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ビーシュリンピア  作者: クラウンデイジー
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レディサン魔石

セイリアは次の魔石開発へ進みます。

初めて作った魔石は、一旦、お蔵入りとなってしまったが、まだたった一つだ。相変わらず、何が必要なのか分からず、闇雲に取り組まなければならないのが作業の壁だが、逆に考えれば今は何が出来上がっても良いのだ。少なくとも、出来上がった魔石が実際の地下王国の生活では使えなくても、クレームが来るは無い。


レディサンが「陽を浴びたくない」と言っているので、今日は一日、調合室だ。セイリアは調合台にレディサンを置いて、作業台の横にある丸椅子に座った。


「ねぇ、セイリア、いつだが、リューグが鉢に置いていた白い石も魔石?」


「そうよ、白魔石。あれは黄色魔石と同じような作り方なの。月の力を借りるのよ。月が綺麗好きなのかは知らないけれど、土の毒素を浄化してくれる効果があるのよ。あと、ネックレスにして首にかけると気持ちが落ち着くことがあるようよ。こっちは個人差があるけど。」


「ふーん。じゃあ、他にもそういう方法で作る魔石はどんなものがあるのかしら。」


「残念だけど、レディサン。父さんが開発した魔石は白魔石、蒼色魔石、水色魔石の三種類だけなの。私が作った黄色で四種類目。これまで、魔石を多用した生活は送っていないからね。平民は使わなくても無くてちゃんと生活出来ているし、特別に必要とされていた訳では無いのよ。これからはそうもいかないようだけど。」


「あらま。それは、新しい世界の幕開けということね。これからのシュリンピアは魔石と共に生きて行く、ってね。」


「あらそれ、良いわね、魔石と共に生きて行く。」


今日の調合室は談話室と化している。セイリアとレディサンは魔石の話をしながら、結構盛り上がっている。もちろん、セイリアは何の作業もしていない。


「セイリア、次はどうしましょう。素材は何でも良いとして、その力を借りられれば魔石は作れるのよね。」


「理屈ではね。でも、試す前には良く考えないと。毒を発する魔石とか出来ちゃったらシャレにならないじゃん。父さんがいつも煩く言っているけど、私もそう思う。毒の魔石が出来ちゃったら、この世の中に毒魔石のレシピは存在するってことになるし、その事実は消えない。黄色魔石みたいに保管しても盗まれる可能性もあるし、誰かに知られて悪用されたら大変だよ。」


「意外と怖い作業なのね、魔石開発。」


レディサンはブルッと震えた。


「でも、ほら、食べ物とか、安全な植物とか、素材はたくさんあると思うのよ。それを片っ端から試していけば良いんじゃない?」


毒魔石を開発してしまうかもしれない当の本人が案外サッパリしている。


「要するに、気を付ければ良いってことよ。」


先ほどの説明から、セイリアの考えが浅い訳では無いとは思うが、どうも深く考えているとは思えない。むしと、この余裕っぷりは「あ、うっかりやっちゃった」とか言いかねない空気だ。レディサンは魔石開発の作業には絶対に付き添おうと固く決意した。


「それで、セイリア、その安全な植物って、何か知っているのかしら?」


「うん?」


レディサンは先ほどの決意に「事前準備から付き添う」を追加した。


ポレストは相変わらず日中は外出している。最近は王宮だけでなく、ジェッソン薬草園へ行くことが多くなっている。何やらジェッソンと語ることが多いようだが、薬草園の作業や配送で忙しいヤンには何の話をしているのかは検討もつかないそうだ。リューグはヤンが預けていく薬草の鉢の量が増えている為、晴れていれば毎日庭で作業をしている。今日も昼食になっても誰も台所に戻ってこない。


ポレストは外で適当に済ますだろう。セイリアはリューグの昼のパンとトマトスープをテーブルに残し、再び調合室へ戻った。


レディサンをセイリアの左側の調合台に置いて汲み置きしてある井戸の水を火にかけた。しばらくするとヤカンの口から蒸気がモウモウと上がってくる。


セイリアは蒸気に手を翳し蒼色魔石、次に足元の井戸の水へ手を翳し水色魔石を作った。そして、蒼色魔石を握りそよそよと風を起こし、次に水色魔石を握ると握った手から水をポタポタと垂らした。


「セイリア、何をしているの?」


「うーん。魔石の効果って何なんだろうと思ってね。水色魔石は、魔石を介して水から水を発生させているけど、蒼色魔石は蒸気から風。蒸気は濡れる空気って感じだけど風では無いわよね。」


「なるほど、たしかに。元の素材は水、それを温めたものが蒸気。ヤカンの口から出ている、と。」


レディサンはヤカンの様子を観察する。ふむふむ。蒸気はヤカンの口から上に向かってモウモウと上がっている。


「ねぇ、セイリア。その蒸気って自分で動いているのかしら。」


「そうみたい。これ、手を近づけ過ぎると火傷するから要注意なのよ。めっちゃ熱いんだから。あれ?」


そう言いながらセイリアは蒸気に手を近づけると、一度手を引っ込め、もう一度近づけ、何度もそれを繰り返した。


「レディサン、この蒸気の近く、ほんのり風があるわ。」


「あら、そうなの?じゃあ、やっぱり、魔石の効果は素材の特徴によるのね。だとしたら、それぞれの植物の効果も引き継がれるのかしら。ちなみに、私の一族の効果は疲れ取り。疲れた時に私の葉を乾燥させた薬や葉自体を料理に入れると疲れが取れて次の朝には元気になるわ。力を使い過ぎた時に痛めた筋肉の痛みを和らげたりもするそうよ、ほんの少し浄化の効果もあるから、薬師様やお医者様は風邪予防や風邪の引き始めに使うこともあるとか。」


「ふーん。」


レディサンの考察が進む毎に、セイリアの瞼が明らかに閉じてきているが、レディサンはお構いなしに先を続ける。


「セイリア、要するに、私は毒では無いということよ。だから、私から魔石を作ってみない?」


「うん?レディサンの効果?毒じゃない?魔石?」


「そう。私の効能に毒の要素は無いから、試してみない?で、出来たもの次第で、他の植物も試してみるの。どう?」


セイリアはレディサンの考察は理解し切れなかったが「毒では無いのなら試しても良いか」と思った。だが、蒼色魔石作りと水色魔石作りを思い出し、行動に移すのはやめた。魔石を作ると素材は減る。もしも、レディサンから魔石を作ったらレディサンはどうなるのだろうか。


「レディサン、それは危険じゃないだわ。魔石を作り出す時には力を少し借りるけど、それであなたがどうなるのか分からない。蒸気も水も、作った後には素材は減るの。あなたの具合が悪くなるかも」


「なるほどね。確かに分からないけど、セイリアならやめてと言えばやめてくれるでしょ?」


「まあね」


「今日のわたし、柄に無く健康優良児。ちょっとくらい痩せたほうが好みの体形なんだけど。」


「分かりました。では少しだけお借りします。」


「どうぞ存分に」


セイリアはレディサンのやる気に負けて、「レディサン魔石」の試作に取り掛かることになってしまった。早速、セイリアはレディサンに掌を向ける。


「レディサン、嫌な感じがしたら、すぐに言うのよ。」


「分かってる」


セイリアは掌に意識を集中させて力を込めていく。


「レディサン、少しだけ力を貸してね」


目を瞑り小さく呟く。掌に力が集まり温かくなる。手を握ると掌を覆うような温かい膜がだんだん小さくなり、セイリアの掌の中で固まり魔石となった。「レディサン魔石」は握った手の中で冷たい石となって完成している感覚がある。


セイリアは恐る恐る目を開けてレディサンを見た。セイリアの心配を余所にレディサンはニコニコして元気そうだ。


「どう?大丈夫?」


セイリアは心配気な表情で確認する。


「ちょっと疲れたくらいで大丈夫よ。それより、どう?出来た?」


「うん。出来た、と思う。」


セイリアはレディサンの前に握った手を出し、ゆっくりと手を開いた。そこには透明感のある緑色の魔石があった。


「緑・・・なのね」


意外そうになレディサンに対して


「そりゃあそうでしょ。植物と言えば、緑、じゃない?ほら、町に緑を、とかっていう植物を増やしましょう目的のポスターとかあるじゃない」


「それは偏見。私は薄い黄色の花弁が自慢の花よ。それが、こんな、いかにも草、みたいな真緑色なんて。植物を一括りにしないで欲しいものだわ。」


「でも、良く見て、この魔石。透き通っていて可愛いよ。ね、レディサン。」


せっかく力を貸してくれたのに、出来上がった魔石の色は好みのでは無い様子のレディサンの火に油を注いでしまったと気が付いたので、セイリアは慌ててフォローにまわる。


「色はともかく、透き通っていて可愛い?可愛い。うん、なら良し」


とりあえず、「レディサン魔石」は素材提供者のレディサン様に無事に合格をもらえることとなった。


レディサン魔石の効果は次回です。

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