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12.旧都の塔:第1層

重い金属音を響かせて漆黒のゲートが閉じると、外の世界の喧騒は完全に遮断され、代わりに冷たく澄んだ電子音のような環境音が耳朶を打った。


目の前に広がっていたのは、薄暗い石造りのダンジョンなどではない。

床も壁も半透明の超硬質ガラスで構成され、その足元では無数の青白い光のデータストリームが幾何学的な模様を描きながら規則正しく流れていく、広大な近未来的な回廊だった。


【システム通知:環境ログ更新】


現在地:『旧都の塔・第1層:データ回廊』


空間特性:重力制御・魔力濃度が均質化された閉鎖セグメント。


敵性存在スキャン:前方50mに「自律型防衛コード・クリーナー」の反応あり。


「……なるほどな。外見は古代の塔だが、中身は完全に高密度サーバーの内部構造ってわけだ」


【朔】は足元のデータストリームを【解析】の視界でスキャンしながら、冷ややかに分析する。

スライムの粘液や血生臭い魔物の体液などではなく、ここにあるのはすべて洗練されたコードと純粋なエネルギーの奔流だ。この硬質でドライな空間は、システムエンジニアである彼の肌に驚くほど馴染んだ。


「朔さん、気をつけてください……! ここの魔力、外とは比べ物にならないほど濃密です。私たちの存在そのものを『異物(バグ)』として排除しようとする圧力を感じます」


【エレナ】が身を縮こまらせ、杖を強く握りしめる。

その言葉通り、回廊の奥からガリガリと金属同士が擦れ合うような特異な音が響いてきた。


光の流れる床の隙間から這い出してきたのは、光り輝くワイヤーと硬質な骨格パーツで形作られた、蜘蛛のような形状の自律型セキュリティ・ドローン――『コード・クリーナー』の群れだった。


【システム通知:敵性個体群確認】


対象:『コード・クリーナー』× 4


挙動パターン:侵入者のメモリ(生体データ)をスキャンし、完全消去(デリート)を実行するプログラム。


「ちょうどいい。塔の内部セキュリティがどれほどのものか、実地でストレステストをしてやるとしよう」


【朔】は両腕のフレームを展開し、カチリと武装をコンパイルする。

右腕には鋭利な『高周波ブレード』、左手には多重防御の『ハード・シールド』。そして左手首に嵌められた【勇者の腕輪】が、青白い光を帯びて静かに脈動を始めた。

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