今は狙撃の警戒より、一刻も早く剣士を倒す。
「飛翔展開」
オレの周りを固定された飛翔が囲んでいく。剣士が縦横無尽に飛び回り、すれ違いざまの斬撃を防壁で防ぎ切るが、右胸を狙撃によって撃ち抜かれる。
「おい、こんなもんかよ。さっきみたいに撃ってこいよ」
相手の隙を作る為に致命傷を負って最も焦っている相手に挑発をするとは……この剣士、どこまでも勝利に貪欲な姿勢、敵でなければ教えを請いたい程だ。
「良いだろう。望み通りケルベロス、第三の技を見せてやろうではないかっ!」
だからこそ、相手への敬意に対して自身の全力を持って勝利したい。そして叶うのならその強さを誰かの為に……。
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