39話【想定外のこと】
「おはよ」
教室に着くなり直ぐに司が話しかけてきた。
「おっす」
「遊園地の件ありがとね
楽しんで貰えたなら嬉しいよ」
「いや、俺の方こそありがとな
入場チケットとか結構高いだろ
それを無料で入れたんだし」
「一応カップルのモニターってことになってたけどね」
やはりカップルのチケットだったということを司は気がついていたようだった。
「知ってたのか」
「まぁね
でも、涼介が凛華と行ったのは意外だったかな」
「色々あったんだよ…」
あんまり言いすぎるとより深く追求されるためあまり話さない。
「そっか……僕としては凛華も楽しんでくれてたから涼介に渡して正解だったよ」
それだけ言うと司は自分の席に戻って行った。
と思ったらまた戻ってきた。
「どうした?」
「言い忘れてたことがあるんだけど、今日の昼休み部室で話し合いをするからね」
「なんの話し合いだ?」
「詳しくは後で話すけど、大事な話し合いだよ」
「わかった
ていうか、元々昼休みは部室にいるから俺はいつもと変わらないな」
「そうだけど、一応言っておこうと思ってね」
それだけ言うと今度こそ本当に司は自分の席に戻った。
◇◆◇◆◇◆
「お昼に集まってくれてありがとう」
書道部の五人が席に座ったことを確認すると司は口を開いた。
「今日はなんで集まったの?」
舞も司が何を話すのかわかっていないようだった。
「それを今から話すよ
今日集まってもらったのは再来週の体育祭の件で集まってもらったんだ」
「体育祭……ですか?」
「うん、そうだよ
来週行われるのは知ってるよね?」
「はい
それは先生から聞かされていますがそれと部活何か関係あるんですか?」
どうやら蛍は体育祭について一切知らないようだ。
「今から説明するね
涼介達は知ってるだろうけど、うちの体育祭は二日間あるんだ……」
そこから始まった説明は涼介が朝に凛華に説明したものとほぼ同じような事だった。
涼介よりもわかりやすいということを覗いては。
「それで、今日集まってもらったのは一日目のメインとなる午後の競技について話すためなんだ」
「一日目のですか?」
涼介が一日目は関係ないと言っていた為不思議に思った凛華は聞き返しながら涼介を睨んだ。
「一日目のメインの競技は部活動対抗のリレーなんだ」
「あー、そう言えば今年は出れるのか」
部活動対抗リレーに参加するには部員が五名以上必要であるため、去年は参加できなかった。
そのため、涼介はその事をすっかりと忘れていた。
「ちなみになんのリレーなんですか?」
「リレーの内容は決まってないけど、五種目混合のリレーだよ」
「五種目………それは大変そうですね」
「うん……でも、お祭りみたいなものだから楽しんでやればいい………って言えればいいんだけど、今年はそうはいかないみたいなんだよね」
「どうしてですか?」
「一日目のメイン競技には優勝するとその部活が願ったものが貰えるって決まりなんだ」
二日目の借り物競争と同じように無茶苦茶なルールだが、一応願うのもは前もって生徒会に言わなければならない仕組みになっており、あまりに無茶なものは却下される。
「それでなんで頑張らなきゃいけないんだ?
優勝して欲しいものでもあるのか?」
司がみんなを巻き込んでまで欲しいものがあるとは涼介は思えなかった。
「いや、優勝して欲しいものがあるって訳じゃないけど、優勝しなきゃいけないんだ」
「どうしてだ?」
「複数の運動部が優勝すると貰えるものの中に『凛華をマネージャーとして入部させる』というのが入ってるんだ」
司は真剣な表情でそう言った。
だから、冗談では決してないのだろう。
「それは認められてるのか?」
涼介も真剣な顔をした。
「今回のに生徒会も参加するらしくて、生徒会の欲しいものも『凛華が生徒会の書記をする』というものらしいからほかの部活のものも認めているらしい」
体育祭の無茶を止めるはずの生徒会すら凛華を欲しがるのだから凛華は人気すぎるんだろう。
当の本人の顔を見るととても迷惑そうな顔をしていた。
涼介の前ではたまにする顔だが、部活にいる時にこんなにも露骨に嫌な顔をするのは珍しいことだろう。
「先生達はなんて言ってるんだ?」
「なんか、野球部とサッカー部の部員が先生に凛華がマネージャになったら死ぬ気で練習して全国大会に行くって言いながら全員で土下座したらしくて……」
「アホだな」
「え、何それウケる」
舞は大爆笑しているが蛍はそれを聞いて若干引いたような顔をして、凛華は複雑そうな顔をしていた。
話し合いできるような雰囲気では無くなった場を切り替えるためか、司は「パンッ」と手を叩いて注目を集めた。
「とりあえず、もう決定事項らしくて、変えられないみたいだから何がなんでも優勝するしかないんだ」
それを聞き皆真面目な顔になった。
さすがに部員を一人取られるのはこっちとしても困る。
それに……。
「でも優勝するって可能なんですか?」
蛍の疑問は当たり前のものだろう。
野球部やサッカー部などの運動部に普通なら勝てるはずがない。
「まぁ、種目によっては可能かな」
「種目って何やるんですか?」
「それは水曜日に決まるよ
でも、種目と内容は僕達も決めることが出来るよ」
「えーと……すみませんが詳しく教えてください」
謝りながら聞いてくるあたり蛍は律儀だなぁと感心しながら涼介も興味がなく忘れていた種目選びについて説明する司に耳を傾けた。
「種目はリレーに参加する部活動が種目とその内容を決めて、それをくじで引いて五つの種目を決める感じだよ
ちなみに、バスケ部がフリースロー5本勝負とかにした場合はバスケ部には何かしらのハンデが加えられたりするから、何を選んでも公平性は保たれるよ」
だから、司が言っていた通り種目によって勝てるということなのだろうと納得した。
「とりあえず、放課後にどの種目がいいか決めるから各自自分が得意なことを生かせる種目を考えてきてね」
そう司が言って昼休みは解散になった。




