EXP.12 少女と悪戯神 その2
「ところで、君の名前は?」
「林と書いてリンと読みます」
「よろしく、林!」
短剣を研ぎ終わり、僕らは走り出した。
「おそらく、悪戯神は3階層にいます」
「どうして?」
「ボクの使った魔法石の効果で奴は、1時間はこのフィールドから出れません」
彼女は右上に視線を送っている。
恐らく、右上に表示されているこの世界の日時計と現実世界のデジタルタイマーを見ているのだろう。
「魔法石が発動してから、45分が経ってます。そろそろ、5階層から降りてくるはずです」
「どうして5階層にいると思うの?」
「奴はかなりの手練れ。ボク以外にも追われてるのでココから出れないとわかれば1階層より5階層の方が、人が来なくて安全だからです」
確かに、腕前があるなら上層の方が安全に違いないな。
走っている僕達の前に火蜥蜴が現れる。モンスター名『フレイム・リザード』と表示されるソレは、僕の短剣で
咆哮をする間もなく口から尾まで一刀両断され硬直し爆散する。
吹き荒れる火の粉の先に。
黒色のジャージを装備した、くすんだ金髪と髪と同じ色の瞳を持つ青年が驚きの表情を浮かべて立っている。
「アレっ⁉︎ 茶髪ちゃん、まだ生きてたんだ?」
「ボクの愛刀を返してください」
「返すわけがないでしょ〜」
青年はヘラヘラと張り付いたような笑顔でこちらに笑いかけて来る。
「交渉決断です。お願いします」
「わかりました」
僕は短剣を構える。
「この俺を殺る気か?」
僕は体勢を低くし、一気に間合いを詰める。
「しかたないなぁ……」
彼の右手が光り出す。
よく見ると、手に嵌めている指なしグローブの甲に紋様が浮かび、そこから光が溢れ出しているようだ。
「電気+散弾+追尾弾」
彼の右手に紫色の球体が現れ、バチバチと電が音を立てている。
『電光射手』
彼の一声で球体は弾け、数多の電光が飛び散った。
…
僕と彼女は近くの岩陰に隠れ電光から身を守っていた。
あまり攻撃力が無いのか、岩は崩壊までは行かなかった。
「真正面から受けろよ〜」
僕は奴の位置を確認し、再び特攻を開始する。
「電気+散弾+追尾弾」
奴は再び、攻撃を開始する。
『電光射手』
再び、電光。
別の岩陰に走り込む。
敵の位置を確認し、走り出す。
間合いを詰めた僕は短剣で牽制する。
「わかったわかった。MP切れたら帰れないから降参するわ」
未だに張り付いたような笑顔は消えないが、彼はメニューを出すと。白い鞘に納められた長刀をオブジェクト化し、差し出してくる。
僕が受け取ると、
「じゃあな」
一言残して下層へ降りていった。
…
「本当にありがとうございました!」
「いえいえ」
「良ければお礼を……」
その時、耳にノイズが走る。
「私だけど、用事が早く終わってログインしたから門あけるけど、帰ってくるかい?」
「あ、はい」
「開らいとくね」
通信が切れた。
「もう、行かなきゃいけないみたいなので……。さようなら!」
僕は走り出す。
「せめて、お名前を……」
その言葉が届く前に、僕は走り去っていった。
「また会えますよね……」
小声で言った独り言が風に搔き消えていく。
ー
ユウキが再び、彼と出会うのは少し先の物語。
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