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「やってくれたわね」
皮膚が焼けて剥がれ落ちていくと同時に再生していく。
テュポンの自爆によって辺りは灰すら残っていない。
「…海の子」
「はっ、どこぞの女神さんじゃないか」
「あなたもなかなか懲りないのね」
ネレウスが床に転がったまま憎まれ口を叩く。
「…もう時間ね。あなたは私に勝てないのよ」
「黙れよ、クソババア」
ネレウスは親指を下に下げた。
***
「起きなさい」
どこからか声が聞こえる。
言われるがままに目を覚ますと辺りは何も無くなっていた。
動物や建物はおろか植物の一本も生えていない。
この地は、死んだのだ。
「あ、姫さんだ」
「ネレウス…生きていたのね」
「死ぬかもとは思ったんだ」
「まあ」
「ふっ、フロリスがあんたに心を許していたのがわからないな」
「わからなくてもいいのよ。ところであなたはもう普通の攻撃でも死ぬのかしら?」
「さあな」
侍女が持っていたナイフを取り出す。
「さようなら」
倒れていたネレウスに跨り、首に刃を突き立てた。
波が来たり引いたりを繰り返している。
砂が音を立てる。
「…うん、死なないわね」
「ああ、死なないな」
「あなたは私を殺さないの?」
「体が動かないんだ」
「どうして?」
「人間でいることを捨てた代償だよ。僕とテュポンは近づきすぎたんだ」
「そうなの」
「驚きもしないね」
「私もそうなるのかしら?」
「なりたいの?」
「…わからない。でも、女神を降臨させ続けたらどうなるのでしょうね」
「壊れたくても壊れないんだ、苦労するだろうね」
「そうね…」
寝たまま話を続けるネレウスの隣に座り、明るくなりそうな空と海の境目を見つめる。
「何もないね」
「ああ、何もない」
「私たち以外誰もいない」
「ああ、誰もいない」
「疲れた?」
「いいや」
「そうね、私もよ」
カリスタは立ち上がり、砂をはらう。
「今度会うときがないことを祈るわ」
「それはないだろう、姫さんとこのあいつを僕は必ず殺す」
「できるならやればいいわ」
「必ずやり遂げてみせるさ」
「じゃあね」
カリスタは振り返ることなく山の方へと進む。
ネレウスは明けたばかりの空を見て目を閉じた。




