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朽ちぬ女王  作者: 水無適
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山…と言っても数十キロ歩かなければ辿りつかない。

遠くに見える山の輪郭を目指して足を進める。



これからどうしよう。

あの子たちも死んだ。

フランソワ子爵邸の周りの土地は焦土と化した。

そう、あの子たちは死んだ。

死んだ…のよ。



今は足を止める気力がない。

ただ、左足を出してその次に右足を出す。

その繰り返し。

止まってしまったら最後動けなくなる気がする。

顔を下に向けても、足は動いている。

まだ、できる。

まだ、進める。



顔をあげる。

何もない。



乾いた風が吹いているだけだ。




時は少しだけ遡る。


王宮――

ガシャンと音を立ててティーカップが床に落ちる。


「王妃殿下!!」


「母上!!!!」


男の子の叫び声だ。

声変わりの時期特有の重みを増した声。


(本当は王子の方を狙ったんだがな…)


フクロウの手は王宮にまで及んでいた。




「おひとり様ですか?」


「ええ」


「203号室、角のお部屋です」


カリスタは困っていた。

山へと向かっていた最中、偶然通りかかった馬車に乗せてもらい、王都に来たものの、連絡手段がない。

カリスタは魔力がないため、侍女なき今、カリスタが取れる手段は存在しない。

生活費はドレスを売りやりくりしているが、この状況がいつまで続くのかもわからない。


窓の外を眺める。

街行く人々の笑い声、小さな子供、手を繋いだ親子。

かつて、父さんが守れなかったもの。

私が取り戻さなきゃいけないもの。

そして、なぜか一方的に殴られてる人。

灰色の髪がさらに汚れていく。


「…あれは」


私は階段を降りて路地に行く。


「あなたたち、何をしているの?」


声をかけると、暴行を加えていたものたちは一目散に逃げてしまった。



「なぜ、ここにいるの?」


「…私は夢でもみているんでしょうか」


「きちんとなさい、ギル」


いつものように笑う。

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