10.旧都の塔:門
ガァァァァンッ!!
300%のオーバークロックによって限界突破した出力が、右腕のブレードから一点に集中する。
【勇者の腕輪】から奔流のように溢れ出た青白い魔力電流が、【タワー・ガーディアン】の外骨格を形成する多重ファイアウォールを内側から文字通り「焼き切る」ように穿った。
【システム通知:クリティカルヒット】
対象に対するデバッグ(破壊)処理が完了しました。
獲得経験値:2,500 pt
獲得素材:『高密度エーテル・コア片』×1、『超硬質フレーム合金』×2
コア熱負荷ステータス:82%(※警告:これ以上の連続高出力稼働は危険領域です)
「はぁっ……、はぁっ……!」
ブレードを抜き去ると同時に、【朔】の胸の中央にある【コア】からカチリと冷たい冷却音が響き、全身を駆け巡っていた青白いスパークが急速に収束していく。
300%オーバークロックの反動による熱負荷が、肉体のフレーム内側からジンジンと痛みを伴って伝わってきた。
「……さすがに、このスペックの負荷を長時間維持するのはハードウェアの寿命を縮めるな。だが――」
【朔】は崩れ去る防衛兵器の巨大な残骸を見下ろし、冷徹に微笑んだ。
圧倒的な物量を誇ったタワー・ガーディアンは、もはやただの「スクラップの山」に成り果てていた。
「これで、旧都の塔へのアクセスルートは完全にクリーンアップされた」
息を整えながら振り返ると、【エレナ】が目を見張り、驚きと畏怖の入り混じった表情で立ち尽くしていた。
「いまの戦闘……。あの防衛兵器は、旧都の最深部を守るための特別な個体のはずです。それをあんな一瞬で……!」
「セキュリティがどれだけ厳しかろうが、弱点(バグの根源)さえ見つければ、あとは正しい手順でデバッグを執行するだけだ。行くぞ、エレナ」
足早に瓦礫の道を抜けた二人の目の前に、ついにその全貌を現した。
雲を突くようにそびえ立つ、漆黒と冷たい金属光沢に彩られた『旧都の塔』。
その巨大なゲートの前では、世界そのものの理がざわめくような不穏なノイズが、微弱な電流となって空間を震わせていた。
塔の最上部へと続く巨大なエントランス。そこはまさに、この世界の歪みを引き起こしている「本丸」の入口だった。
左手首の【勇者の腕輪】が、塔の深部から放たれる不気味なシグナルに呼応するように、ふたたび青く、しかし激しく明滅を始める。
「――さて。ここから先が本番だな」
元・システムエンジニアは冷徹な眼差しを塔の入口に向け、荒野の風を切るように一歩を踏み出した。




