EXP.110 鬼人狼
突き刺した剣は人狼の左腕を捉えていた。痛みを我慢して左腕を使うとは「肉を切らせて骨を断つ」とよく言った物だと心の中で思っていた。
でも、終わりじゃない。ここからだ。
剣から手を放し風で飛び上がる、
「オールブレード 起動」
全身へ激痛が走り両手に片刃刀が生成される。その光景に人狼の目が見開かれる。
『韋駄天』
頭から下半身までを一直線に斬り刻む。僕が地に着くと同時に人狼の口から音が漏れた。
…
「オールブレード 停止」
人狼が頭を垂らして動かなくなった事により全員の表情から緊張が消え安堵に変わる。
「こんな強い奴は久しぶりっすね」
「私もだ……ユウキ、腕の方は大丈夫か?」
「林のお陰でこの通り」
笑顔で大怪我どころか傷一つない腕を見せる。治療して貰った身だが驚くほど林の回復スキルは高いらしい。
「どうしたの、AIRA?」
一人だけ緊張した面持ちのAIRAに声を掛ける。
「まだ……終わってない……」
そんなAIRAの言葉通り人狼が動き出す。しかし頭が上がったのみで眼すら開いていない。
「なんだなんだっ!?」
「ソーマ、早く止めを刺せ!」
カレンの言葉が洞窟内を反響すると同時に人狼の両眼が開かれる。
「潰した左眼が回復してやがる」
「眼だけじゃありません。傷やHPバーが回復してます……」
ソーマや林が武器を構え臨戦態勢に入りカレンやAIRAが下がる。二戦目の準備をしていると、人狼の額に光る何かが生成される。
「なるほど、ユニコーンの意味がやっとわかった……」
白い角を生やし立ち上がる人狼、その姿はユニコーンでは無く鬼のそれだった。
…
「つ、強すぎる……」
「相変わらずゲームバランスが分かんないゲームだなぁ」
「ソーマ…………」
いくらこちらが回復していないとはいえ、数分の攻防で林とソーマをLOSTさせた鬼人狼。
「全く……いつもどうでも良い時は来るくせに、大事な時は来ないのか」
カレンが口にした台詞の意味を理解する事は出来ない。それでも何とか逃げ延びなくては……。
「とは言っても、逃がしてくれそうに無いんだよな……」
唸り声を上げる鬼人狼、その瞳と角は仄かに光を放っており傷の消えた肉体は先程以上に筋肉が出ている様に見える。大骨を握った鬼人狼が此方に近づくべく一歩を踏み出す。
そんな僕達と鬼人狼の間に、光と共にエフェクトが発生する。二つの人影、そのうち片方は何処かで見た隊服に身を包んだボサボサ黒髪の男。
「どうして俺がカクトさんの私情に付き合わなくちゃいけないんですか?」
そしてもう一人は……一度知れば忘れる事のない性格と金髪オールバック、
「そう固い事言うなよ、テル橋。マイ、プリンセス! 助けに来たぜ」
カクトさんが立っていた。
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