EXP.128 本物の
【ユウキ視点】ギルド最上階
林と共に階段を登ること数十分。
予想以上に通路が多くに分かれ、様々な部屋と繋がっていたようで、かなり道に迷って時間をロスしていた。
息を切らして(実際は過呼吸どころか息一つ乱れていないが)非常用の扉のドアノブに手を触れると、手に電撃が走ったと錯覚する痛みが瞬間的に訪れ、つい声を出してしまう。
「誰っ!?」
扉越しで聞き辛いが、シアさんではない女性らしき声が聞こえてくる。どこかで聞いたことがあるような気がしたが、とりあえず自分の所属と名前を大声で相手に伝える。
「少し待ってくれ」
次に返事をしたのは男性。
恐らくヤスイさんだろう。つまり、ヤスイさんとシアさん。それともう一人、最低でも三人は中にいるようだ。
「ユウキさん、ユウキさん」
中の人達が話している間、待つ形の僕に林が小声で話しかけてくる。
「どうしたの林?」
「こんな時に言うのも難ですけど…………所属と名前を言うと、軍隊みたいで格好いいですよね?」
「本当にこんな時に言うのも難だね……。でも、それは凄くわかるよ」
また一つ、林との友情が深まったように僕は感じた。
「二人とも無事かい!?」
扉が開くと同時に飛びついてくるシアさん。その背後には、見知らぬ女性と困り顔のヤスイさんがただ呆然と立っている。
「無事そうで何よりだ。まあ、とりあえず入りたまえ」
ヤスイさんに勧められて、僕と林は部屋に入った。
…
すごい綺麗な人だなぁ、と思った。それが彼女に対する僕の第一印象だ。
「そんな訳で、彼女が『防衛都市サテライト』の領主を務めているスノー君だ」
「プレイヤー名、スノードロップ……です。よろしく……」
煌びやかな長い金髪、透き通るようような白い肌、僕より少し背が高いくらいで、洗練されたスタイルに適度な大きさの…………。
女性の身体に意識が向いているなんて! 自分で自分が許せない。
「「よろしくお願いします」」
会釈をして頭を上げると自然と目が合うが、すぐに下に逸らしてしまう。
もしかしなくてもヤマシイことを考えてたと察知されてしまったんじゃ……たしか、女性はそういう事にすぐ気付くって聞くしなぁ…………。
「ね、ねえ、君……」
話しかけてきた。という事は、ここで僕は公開処刑されるって事なんですね。
「一つ、聞きたいん……ですけど…………」
ここは彼女より先に謝るというのが良いんじゃないだろうか……。いや、これでもし違う用件だった場合、ただの自爆になってしまう。
「僕は一体どうすれば……?」
「あのですね、ユウキさん……」
「ごめん、林。今考え事してるからちょっと待って」
どの選択肢を選んでもダメな気がしてきた……。いや、助からないかもしれないけど……それでも僕は、最善の解決策を考えるしかない。
「っ!?」
頭を抱え、脳内でそんな(下らない)ことを考えていると、ぴとっ、と冷たい何かが僕の額に触れた。それが何か気になり、僕が視線を上げると……。
「君、調子でも悪いの? ね、熱は無いみたいだけど……」
至近距離にスノードロップさんの少し安堵したような顔があり、僕の額には彼女の冷えていて気持ちいい右手が触れている。
「……大丈夫?」
お金や自分の利益の為に優しくしてきたり(シアさんとかリンゴさんとか)、僕を揶揄って楽しむ人達だったり(つじきり先輩とかマキナさんとか)、そんな女性ばかり相手していたからだろう。
僕の口からは声にならない言葉が漏れる。
「……天使だ…………」
呆然としているだけの僕を本気で心配してくれるなんて……なんて良い人なんだ、スノードロップさん。
「無理は……よくない、ですよ?」
そんな優しい一言と共に彼女は優しく僕の頭を撫でる。
後に語った林曰く、高校生にもなって授業中に先生を「ママ」と呼んでしまい羞恥心に苦しむ、といった様子だったらしい……。
とりあえず、その時の僕は羞恥心によるオーバーヒートで気を失った。
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