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ビーシュリンピア  作者: クラウンデイジー
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魔石職人は忙しい

蒼色魔石はセイリア一人で完成できるのか。魔石の依頼はまだまだ次々やって来る。

夕食後もセイリアは魔石作りを爆走中だ。ポレストは父であるが、魔石職人の親方なのだから、ポレストが「今日中に完成させろ」と言ったら、絶対に今日中なのだ。そして、更に言えば、こうして困ったことになっているのは、元はと言えば全ては自分がダラダラ過ごしてしまったせい。ぐぅの音も出ないほどに。


セイリアの隣ではポレストが水色魔石を作っている。リューグが運び込んだ水の壺から次々と明るい水色の石が作られていく。集中すれば純度は合格点を貰えるセイリアだが、スピードは全くポレストには敵わない。純度を気にしなければリューグがなんとか着いていけるか、といったところだ。


本当はセイリアも作る一緒に予定だったのだが、セイリアは明朝の納期の蒼色魔石が完成していない。リューグはリューグで任されていることがあるので、ポレスト一人で作るしかない。


セイリアは午後から立ちっぱなしな上、同じ作業の繰り返しなのでいい加減飽きたし疲れたしでイライラしていた。いっそ丁度良く隣にいる父に八つ当たりしてしまいたい気分だが。でも、隣にいる父の手を見ると、そこに次々と作られる魔石が目に入った途端、胸がチリリと感じて少しだけ昼間の自分に反省した気になった。


「父さん、ごめんなさい。頑張ります」


リューグもまた調合室で仕事を続けていた。持ち込んだ素材は薬草園から預かった薬草だ。病気が無いか、薬草として力を発揮できる状態か、一鉢一鉢丁寧に耳を傾ていく。その後、必要であれば根元に白魔石を置いていく。白魔石は清めの魔石と呼ばれていて、浄化や洗浄の効果があるので、弱っている薬草や病気にかかっている薬草の根元に置いて健康な薬草になるよう調整するのだ。


その後、鉢は白魔石を置い物とそうでない物に分けたとに仕分けてた。一通りの作業を終えたリューグは心配気にセイリアに目を向けたが、隣にいるポレストが静かに恐い目で見てきたので大人しく寝室へ引っ込んだ。


「セイリア、がんばれ」


そして、セイリアがなんとか魔石を完成させたのは、次の日が始まった頃だった。


「やったぁ!全部出来た!あーでも惜しい。日を越えちゃった。」


仕事から解放され、また、一人でやり切った爽快感で疲れが取れたような気分でガッツポーズを決めた。一人で仕事を完遂したのは初めてなのだ。いつもなら、十箱もの依頼の場合はポレストかリューグが途中から手伝ってくれていたからだ。


「わたしだって、やれば出来る子よ。うふふん」


だが、浮かれ気分はあっという間に消されることとなる。


「まあ、朝までに完成したんだから今回は良しとするが、次は許さんぞ。納期があるのにギリギリの完成など、もってのほかだ」


ポレストにビシッと言われてしまったからだ。


「申し訳ありませんでした」


午前中のダラダラを思い出す胸から胃の辺りまでがキューッなり、一気に気分もシュンとなった。一応、「最後に一言誉めてくれるかなー」と思いチラリと父を見たが、一瞬、コチラに恐い目を向けた後、黙って完成した魔石の確認を始めたので、大人しく寝室へ下がった。


夜が明け、セイリアが朝起きると、ポレストは既に王宮へ向かった後だった。朝食が終わる時間に荷馬車が迎えに来て、完成したばかりの蒼色魔石とポレストを乗せて王宮へ向かったのだ。


「本当に危なかったわ。」


「ホントだよ。完成があと数時間遅かったら父さんの首がなかったかもしれないぞ。」


「やだ、お兄ちゃん。ハインリッツ様は平民の首なんてはねないわよ。」


「ハインリッツ様はそうかもしれないけど、ほかのお貴族様がそうとは限らないだぞ。他国では、平民なんてゴミと同じ扱いなんだって宿屋にいたカレトーリカ人が言っていたぞ。」


「そうなの?他の国では、私たち、ゴミなんだ」


セイリアはブルルッと震えた。他国に行く予定は無いが、他国からは貴族も平民も来るのだから、気を付けなければいけない。


「今日は真面目に水色魔石を作ります」


セイリアは呟くと調合台に向かった。今日も同じ失敗は出来ないし、寝不足でダルいので、仕事早めに終えて今夜は早めに寝たいと思った。


ポレストはガタガタと揺れる荷馬車の荷台に護衛の騎手たちと乗っていた。目の前にはセイリアが無事に完成させた十箱の蒼色魔石が積まれている。


実は、まだ仕事の心得も覚束ないセイリアに十箱も魔石作成を任せるのを不安に感じていたポレストだったのが、成人になる前にもう少ししっかりして欲しいと思うところでもあった。


「下の子で女の子だからと、少し甘やかして育ててしまったからな。」


ポレストも反省するところではあったのだ。でも、セイリアはなんとか一人で完成させることが出来た。


「これからは頑張って貰わないとならないんだ。」


ポレストは両手を握りしめた。実のところ、まだ何の魔石がいくつ必要なのかも分からない。砂漠化が深刻なのは他国も同じことで、もっと酷い国もあるのだ。世界全体的に気温が高くなり、干上がった土地も増えている。


その為、少しでも涼しく暮らしたい他国の貴族からは風を起こす蒼色魔石の依頼が、他国の王宮からは水を得られる水色魔石の依頼が殺到している。


自給率の低いシュリンピアは食料を輸入に頼るしか無い今、魔石はお金に代わり交易の手段となって国を支えている命綱なのだ。


これは外交を一手にになっている宰相のバルバロスの功績とも言える。国境林に異変が起こった頃から周辺各国を視察し、砂漠化を調査する中で、シュリンピア以上に生き残り策に行き詰まっている国があるのを知ったからだ。それはちょうどポレストが魔石を初めて作った頃のことで、国内だけでなく、輸出にも都合の良い発明だった。


最近では、オーダーメイド魔石の開発依頼もあり、成功報酬の契約ではあるが、一層研究を進めることとなったのだ。


ただ、魔石は白魔石のように置いて使う物と蒼色や水色魔石のように願いを注ぎ使うものがあり、なかなかオーダー通りの物が作れないというのが現状だ。時折、魔力が高いらしい人々もいるが、貴族も平民も今のところ魔力といえるほど力を使える者は無く、魔石を使うと次に使うまではしばらく休憩するしかない。もちろん大きな魔石は作ることはできるが使用する力が足りないので、大がかりな装置は作れない。


「バルバロス様も依頼を受けてくるのは良いが、現実的な依頼かどうかは考えて欲しいものだ」


研究も進めていかなければならないが、魔石を作れるのはポレストとセイリアとリューグの三人しかいない。大急ぎで作ると言っても限度がある。なにせ三人だ。限界はすぐに来る。今日これから話し合う予定のとこを考えると気が重いポレストなのだった。


たった三人の親子の肩に背負う物として重いですが、頑張って欲しいと思います。

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