肉ー
さすがに犬を食うのは無理よね。
じゃなかった。ゴブリン討伐に決定である。肉が食えない……。いや! この前ゴブリンはワイルドボアと一緒に襲いかかってきたし! もしかしたら今回も一緒かもしれないわよね!
「肉目的で討伐する魔物を選ぼうとする人間、初めて見たぜ」
「魔物肉は美味いが、一日でダメになるからな」
やれやれと肩をすくめたニッツたちが机の上に辺境伯領の地図を広げる。
「目的の村は馬車で一日ってところだ。途中で野宿して、翌日の朝に村へ到着。村人に詳しい話を聞いてからゴブリン退治と行こう」
「……馬車で一日?」
「おう。近くで助かったな」
「……その間のお肉は?」
「食事が肉前提かよ。ま、保存食だな」
「……もしかして、干し肉?」
「だな。騎士団時代も干し肉だったろ?」
「……こんなにも胃袋とお腹が『お肉!』になっているのに?」
「干し肉で我慢だな」
「干し肉は肉じゃないわよ!」
「とんでもないことを言い出した……。ま、しょうがないだろ。移動もまた冒険者の仕事だ」
「なんてこったい……」
力なく両膝を地面につく私であった。
「ん、干し肉あげる」
しゃがんだフェイス君が干し肉を渡してくれる。
「うぅ、優しい……フェイス君が優しい……しかも美少年……心が満たされる……。でも、干し肉でお腹は満たされないのよ! 肉欲が! 満たされないのよ!」
「あの『雷光』が肉欲とか叫ぶなよ……」
「憧れが音を立てて崩れそうだな……」
「う~ん、転移魔法で向かうのもありですけど、さすがにパーティ全員は無理ですし……」
ミーシャの発言に閃いた私である。そう、馬車で一日かかるなら、転移魔法を使えばいいのである!
ニッツの広げた地図で村の場所を確認。幸いにして知っている場所なので問題なし。転移魔法は知っている場所か目視できる範囲でしか移動できないからね。
「はーい、じゃあちょっと集まってー。肩と肩が触れあうくらいにー」
理由を説明しない私に戸惑いつつ、ちゃんと言うことを聞いてくれるニッツたちだった。
――意識を切り替える。
剣士ではなく、魔術師として。大規模な魔術を使うために呼吸法から変えてしまう。
大自然と一体に。
大気中の魔力を呼吸法によって体内に取り込んでいく。
「――我が征く道に迷いなし。我が征く道に憂いなし。地平の果てに夢を見て、今ここに奇跡の御業を再現せん」
「そ、その呪文は、まさか――」
冷や汗を流したミーシャが声を上げるのとほぼ同時、私は転移魔法の呪文詠唱を終えた。
「――虎よ、虎よ、千里を駆け、千里を帰れ」
ぐわん、という腹の底がねじれるような感覚と共に……私たちは目的の村へと転移した。




