EXP.111 三本の指
「カクト……」
突然の来訪者二人にその場の全員が呆気にとられる。
「どうして、(助けに)来るのが遅いんだ!」
「これでも忙しい中お前のピンチを感じ取って飛んできたんだぜ」
本当に一途で良い人なのでは? と僕が思っているとテル橋さんが口を開く。
「何言ってるんですか、カクトさん。さっきまで『ピンチの時に現れたら格好いいよな』とか言ってたじゃ無いですか」
「それとこれとは別だろ、いいからテル橋は黙っててっ」
テル橋さんの一言で僕の中のカクトさんの評価が一気に落ちた。
「カクトさん、ふざけるのは後にして下さい」
「ふざけてないんだけど! ま、先に片付けるのは賛成だな。スカーレット」
カクトさんの翳された手元に稲妻が走り赤い槍が現れる。
「来いよ、犬っころ。落とし前つけてやる」
赤いその瞳には獲物のみが写っていた。
…
「跳躍、飛翔」
バフが発動すると同時にドンッという爆発音が響きカクトさんがその場から消える。鬼人狼の痛みを訴える咆哮が聞こえ見やると右肩元に赤い槍が深く突き刺さっている。
「カレンさん、カクトさんのバフお願いします」
「私から攻撃されたら喜ぶだろ……あいつ」
「カクトさんはテンションが上がった方が強くなるんで全然いいですよ」
カレンは愚痴をこぼしながら、傷を負った人狼に向け矢を放つ。だが全ての矢がカクトさんの赤い槍に吸い込まれていく。
「どうして……?」
「あれはLW……」
近くにいたAIRAが僕の疑問に答えてくれる。
「あの赤い槍は『スカーレット』……OSは『魔力吸収』……魔法スキル全般を吸収する……」
「なるほど……AIRA詳しいんだね」
「ソーマが言ってた……ソーマは彼を……尊敬してるらしい……」
確かに強いけど……あんな人の何処が良いんだろう?
そんな僕とAIRAが置いていかれる中、傷だらけの鬼人浪に今留めを刺そうと槍を構えるカクトさん。
『ゲイ・ボルグ』
カクトさんが突き出した槍が紅に輝き轟音を響かせ赤雷が放出され、鬼人狼の胸を貫ぬく。角が砕け人狼が破裂する様をその場の全員が見届けると笑い声が聞こえてくる。
「やっぱ俺最強ッ! ウェェェェイッ!!」
「五月蝿い、モンスターの群れが来るから黙ってろ!」
「そんな事言ってるけどよ、俺の事惚れ直したんだろ? 恥ずかしがらなくても良いんだぜ」
大声で否定するカレン。僕にはカレンの声が最も大きく、モンスターを引き寄せるのでは……と思ったが黙っておく事にする。
「なあ、見たかテル橋。俺の『ゲイ・ボルグ』今日も決まってたろ!」
「いつも見てますし、代わり映えしないので余所見してました」
テンションの高いカクトさんに対して無表情で言葉を返すテル橋さん。
「ねえ、テル橋君。偶には先輩の事を敬ったりしてくれても良いんだよ?」
「敬っても僕にはメリットが無いので」
「テル橋、偶には俺のテンションに付き合って!」
そんな光景に先程までの緊張感は全くなかった。
間章の3.5部は本日で最後です。来週は休載、五月より第4部開始となります。
楽しみにお待ち下さい。
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