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主人公にも安息を  作者: マト4
BW乱戦編
129/141

EXP.129 恋の奴隷

注意、あくまで個人の見解です。

【タツキ視点】地下トンネル


トンネルを彷徨うこと十数分。

やばい、しばらくリンゴちゃんの声を聴いてないせいか意識が朦朧として足元がふらついてきた。


「はぁ、やばい……リンゴちゃん……」


少しずつだが確実にやる気が落ちている。このままじゃトンネルの中で一生を終えちまう。

そんな事を考えながらその場に座ろうとしたタイミングで爆発音が鳴り響き、天井の一部が崩れ落ちて光が差し込む。


「ん、ここ何処?」


とりあえず飛翔エリアルでトンネルを脱出するが、破壊され尽くした建物の無い平地が広がるだけだ。そこには知らない大柄の男がいるだけで他には誰もいない。


「また、援軍か? その割には闘志を感じ取れんが……」


「援軍……何言ってんだ、あんた? 俺はトンネルでちょっと迷子になってただけの通りすがりの『恋の奴隷』さ」


「何が言いたいのかまったくよく分からんが、ここは面白い奴が多いなっ!」


うわぁ……なんだこいつ、何でこんなテンション高えの? この手のタイプとはあんま関わんないほうがいいな。


「それじゃ、俺はこれで」


何故か大声で笑ってる大男に別れを告げ離れようと試みるが、当然のように肩をがっしりと掴まれた。



【トーマ視点】ポイントC


「まあ待て、恋の奴隷とやら。貴様、我らに情報を売る気は無いか? もちろん報酬は支払う、断ったからと言って始末するといった事もない。よく考えてくれ」


戦場のど真ん中で話を始める大男。

情報漏洩を守る為に出てきた奴を仕留める戦法か……先程から見ているが見た目に似合わず誘いが上手いな。


「では、こちらも作戦会議をしましょう。まず皆さんの現状を」


敵に少し感心しているとノイズと共にテル橋の声が聞こえてくる。


「こちら栗キン、俺は無事だけどトーマの方は自爆して動けそうにない」


馬鹿栗の野郎、致命傷とか適当に言えばいいものを……。


「えっと……雨乞です。私は、無事です」


それ以上の通信は無い。つまり予想通りではあるが寺戸はLOSTしたようだ。


「皆さんも見たとは思いますが、カクトさんの槍は向こうの魔法スキルにも有効です。カクトさんが近づく隙を皆さんに作って欲しいんですが……何か具体案はありますか?」


相変わらずテル橋は頭がキレる。本気マジでどうしてカクトのとこにいるのか謎だぜ。


「俺は動けないから雨乞と一緒に狙撃に回るとして、注意を引くのは馬鹿栗……だけじゃ厳しいな」


「ですね……前衛がもう一人は欲しいところですね」


となるとタツキを回収しなきゃいけねえが、それすら一筋縄じゃいかねえ。


「なあ、テル橋の『移動ポータル』使ってカクトが奇襲とかは出来ないのか?」


馬鹿栗にしては良い案だが……、


「いつもならそうするんですが……」


「あの大男から距離を置いたら分からないが、テル橋が居なきゃ通信が使えない程に強力な妨害スキルを向こうは持ってる」


「そうです。ですからある程度の距離を置かないと『移動ポータル』は使えませんし、タツキさんの様に連絡する事も出来なくなります」


馬鹿栗を説得し考えを話し合うが、タツキを回収する事が最善だという結論に達した。


「そろそろ答えを聞かせてもらおうか」


どうやら向こうの相談も終了らしい。

テル橋の指示に従いそれぞれが持ち場に着く。


「確かにあんたの話は悪くないかもしれない。でもな、俺がここに居るのはリンゴちゃんが居るからだ。リンゴちゃんが居る場所に俺は居る。だからあんたらには付いてけねえ」


タツキが大声で何かを主張してるが、要約するとリンゴ次第では敵にも味方にもなるという事だ。


「ならば、その者も連れて行けば良いのではないか?」


あ、言われちまった。しかもタツキの野郎、結構悩んでやがるな。


「まあ、リンゴちゃんならお金で釣れそうだよな」


「そうですね」


「馬鹿栗だけじゃなく、テル橋にまで言われちまったら終わりだな」


そんな冗談を言ってるうちに大男がタツキに追い打ちをかける。


「何を迷う必要がある、お主は愛の奴隷なのだろう? ならば答えは一つしかないではないか」


「確かに、俺は何を迷ってたんだ……」


これは決め手だな、タツキの心も揺れまくりだし……ここは強硬手段しか無いな。


「俺の答えはNOだ」


作戦を決行しようとしたタイミングで低く感情のこもっていない言葉が聞こえる。その声は、先程までとは異なり怒りを露わにしているタツキのものだ。


「ならば、その理」


「あんたの発言に対して三つ訂正がある」


大男の言葉を遮ってタツキが話す。


「まず一つ目。仲間を売って手に入れた金なんかじゃあリンゴちゃんは喜んでくれねえ」


異なる雰囲気に戸惑う大男を置いてタツキは一人続ける。


「次に二つ目。説得は難しいだろうから誘拐になっちまうと思うけど……俺的には無理強いは良くねえと思う」


戸惑いから正気に戻った大男が両手を広げ臨戦態勢を取っているが、タツキは構うことなく話し続けていく。


「最後に……愛ってのはな、二人が互いを想いあって育むものだと俺は思ってる。だけど恋ってのは一方的な好意でしかない。この意味わかるか?」


いつの間にかタツキの右手にはエリアルブレードが握られている。


「俺とリンゴちゃんは愛し合ってない、俺の一方通行だ。だから俺は愛の奴隷なんかじゃねえ……俺は『恋の奴隷』だ。こんな辛い現実を突きつけて再認識させやがって…………お前は絶対許さねえっ!」


涙を流しながらタツキは大男に斬りかかった。




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