表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朽ちぬ女王  作者: 水無適
PR
66/74

66

「カリスタ様」


扉が静かに叩かれる。


「どうぞ」


「カトリーヌ伯爵からお手紙が届いております」


「お父様から?」


「はい」


「読み上げてちょうだい」


『カリスタ、元気にしているかい? こちらは言われた物を手配しておいた。フランソワの屋敷で待っているよ』


「なんとも簡潔ですこと」


「お返事はいかがなさいますか?」


「そうね……返事を書くより先に到着してしまうんじゃないかしら」


「……ギルを諦めるのですか?」


「もう半年以上待ったわ。これで目を覚まさないのなら、お父様のもとで療養した方が彼にとっても良いでしょう……」


「……そうですね」


再び扉が激しく叩かれる。


「カリスタ様!!」


カリン様だ。


「どうしたの?」


「ギルが……ギルが目を覚ましました!!」


どうやら神は、まだ私たちを見放してはいなかったらしい。


「ギル!」


「申し訳ありません、カリスタ様。目覚めるのが遅くなってしまいました。皆さんにも心配をおかけしました」


「お疲れ様でした」


どうしてそんな言葉をかけたのか、自分でもわかりません。


けれど、長い間ずっとうなされ続けていた彼を見ているうちに、そう言わなければならない気がしたのです。


……私たちにも、まだ人らしい部分が残っているということでしょうか。


ふと顔を上げると、ギルが今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「どうしました?」


「いや……なんか、一番欲しかった言葉をもらえた気がして……」


ギルは溢れた涙を乱暴に拭った。


「ギル。少し休んだらフランソワ邸へ向かうわ。それまでに、ある程度は体力を戻せそう?」


「はい。ご期待に応えられるよう頑張ります」


お嬢様は、どこか悲しげで、それでいて嬉しそうに微笑んでいた。


私たちは、お嬢様の笑顔が好きです。


願わくば、青空の下でそのエメラルドの瞳を細め、穏やかに笑っていてほしい。

私たちが守れなかったあの子たちの分まで、幸せになってほしい。


ですが、お嬢様はいつも、その美しい顔を苦痛に歪めながら茨の道を進まれる。


その姿は、痛々しいほどなのに、どこか聖書の挿絵のような神々しさすら纏っていました。


私たちは仕える者として、そんなお嬢様を支え続けると決めています。


それなのに、どうしてこんなにも不安が消えないのでしょう。


……それに、カリン様の件も早く解決しなければなりません。


やるべきことは、まだ山ほど残っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ