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山…と言っても数十キロ歩かなければ辿りつかない。
遠くに見える山の輪郭を目指して足を進める。
これからどうしよう。
あの子たちも死んだ。
フランソワ子爵邸の周りの土地は焦土と化した。
そう、あの子たちは死んだ。
死んだ…のよ。
今は足を止める気力がない。
ただ、左足を出してその次に右足を出す。
その繰り返し。
止まってしまったら最後動けなくなる気がする。
顔を下に向けても、足は動いている。
まだ、できる。
まだ、進める。
顔をあげる。
何もない。
乾いた風が吹いているだけだ。
*
時は少しだけ遡る。
王宮――
ガシャンと音を立ててティーカップが床に落ちる。
「王妃殿下!!」
「母上!!!!」
男の子の叫び声だ。
声変わりの時期特有の重みを増した声。
(本当は王子の方を狙ったんだがな…)
フクロウの手は王宮にまで及んでいた。
*
「おひとり様ですか?」
「ええ」
「203号室、角のお部屋です」
カリスタは困っていた。
山へと向かっていた最中、偶然通りかかった馬車に乗せてもらい、王都に来たものの、連絡手段がない。
カリスタは魔力がないため、侍女なき今、カリスタが取れる手段は存在しない。
生活費はドレスを売りやりくりしているが、この状況がいつまで続くのかもわからない。
窓の外を眺める。
街行く人々の笑い声、小さな子供、手を繋いだ親子。
かつて、父さんが守れなかったもの。
私が取り戻さなきゃいけないもの。
そして、なぜか一方的に殴られてる人。
灰色の髪がさらに汚れていく。
「…あれは」
私は階段を降りて路地に行く。
「あなたたち、何をしているの?」
声をかけると、暴行を加えていたものたちは一目散に逃げてしまった。
「なぜ、ここにいるの?」
「…私は夢でもみているんでしょうか」
「きちんとなさい、ギル」
いつものように笑う。




