14.トランジット・リフト
データ回廊の突き当たりにそびえていたのは、分厚い超硬質ガラスと重厚な金属フレームで囲まれた巨大な垂直昇降区画――「トランジット・リフト」だった。
【朔】が操作パネルに触れると、左手首の【勇者の腕輪】が微かに共鳴し、パスワード不要の管理者プロトコルが自動的に実行された。
プキィィン、と電子的な起動音が響き、重い油圧の唸りとともにリフトの扉が静かに開く。
「……どうやら、権限の認証は問題なく通るらしいな」
「ですね……。ですが、塔の奥へ進むにつれて、空間全体の空気が重くなっているような気がします」
エレナが不安そうに杖を握りしめながらリフトの床を踏む。
【朔】は【解析】スキルを展開し、周囲の魔力密度と空間エラー率をモニタリングした。視界の端に表示される数値は、着実に危険領域へと近づいていた。
【システム通知:エリア移行警告】
移行先:『旧都の塔・第2層:中継プロセッサ区画』
空間エラー率:42%(※空間の整合性が徐々に失われています)
警告:長期滞在はハードウェアおよびコアへの継続的な負荷を引き起こします。
「ふん、セグメントの階層が上がるごとに、エラーのノイズが濃くなってるってわけか。だが、止まる理由はない。最深部まで一気にデバッグを完了させるぞ」
リフトの扉が閉じ、重力が縦方向へと大きくシフトする。
無機質な金属の壁面を滑るように、昇降区画は一気に数千メートルの高空へと加速していった。
数分後。
ガツン、と重い衝撃とともにリフトが停止し、目の前の扉が開き始める。
そこに広がっていたのは、先ほどの直線的な回廊とは異なり、無数の巨大な光のケーブルと魔力炉の冷却パイプが蜘蛛の巣のように張り巡らされた、巨大なプラント状の区画だった。
そしてその中央のプラットフォームには、異様な威圧感を放つ「巨大な多眼の要塞型ドローン」が、青白い光のなかで静かに起動を始めていた――。




