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ビーシュリンピア  作者: クラウンデイジー
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レディサンの小言

気持ちを引き締めていきたいレディサンと、やっぱり緩いセイリアの新しい一歩。

リューグが出発してから3日。セイリアはやや元気は出ないものの、生活リズムは崩さずに過ごしていた。というのも、レディサンが小うるさくセイリアに言っていたからだ。


「セイリア、魔石作りの時間ですよ。」


「セイリア、そろそろ寝ましょうよ。」


「セイリア、そろそろご飯を作らないと長老様を困らせてしまうでしょ。」


「セイリア・・・」


最初は気力が湧かない感覚だったので助けられていると感じていたセイリアだったが、3日も続くと少々煩わしく感じてきていた。


「ねぇ、セイリア、今日は水汲みの日ですわよ。」


「レディサン、あのさ。ありがとう。」


「あらいやだ、ありがとうなんて。うふふ。」


「違うのよ。」


バツが悪そうにセイリアがレディサンに向き合う。


「お兄ちゃんにも散々心配されたから、レディサンの気持ちも有難いんだけど」


「だけど?」


「ちょっと、その、うるさいなぁと・・・」


「なんですって?!」


セイリアは少しニヤっとしながら舌を出したが、


「セイリア、笑ってごまかしてもダメです。」


と、レディサンにピシッと言われてしまった。更に


「そんなことだからリューグも心配が尽きなかったのですよ。言われたくないなら言われる前に、周りを満足させる仕事をして行動で示しなさい。朝も起こされるまで布団から出ず、仕事も言われるまで椅子から立たず、そんなあなたが、うるさい、とは。どの口で言っているのですか。」


「ごめんなさぁい。」


「語尾を延ばさない!」


「はぁい。」


「ほらまた、語尾!」


レディサンはこれまで、ちょっとお姉さんぶる花ではあったが、ポレストもリューグもいなくなった今「セイリアを支えるのは自分しかいないのだ」と気合十分だ。常に味方であり、親友であり、支えになるのだ。今まで以上にしっかりしなくては。


「でも、ちょっと厳しすぎないかしら。もう少しゆっくりと、私の成長を見守ってくれないかしら。」


「あら、今まで通りでは成長とは言えないでしょ?セイリアは後数ヶ月で成人するのですよ。一般の見習いよりも明らかにダラついているセイリアが、見習いを卒業した成人として認めてもらえるようになるには、努力はどれだけしても足りないということはありませんよ。」


レディサンはだんだんにお姉さんからお母さんのようになってきた。


「だから、なんで他の仕事の人と比べるのよ。私はこの国にたった一人の魔石職人なのよ。魔石がちゃんとできていれば問題ないじゃない。納期に間に合い際すれば、誰も文句は無いでしょう?」


セイリアは鼻をフンと鳴らし偉そうに胸を張って言った。


「セイリアのそういうところなのよね。」


レディサンがハアとため息をついたところに長老が庭から戻ってきた。そう言えば、セイリアとレディサンは朝食を摂った後から今まで台所にいたのだった。


「大変、長老様、もうお昼の時間ですか?」


レディサンが慌てて言った。


「いやいや、ちょっと一休みに。」


長老は穏やかな声で言い、セイリアの向かいの椅子にヨイショっと言いながら座った。今日も変わらず日が出れば外は灼熱の日差しだ。長老はリューグの後を引き継いで庭の植物たちを優しく世話して回ってくれているのだ。首に巻いたタオルで額に流れて来る汗を拭いている。


「リューグ坊ちゃんたちは今頃どうしていますかのぉ。」


「お兄ちゃんのことはヤンが面倒みるって言っていたけど。王宮の中のことはさっぱりだから想像もつかないわ。」


「王宮の裏庭は、昔は騎士の訓練場に続く広い庭園があったのですが、今は滅びた町から連れ帰った下町に屋敷の無い貴族の長屋が所狭しと建ち並んでいるという話です。その裏庭を掘って新しい地下王国の入り口にするそうですから、ちょいと狭い思いをしているかもしれんですな。」


「ふーん。王宮の裏庭は他の町のお貴族様の町になっているってことなのね。平民が大勢入ってしまって大丈夫なのかしら。」


「それは、あちらが呼び集めているのですから、大丈夫でしょう。ただ、平民にもいろいろな者がおりますから。まあ、ベテランの庭師も何人かつけていますから心配はいらんでしょうが。側にいるヤン坊ちゃんもあの性格なので、今頃新しい仲間を見つけて楽しく過ごしているかもしれませんね。」


「確かに。ヤンは垣根無く誰とでも仲良くなっちゃうところがあるから、お兄ちゃんも一緒に入れば新しい仲間を見つけられるかもね。それより」


セイリアは台所の水差しから汲み置きの井戸の水をコップに注ぎ長老へ渡した。


「長老さま、これ」


「あーありがとう。井戸の水はいつ飲んでも冷たくて美味しいですなあ。あー生き返る。」


長老はコップの水を飲み干した。


「ジェッソン薬草園の庭にも、この庭の井戸と同じものがあるのですよ。」


「この庭の井戸と同じもの?」


「そう。この庭の井戸と同じ、井戸に金色のドラゴンの紋章が付いている特別な井戸です。この庭と同じようにジェッソン屋敷の前の庭のちょうど真ん中に。いつでも冷たくて、特別な力を感じる井戸水が湧いている。」


「父さんから、井戸水には特別な力があるのは聞いているけれど、井戸に金色のドラゴンの紋章なんてあったかしら。」


セイリアは、はて、と首を傾げた。


「セイリア、ありましたわよ。今はコケや土で汚れているけれど、チラッと金色が見えたものがあったから、きっとそれですわ。」


「ウフォフォフォ。レディサンは良く見ておるの。」


「そりゃあ、地面に置かれた時のちょうど目の高さにあったものですから。見逃すはずはありませんわよ。」


レディサンは自慢げに茎をピンと伸ばした。


「王宮の庭にも同じ井戸があるんですぞ。下町の中にも後二か所。全部で五か所に金色のドラゴンの紋章の井戸があるのです。」


「えー知らなかった。」


目を丸くするセイリアに長老は優しく微笑んだ。


「セイリア嬢は見習いですからな。まだ、知らないことがあって当然です。成人してから知ることも数え切れません。焦らずにセイリア嬢はセイリア嬢のペースでおやりなさいな。」


そして、「さてと」とゆっくりと立ち上がり、長老は庭へと戻って行った。


「ほら、レディサン。長老さまは私のペースで良いって。」


「セイリア、だから、それはちゃんと努力している人の場合の話ですからね。」


人はなかなか変われるものでは無いのです。

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