EXP.127 私の弟子は可愛い
【トーマ視点】ポイントC
恐らく今の狙撃は寺戸だろうが、生存確率は低い。となると残りは栗キンと雨乞、かなり戦況が不利になった。
「残るは二人……おっと一人見落としていたな」
わざとらしく足元に倒れる俺を見下ろす大男。
何でも良いからこの野郎に一泡吹かせてやりてえな。
「おーい、カレーンっ!!」
一矢報いる策を考えていると、馬鹿みたいに大声を出す一人の人物が現れる。
馬鹿だ……馬鹿がいる。
「戦地で人探しとは、面白い奴が居るものだな?」
「あんな奴、知らん……」
こっちに話振ってくんじゃねえよ! 死にかけとは言え、敵だぞ敵。カクトみたいな馬鹿と知り合いだと思われたくない。
「カレーン! ってトーマじゃん。そんなとこで何してんだ? てか、そいつ誰ー!?」
「向こうは、そうでも無いようだぞ」
あの馬鹿っ!!
「まあ良い。お手並み拝見といこうかっ」
大男は左の掌をカクトに向け、放たれた青い円錐が爆発する。
だが、魔法スキルである以上カクトには無意味だ。
硝煙が晴れて現れたカクトに外傷は見られない。
「いきなり何すんだ、危ねーだろうがっ!」
「……これは面白い」
大男はカクトに興味を持ったらしく、両手を広げて臨戦態勢の様だ。その隙を突くように後方から走り寄る足音が、地面を伝って聞こえてくる。
「奇襲ならば音を消せっ」
大男は背後に右腕を向ける。だが、足音の近づく速度は変わらない。右腕から複数の赤い円柱が生み出された時、二重の防壁に砲弾(恐らく雨乞の爆裂弾だろう)が直撃し、爆風で吹き飛ばされる。
「見事に策に嵌ってしまったようだな……」
その場には大男以外に誰もいない。
「ん、ここ何処?」
爆撃で地面に出来た穴から一人の男、タツキが現れた。
…
【滋賀 視点】ポイントA
散弾銃を支えに広い大通りを進み、背後に振り返る。
「これくらい離れれば大丈夫か」
楓月とオッサンが交戦開始後。
負傷が酷い上、あの場に居ても足手まといになるだろうと離れた訳だが……。
「大丈夫だよな……?」
瞬間移動ができる楓月と、未だ不明のOSを持つ超強いオッサン。
どちらも距離を取った程度で安心できる相手ではない。
「つっても、本部とも通信できねえしなあ……どうしよ」
そんな事を呟いていると、少し手前の曲がり角からザザッと何かが引きずられている様な音が聞こえてくる。
クソ、どうする。
負傷して逃げる事は不可能、場所てきに隠れることも難しだろう。こんなんなら路地とか使えば良かった……でも、今は後悔より先を考えるか。
先程の音から推測するに相手も何かを引きずっている。
なら……飛翔で上空から奇襲でいいか。いや、とりあえず屋根の上から様子を見るか。
「飛翔」
ヤバそうならすぐ逃げよ……あれ?
「グレンさん!?」
「ん……滋賀か」
そこに居たのはLOST寸前のグレンさん。攻守共に強いオールラウンダーで有名なグレンさんが一人とはいえ、ここまでやられるなんて……。
「肩貸します」
「すまない、助かった」
ここまでグレンさんを追い詰めるなんて、一体どんな相手だったのだろう。
…
【アルトニア視点】ポイントE
「クソ……大丈夫ですかっ」
「僕も目が無もなんとか大丈夫だからそっちに集中しろ」
「了解っ」
戦況は厳しいの一言に尽きる。二体の大海老を俺が、残り一体を二人で応戦しているが俺一人では二体とも倒せず、後衛二人では更に厳しいだろう。
「どうすれば……」
そんな迷いを見逃さず二体の大海老は猛攻を仕掛けてくる。咄嗟に対処するが、連携による時間差攻撃を防げず吹き飛ばされ、その場に倒れこむ。
「クソ……」
「おや、おやおや、そこにいるのはもしかしなくとも先日私の弟子に負けたという噂のアルトニア君かな」
女性の声だ。瓦礫の山の上に胡座をかいて話しかけてくる人物。こんな状況でそんな冗談を言うとは、正気じゃないと正直思う。
「つじきり先輩……」
「なんだお前、冗談通じないタイプか? 私の弟子でももうちょっとマシな返しが出来ると思うぞ」
山から飛び降りこちらに歩み寄って来ると、俺と大海老との間で仁王立ちするつじきり先輩。
「それより、負けた癖にその後も私の可愛い弟子に突っかかってるらしいな?」
「いや、そんな事は……戦闘訓練です」
「ふ〜ん、内心はどうだか知らないが……仲間を見捨てなかった事に免じて今回は見逃そう」
二体の大海老が迫る中、つじきり先輩はゆっくりと右手で柄を握る。
「こっちも、やっとデスクワークから解放されたんだ。楽しませてくれ?」
大海老達は先程の連携攻撃を仕掛けるが、つじきり先輩は刀を抜く気配がない。
「それしか芸は無いのか……『居合・鎌鼬』」
残念そうな言葉と共に刀が抜き放たれ、二体の大海老が動きを止める。
「お前……この程度で苦戦しているようじゃ、私の弟子の敵ではないな。まあ、私の弟子は可愛いからな、当然だな!」
「つじきり先輩、パンツ見えますよ」
「殺す」
俺を小馬鹿にする態度が少しむかついたので言い返しただけだと言うのに……大人気ない。
そんな冗談を言っているとつじきり先輩の背後、大海老達の肉体が僅かに動く。
まだ、生きてたのか!? このままだと先輩が、
「先輩!」
「ん、どうした?」
先輩が返答すると同時に二体の大海老が崩れ落ちる。もちろん肉体がバラバラに斬られて、だ。
「ああ、お前の仲間も助けなきゃな」
歩いていくつじきり先輩を見ながら、もっと強くならねばっと俺は思った。
毎回すみません。
読んでくださる皆様のために最後まで頑張っていくつもりなので、何卒お許しください。
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