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第5章 理解しがたい抵抗

議会は騒いでいた。


「市場介入は越権だ」

「財務省は王宮の意向に従ったのか」

「商人の自由を侵害している」


いつものやつだ。


財務省は、いつもなら折れる。


曖昧にする。

再検討する。

委員会に回す。


だが今日は違った。


副長官は、珍しく硬い。


「非常時条項の発動は合法です」


以上。


議場がざわつく。


「再検討は?」


「不要です」


冷たい。


普段の彼ではない。


俺は傍聴席からそれを見る。


あの人は、折れるタイプだ。


制度内で生きる人間だ。


なのに、折れない。


議会が散会する。


廊下。


副長官がトイレへ立つ。


その途中、ある議員が追いつく。


古参。

商人寄り。

笑っていない。


「珍しく、抵抗なさいますな、副長官」


副長官は歩みを止めない。


「実は、アレでして」


議員の目が細くなる。


「……アレですか」


一拍。


「そうです」


沈黙。


議員はそれ以上言わない。


副長官も振り向かない。


ただ、ひとこと。


「私は制度内で動いております」


「承知しております」


議員は小さく息を吐く。


「ならば、我々も制度内で動きましょう」


廊下の空気が、冷える。


俺は遠くから見ていた。


“アレ”。


具体名は出ない。


だが、伝わっている。


議会が知っている。


財務省が知っている。


商人も、たぶん知っている。


王宮会計局長。


アリサ・フォン・カレンベルク。


副長官が折れない理由は、制度ではない。


アレだ。


俺は天井を見る。


怖い。


何が怖いか。


誰も名前を出さないのに、

全員が同じものを思い浮かべていることだ。


不幸な男だ、俺は。


議会を黙らせる女が、

俺の婚約者だった。


そして俺は。


その数字のモンスターを、

なぜかまだ、愛している。

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