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「ただいまもどりました、お父様」
「おかえり、カリスタ」
再会の抱擁を。
お嬢様から温かくて少し冷たい感情が流れてくる。
「準備が整ったと聞きました」
「ああ、でもひとつ条件がある」
「何?」
「話が終わった後、私はカリスタを王として扱います。もう父親として接してあげられなくなります。それでも聞きますか?」
「…はい」
拳を握り俯く。
王とは孤独な生き物だと強く感じます。
「夜でも、夜に話しましょう」
「ああ、わかったよ。入浴の準備はできているから体を休めておいで」
「はい」
微笑みを交わすこの瞬間ももうないのかと思うと物淋しいです。
*
「では、お話しいたします」
既にカトリーヌの顔つきは親ではなく家臣としての本来あるべき姿に戻っていた。
「王家がアルスと協力して開発していた兵器というのはあの少年のことで間違いないでしょう。機械の力と悪魔の力を組み合わせることで、その均衡が崩れない限り倒すことができない最強の兵器となるそうです。既に兵器は最終テストを終え、戦場に突入させる段階に入りました」
「予想投入日は?」
「12月20日。2週間後です」
「はぁ…」
(あと1日遅かったら間に合ったのに…)
「1日、遅らせることはできませんか?」
「できて数時間が限界でしょうね」
「それでもないよりマシだわ。なるべく引き伸ばして」
「何か策があるのですか?」
「私の誕生日は覚えているかしら?」
「…!神降しを!?」
「それしかないのよ」
「…自ら戦場に立たれるということですか?」
「そうするしか止める方法はないわ」
「なるべく引き伸ばせるように、ですね。わかりました」
「ええ、頼んだわ」
「無理だけはなさらないでくださいね」
「…うん」
一瞬親子の影が見えた。
私たちとしてもお嬢様が直接戦地に赴くというのは避けたかった事態です。
しかし、決断なさったのはお嬢様で、そうせざるを得ない状況に追い込まれているのもまた事実。
犠牲なしに何かを成し遂げるのはやはり夢物語なのでしょうか。
我が王よ…
どうか、私たちに力を。
「わかった?」
「…尽力いたします」
「わかっているのならいいわ。今回ばかりはこれしかないのはわかっているでしょう?」
「…はい」
「生き残るわよ」
「何があっても御身を生かすと約束します」
「当たり前」
そう言ったお嬢様はどこか嬉しそうでした。
エメラルドの瞳が私たちに細められるのはかなり気分がいいです。
歪みきって泥沼に落ちても褪せることなく輝く瞳に心を奪われてしまったのはいうまでもないでしょう。
お嬢様のこれからに幸在らんことを。




