11.旧都の塔:エントランス
漆黒の金属と無数の配線が剥き出しになった『旧都の塔』のエントランス。
その巨大な両開きゲートの前に立った瞬間、【朔】の視界の端で、脳内インターフェースがけたたましい警告音を鳴らし始めた。
【システム警告:アクセス制限検知】
エリアセグメント:『旧都中枢・第0層エントランス』
ステータス:生体認証および管理者権限の不一致。侵入者に対する『全自動防衛プロトコル』がスタンバイ状態です。
「ほう……。正面玄関からして、ガチガチのファイアウォールが張ってあるってわけか」
【朔】が冷ややかに呟いた直後、ゲートの周囲に張り巡らされた無数の幾何学模様の魔法陣が不気味に赤く明滅した。
ガキン、ゴキンと重い駆動音を響かせながら、壁面から漆黒の銃口のようなパーツが無数にせり出し、正確に【朔】の心臓と四肢を照らし出す。
「――お出迎えの砲撃か。相変わらずセキュリティの意識が高いことで」
「あ、危ないです、朔さんっ……!」
エレナが反射的に身を引くが、【朔】は微動だにせず、左手首の【勇者の腕輪】に視線を落とした。
腕輪の青白い光は、目の前にある旧文明のゲートが放つ暗号化されたシグナルを敏感にキャッチし、細かなデータストリームを【朔】の視界にオーバーレイ表示させている。
(――なるほど。こいつの認証プロトコルは、旧世界の管理者(Root)の署名データがあれば、このままパススルーできる仕様か。だが、向こうも不法侵入と判定してハニーポット(罠)を仕掛けてやがる)
力任せにぶち破ることも可能だが、塔の最奥へ進む前に【コア】の熱負荷やリソースを無駄に消耗するのは得策ではない。
【朔】は【解析】スキルと【勇者の腕輪】の権限を巧みにリンクさせ、ゲートの入力インターフェースにダイレクト接続のコマンドを叩き込んだ。
「――ハッキング開始。不要な例外処理はすべてバイパスして、メインルートをごり押しでこじ開ける……っ!」
カチリ、と脳内でシステムが噛み合う音がした。
次の瞬間、銃口から放たれようとしていた無数の赤いエネルギー弾が、一斉にエラーコードの文字に変わり、霧散するように消え去っていく。
ガオオオォォン……! と地鳴りのような重低音とともに、今まで固く閉ざされていた漆黒の巨大ゲートが、左右にゆっくりと重い扉を開いていった。
開かれたゲートの向こう側に広がるのは、冷たい青の光に満ちた、未知なる旧都の内部空間




