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ビーシュリンピア  作者: クラウンデイジー
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カトレーリカの商人

他国方の登場です。

「とにかく、ちょっと変わった商人だよ」


ヤンは荷台に薬草の鉢と満タンの魔石の箱を山盛りに乗せて馬車を走らせていた。王宮に魔石を届ける途中に薬草を数鉢、宿屋にいる商人に届けるのだ。


「平民はゴミ扱いだって言った商人だよな」


「あぁ。でも、あの人たちが俺たちをゴミって言った訳じゃないぜ。他国の貴族はそうだって話だ。」


「そりゃそうだろ。どの国だって商人は平民だろ?」


リューグは隣で馬と道の先に目線を送るヤンの方を向いた。ヤンは毎日、薬草の配送や運搬をしているので馬車の扱いは慣れたものだ。


それに対してリューグの一家は、用があれば大概は向こうがやってくるので、ほとんど自らの意思で敷地から出ることは無い。必要があれば今のようにヤンやジェッソンの馬車に乗せて貰うか、アチラが迎えに寄越した馬車で往復する。同じ歳なのに隣で簡単そうに馬車を走らせるヤンの姿を間近に見ると、成長を追い抜かれたような、でも、そんなヤンが少しだけ格好良いような、ムズムズした気持ちのリューグだった。


王宮は円形の下町の中心にある。王宮を囲むように貴族区域があり、その外側に平民区域がある。また、王宮からは東西南北に放射状に大通りが伸びていて、北通りの左右にある貴族区域は「北のお屋敷街」、同じ通りの左右にある平民区域は「北の下町」というように大まかに分かれており、リューグ家は王宮の裏門に続く細道沿いの「東の下町」にあり、その細道をもう少し外側に走るとヤンの家の薬草園がある。ヤンの薬草園は一番外側の横道「緑の街道」にも面しており、シュリンピアで一番大きな薬草園だ。


ちなみに、貴族区域を通る横道は「お屋敷通り」、貴族区域と平民区域の間にある「公園通り」はという名称で、横道の中では一番広い通りだ。そして、平民門から下町の出口へ続くのが「中央通り」。北西のお屋敷街、下町の間を通っていて、「西の下町」にあるシュリンピア公園のところで「公園通り」と交差している。中央通りはシュリンピアのメイン通りなので、大きな商店なども並んでいていつも賑やかだ。


ヤンの馬車が向かった宿屋は中央通りの端の方、もう少し行ったら下町の出口、といったところにあった。緑の街道をグルッと回ってやってきた。


「出口に近いからか、砂が凄いな。」


「町の塀を越えて吹き込んで来るんだよ。この砂のせいで馬が足を滑らせるから、この辺はスピードが出せないんだ。」


そういえば、ヤンは少し前から馬車をゆったりと流している。おそらく白色だったと思われる石が敷かれた道を明るい茶色かったというかクリーム色のサラサラした砂が薄く覆っている。砂は石畳の溝を埋め、人が歩くと足元の砂が舞い、その下にチラリと敷石が見える。キメの細かい砂で歩いている人の中も時々足を滑らせている。


馬車は緑の街道から中央通りへ左側に曲がった。曲がってすぐ右側、中央通り沿いにある宿屋の前にはモスグリーンの外套を羽織った男が二人がヤンの到着を待っていた。


「この程度の量なのに運んでもらって済まないね。」


深緑色の髪の男がニコリと言った。背はそんなに高くは無いが、肩や腕、胸板が商人とは思えない程、筋肉に覆われている。シュリンピアの商人が力比べをしても、勝てる者一人もいないだろう。


「いえいえ、お安いご用ですよ、ラウさん」


ヤンは荷台から薬草鉢を下ろしながら答えた。そして、手伝いのリューグにも鉢を持たせて、運ぶように言われた二階の部屋へ慣れた足取りで向かった。


部屋は商人の男が二人で過ごすには広めの大きさだった。小さめの流しとコンロが一つある簡単な台所と四人用の正方形のテーブルセットがあるダイニング。ダイニングの隣には二部屋あり、バスルームとトイレは別だ。


「平民用のとはいえ、お金持ち用の部屋だ」


リューグは鉢を抱えたまま部屋を隅から隅まで見回した。


「この部屋が珍しいかい?」


蒼色魔石のような蒼い髪青年がリューグに声をかけてきた。この男も「ラウ」よ呼ばれた深緑色の髪の男と同様、ガッシリした体系だが、もう少し背が高い。


「はい。自分とヤンの家以外は入ったことが無くて。台所の横に部屋があるのは便利そうですね。それに、とっても明るい。」


「この窓は南向きだからね。でも、昼間はとても暑い。この蒼色魔石に助けられているよ。」


そういうと蒼い髪の青年は蒼色魔石を握りコチラに風をソヨソヨと送った。首元を風が通り過ぎると汗が乾くようで気持ち良い。


「すげー!クラールさん、魔石使えるんだ!この国じゃあ魔石を使えるのは貴族だけですよ。カレトーリカの平民は優秀なのですね。」


ヤンは目を輝かせた。


「まあな。」


クラールと呼ばれた蒼い髪の青年はこめかみをポリポリと人差し指で掻いた。


「ね、シュリンピアの商人とちょっと違うだろ?」


ヤンは楽し気にリューグ言う。


「クラール、薬草が日に焼けてしまわないように此処に置いたらどうだ?」


ラウが鉢を一つ、ドアの横の窪んだ場所に置いた。


「あー良いですね。そうしましょう。ヤンとヤンのお友達の君、お願いするよ。」


クラールに指示され二人はチャキチャキと鉢を運んだ。


「ラウさん、クラールさん、このリューグの家族がさっきの蒼色魔石を作っているんですよ。凄いでしょう?」


ヤンが急に背後からリューグの両肩に手を起きキラキラした笑顔で言った。


「あ、いや、ほとんどは妹が。それにヤン、魔石のことは他国の方にはちょっと・・・」


「あ、リューグごめん。さっきの蒼色魔石を見たら、つい、自慢したくなっちゃって。てことで、ラウさん、クラールさん、これは内緒ってことでお願いします。」


ヤンは少し苦い顔で笑って誤魔化した。


「ほう、君の家族がね。それは凄い。でも、魔石の事は確かに簡単に話して良いものではないだろうな。商売には秘密は付き物だ。分かった。内緒にしておこう。その代わり、ヤン、薬草の取引は贔屓してくれよな。」


クラールはイタズラな笑顔をした。


「クラールさん、他国の貴族は平民をゴミ扱いするって聞きました。本当なのですか?」


リューグは真面目な顔で質問した。


「私たちのカレトーリカでは平民をゴミ扱いする貴族は少ないが、身分はしっかり分かれているよ。でも、不敬があれば平民を処分することもある。」


「うちの国王様は平民に限らず国民を処分するなんてしたことないけど」


「それはきっと国王様と国民の信頼関係がしっかりしているからだろう。平民のヤンのお父上も王宮に上がって国王様とお話することがあると聞いたが、カレトーリカではそのような事は無い。貴族と平民では生きる世界が違うのだ。」


「ふーん。同じ人間なのに、か。」


リューグは不満気に呟いた。


「リューグのお父上も王宮に上がるのかい?宰相や国王様とお話するのかな?シュリンピア頭脳と呼ばれる平民が魔石を作ったと聞いたけれど」


横からラウが訊ねた。


「まあ、王宮に行くことはありますが、何を話しているかは知りません。」


リューグはなんとなく嫌な質問に感じたので、つっけんどんに答えた。


「商人の噂で、は魔石を悪用してある国を滅ぼすことに荷担している者がいると聞いたけど、何か知らないかな?」


「うちの家族が魔石を悪用させているとでも?」


リューグは一瞬、ラウからギラリと見られた気がした。うちの家族が犯人扱いされているみたいで気分が悪い。


「いやいや、失礼。そういうつもりは無いんだ。不快な思いをさせて申し訳ない。道すがらの噂話だ。聞き流してくれ」


クラールがガハハと笑い


「そういえばお茶の一つも出してなかったな。飲んでいくだろ?」


と言った。だが、その笑いは外から叫ばれた宿屋の親父の怒鳴る声で止まった。宿屋の入口前の参道から部屋の窓のへ宿屋の親父の怒鳴る声が聞こえた。


「おーい、坊主ども。いい加減降りてこないと、この荷物貰っちまうぞ!」


宿屋の入口前に停めた馬車と荷物の番を宿屋の親父さんに頼んでいたのだ。慌てて部屋を出たヤンとリューグは馬車の横で番をしてくれていた宿屋の親父のところに駆けつけた。


「すみません、親父さん。」


「この暑さの中、いつまで待たせるんだ。危うく干からびるところだ」


暑さで真っ赤な顔をした宿屋の親父さんの愚痴を右から左に聞き流しお礼を言うとすぐに、ヤンは馬車を出発させた。リューグは再びヤンの隣に座る。動き出した馬車から宿屋に二階を見ると、クラールが笑顔で大きく手を振り、一方、ラウは胸の前にがっしりと腕組みしてニコリともせずコチラを凝視してた。


ヤンは「まいどー!」と手を振り返したが、リューグはどうしてもそんな気にはなれず、見てみぬフリをして、ずっと先まだ見えない平民門へ目を向けた。


蒼色魔石を使える二人でした。

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