13.コード・クリーナー
ガキィィンッ!
四方から同時に跳びかかってきた『コード・クリーナー』の鋭いワイヤー脚を、左手の『ハード・シールド』が重い金属音とともに受け止める。
衝撃のベクトルを【解析】の予測演算で瞬時に計算し、フレーム全体へ綺麗に分散させる。安っぽい肉体であればとっくに肉肉しい飛沫を上げて粉砕されているところだが、硬質な純鉄のアーマード・ボディは微動だにしない。
「予測演算、完了。――ゴミ掃除の時間だ」
【朔】は【解析】スキルが弾き出した4体の動きの「同期ズレ(ミリ秒単位のタイムラグ)」を冷徹に見逃さなかった。
右腕の『高周波ブレード』の出力をわずかに跳ね上げ、最短距離で最初の1体のコア・プロセッサを的確に貫く。
パキンッ、とガラスが割れるような乾いた音が響き、蜘蛛型のセキュリティ・ドローンは内部のデータコードを盛大にスパークさせながら、黒い砂粒へと分解されていく。
【システム通知:撃破ログ】
対象:『コード・クリーナー』× 1 撃破
獲得データ:『純良エーテル回路』× 1
残り敵性個体:3
「残りの3体。行動アルゴリズムは単純な包囲攻撃か……なら、わざわざ付き合う必要もないな」
残る3体が同時に放ってきた光の弾幕に対し、【朔】は最小限のステップでその軌道をすべてバイパスする。
【睡眠最適化】と【耐候適応】によって完全にクリアになった脳のキャッシュが、空間の全データをミリ秒単位で処理し、最もエネルギー効率の良い「最適解のルート」を視界のオーバーレイに描き出していた。
スライドするように敵の懐へと潜り込み、右腕のブレードを一閃、二閃。
ガリリッ、ザシュッ――!
残りの3体も、まるで最初から存在しなかったかのように、次々とエラー落ちしたプログラムの如く光の粒子となって消滅した。
静まり返った『データ回廊』の中、冷たい青い光が【朔】の金属装甲に反射して鋭い輝きを放つ。
「ふう……。雑魚のファイアウォールにしては、そこそこいい運動になったな」
ブレードの熱を逃がすために腕の排気スリットからシュウッと白い冷却蒸気が立ち上る。
その様子を後ろで見つめていた【エレナ】は、息を呑みながらも安堵の表情を浮かべていた。
「すごい……。塔の防衛システムを、まるで古いエラーコードを消去するかのように……」
「システムである以上、必ず設計ミスや脆弱性が存在する。それを正しく突くだけだ」
【朔】は左手首の【勇者の腕輪】に視線を落とす。そこから放たれる青白い光は、先ほどよりもわずかに輝きを増し、塔のさらに深層――次の階層へと続く巨大なエレベーターゲートの座標を指し示していた。




