第11章 理解しがたい決着
議会は、静かだった。
静かな議会は、だいたい危ない。
前世で言うなら、取締役会が全員無言になった瞬間みたいなものだ。
わかりやすい。最悪にわかりやすい。
アリサは演壇に立っていた。
王宮会計局長として。
手元に書類の束がある。
アリサ基準では、異常な量だ。
「財政非常時監査の最終報告を行います」
声は変わらない。
いつも通りだ。
俺は傍聴席にいた。
もう失脚した宰相家の息子だ。
だが今日だけは、それでいい。
「結論から申し上げます」
議場が息を呑む。
「今回の暴動は、制度の失敗ではありません」
静寂。
「意図的な市場操作の結果です」
議場がざわめく。
ヴェルナーが座っている。
笑顔だ。
いつも通りの笑顔だ。
だが目が、笑っていない。
「証拠は」
「あります」
アリサは紙を一枚ずつ置いた。
投資組合の設立記録。
三家の在庫操作記録。
議事録、全十二回分。
そして。
「宰相家の執務記録です」
議場が、静まり返った。
「前宰相は、制度設計の段階でこの組合の存在に気づいていました」
ヴェルナーの顔が、白くなる。
「修正案を否決したのは、誰ですか」
アリサは議事録を開いた。
「第三回審議委員会。否決者、ヴェルナー・グロス議員」
ヴェルナーは立っている。
だが、もう何も言わない。
言えない。
数字が、全部語っているからだ。
副長官が立ち上がった。
「議長。本件、然るべき機関への告発を提案します」
賛成の空気が、議場を満たした。
ヴェルナーは、ゆっくり座った。
笑顔は、もうなかった。
俺は傍聴席から、それを見ていた。
アリサは演壇に立ったまま、書類を整えている。
終わった後も、仕事をしている。
この女は、いつもそうだ。
不幸な男だ、俺は。
数字のモンスターが、
数字で全てを終わらせた。
そして俺の胸が、
父に向かって、静かに詫びている。




