EXP.11 少女と悪戯神
現在、プレイ3日目の午前。
僕はこちらの世界で覚醒する。
だが、いつもの宿屋の一室では無く。
軸世界における「ホワイトゾーン」と呼ばれる、無人プレイヤーの創設した国。『防衛都市サテライト』の城門の付近に佇む宿屋『仮眠所』の一室にて覚醒した。
宿屋と言っても『安らぎの旅館』の半分ほどの大きさで、一部屋が狭い上にベッドが一つあるだけという内装である。
どうして僕がこんな場所に居るかというと……。
…
昨日ー
僕はいつもの宿屋の一室で、彼女から前日指導を受けていた。
「私は明日、用があって出来ないんだけど。君はどうするんだい?」
「やるつもりだったんですけど、無理ですかね……」
「ごめんよ……」
しばらくの間、沈黙が続く。
先に沈黙を破ったのは彼女だった……。
「どうしてもって言うんなら……。一つ提案があるんだが、どうだい?」
「お願いします」
「今日の内に軸世界の拠点に移動しとけば、私が居なくても出来るよ」
「とっても良いじゃないですかっ!」
その後、指導を受けてコチラに移動してログアウトした訳である。
「さて、行くか……」
今日も僕の狩りが始まる……。
『防衛都市サテライト』から10分ほど歩き、たどり着いた巨大な塔。
だが、塔と言っても山が綺麗に削れているだけなのだが、もの凄いクオリティが再び僕を魅了する。
中に入ると、外との温度差を身体中で感じとる。
このフィールドの名は、『ホムラ山塔』主に火属性のモンスターが多く5階層まであるという説明を受けた。『ボッカ地底平原』に比べ、かなりの数のプレイヤーがいる。視界に入るだけでも10人は居るだろう。
見当たる限り敵は確認できないようなので、僕は戦闘中の場所や岩を避けながら進むと、岩の階段を発見する。
…
石の階段の上には先ほどとは異なり、プレイヤーも少なく暗い雰囲気を醸し出している。
歩くたびに、命の危機を感じとる。
しばらく歩いても、モンスターに遭遇はしなかった……。
…
少し大きな広間に出た僕は、歩いてるだけな気もするが疲れたので、休憩を取ることにした。
座るのにちょうど良い岩を見つけ、座ろうとした時…。
「たっ……助けて……ください……」
声の主は、茶色の短髪に浅黒い肌を青色の装備に身を包み、透き通った海のようなアズライト色の瞳を輝かせる少女が、縄で身動きが出来ないようにされて岩陰に倒れていた。
「だっ大丈夫ですか⁉︎」
短剣を抜き、少女を拘束する縄を切り裂く。
…
「ありがとうございました」
僕の目の前で少女は正座し、手を太ももの上に乗せ深々と頭を下げている。
「どうして縄で縛られていたんですか?」
「それは……」
…
少女から聞いたこれまでの出来事をまとめると。
彼女は一ヶ月ほど前からやり始めたプレイヤーで、ギルドの依頼書でお金を稼いでいたらしい。
今回、彼女が受けたのが……プレイヤー名[Loki]別名、悪戯神。
が盗んだアイテムを回収することだったらしく。
追い詰めアイテムを回収したが、背後から麻痺呪文で身動きを出来なくされ縄で拘束されたのが、これまでの経歴らしい。
「それで、アイテムは?」
「アイテムは無事なのですが……」
彼女はセリフを一度きり、苦笑しながら口を開く。
「大事な愛刀を奪われてしまって……」
「……」
「でも仕方ないですよね。仕事が上手くいっていたからって調子に乗った結果、愛刀を奪われたんですから……」
しばしの沈黙のあと、僕は笑顔で口を開く。
「取り返せば良いじゃないか?」
「え」
彼女が顔を上げた瞬間。
「なんて言うと思いましたか?」
「⁉︎」
「だいたい、途中から完全にフラグじゃないですか。僕は面倒ごとは、ごめんです」
彼女は再び、地を見る。
「でも……僕の憧れの人が、困ってる人は放っておけないと言っていました……」
僕を映す瞳を見つめ、
「だから僕は君を助ける」
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