12.期末実技④ 形態変化
晃太はバカではあるがアホではない。
戦闘においては正面から突っ込んでいくことも多いが、それだけではなく、瞬時の判断力や機転がよく働く。
それ故、さっきの俺の“メテオストライク”もあんな防がれ方をされてしまった。
俺は晃太の次の動きに警戒しながら、攻撃の隙を伺っていると、晃太は右腰にあるSギアスイッチに手を触れる。
「“形態変化”」
そして、そう唱えると、晃太の全身が光りだし、晃太を纏っていた魔法強化装甲がその形を変えていく。
某仮面○イダーの初期形態を思わせるような身軽な装甲から一変し、強化装甲は鎧のように厚くなり、防御が固そうな面持ちになり、そして右手にはロ○クマンのロッ○バスターのようなブラスターが装備された姿へなった。
「ブラスターフォームで来たか……」
ブラスターフォーム。
晃太の“変身”の派生の1つで、その名の通り放出系や狙撃系の魔法に特化したフォームだ。
ちなみに、晃太が普段の“変身”でなっているフォームはウォーリアフォームといい、素手での戦闘を一番得意としているバランスの良い姿である。
「”ウォーターショット“!」
晃太は右腕のブラスターを俺に構え、通常よりも威力の高い“ウォーターショット”を放ってくる。
「ふっ!」
俺はギリギリで“ウォーターショット”をかわし、すかさず反撃体勢に入った。
ブラスターフォームはオートスキル〈銃士〉が発動する。
〈銃士〉は、弾丸や砲弾などの放出系魔法の威力と速度が上昇するスキルで、初級魔法でさえスキル発動対象であれば厄介な攻撃となる正にブラスターフォームにピッタリのスキルだ。
だが、ブラスターフォームの特徴として、逆に打撃魔法や自身のスピードはウォーリアフォームより劣るので、俺的には接近戦に持ち込みたいところである。
「“風手裏剣”!」
俺は素早く“風手裏剣”を両手から放ち、晃太に攻撃する。
「くっ……!」
ブラスターフォームによって動きが鈍くなった晃太は、“風手裏剣”を分厚い装甲を利用しガードしてきた。
「まだまだ!」
俺はさらに“風手裏剣”を追撃で放ち、晃太に反撃させる暇を与えさせないようにする。
強化装甲でガードしているとは言え、少しずつダメージは入っていってるはずだ。
完全に防御体勢に入った晃太の姿確認した俺は、すかさず“風手裏剣”を打ち止め、“エアロブースト”で晃太との距離を一気に縮める。
「げっ、しまっ……!」
一瞬のことに気を取られたのか、晃太はそんな声を上げる。
「“メテオスマッシュ”!」
そして、腕を胴体の前でクロスさせたままの防御体勢だった晃太に、俺は思いっきり紅蓮のフォースを纏った拳を突き出した。
「ぐぅっ!」
“メテオスマッシュ”を防御体勢とは言え、まともに食らった晃太は、場外に飛ばされないよう足で踏ん張るも、殴られた衝撃で電車道を作りながら後ろに飛ばされていく。
「ふう……危ねえ危ねえ」
「ちっ……」
アンチアビリティの張ってあるギリギリのところで踏ん張りきった晃太は、表情は装甲で見えないが少し焦ったような声を出す。
正直、これで場外まで晃太を出せると思っていた俺は思わず舌打ち。
「さあ、今度はこっちの番だ―――」
―――ビイイイイイイイイッ!
「―――ぜ?」
そして、晃太が反撃しようとしたところでブザーが鳴り、俺と晃太の試合の終わりを告げる。
「そこまでだ!」
そして、六花先生の言葉とともに、俺と晃太はそれぞれレッドモードと変身を解き、フィールドの外へと出た。
「2人ともお疲れー」
フィールドの外に出ると、既に全ての試合を終えた美穂と紗奈が、俺と晃太のところにやってきた。
「ふっ……我程ではないが、まあ中々良き戦いであったぞ。……特に、晃太のあの未知の姿はかっこよ……ごほん、悪くなかった……」
紗奈が少し興奮した様子で晃太にキラキラした眼差しを向ける。
きっと晃太のブラスターフォームが紗奈の琴線にでも触れたのだろう。
「そーだよね。私たちチーム組んで3ヶ月以上経つのに、南といい晃太といい何かまだ私たちの知らない力持ってそうだよね」
美穂はそう言って俺と晃太のことを半目で見てくる。
「こいつはともかく、俺はそんなことないぞ、多分……」
言っても、俺の場合は“朱凪”はまだ完璧に扱えなかったし、〈クロス・バースト〉もまだ全然扱えないし、別に隠してたわけじゃなく扱えないものは使ってこなかっただけの話だ。
「……まあ、俺は“変身”で基本のウォーリアフォーム、さっきのブラスターフォーム、あともう1つのフォームがあるくらいだな。今までは使う場面がなかったから使わなかったけど。あ、ちなみに今回ブラスターフォーム使ったのは、いつもみたいに接近戦で戦ったら南に姑息な手何かやられそうな気がして、それを警戒してって感じだな」
「おい」
別に間違っちゃいないかもしれんが、その言い方やめろ。
「ふーん……そうなんだ……」
「な……まだ未知の姿がある……だと……!」
なぜか疑惑の目を向けてくる美穂と、まだ見ぬ晃太のフォームに目をキラキラさせる紗奈。
まあ、俺は晃太のあと1つのフォーム知ってるし見たことあるけど。
「ま、今度ダンジョン行く時にでも見せてやるよ」
晃太は紗奈にヘラッと笑ってそう言った後、俺の方を向いてきた。
「……にしても、今回は引き分けだな」
「……いや、俺があのまま押しきってたらお前場外で負けだったし実質俺の勝ちだろ」
一瞬だけ流れる沈黙。
「……でもよ、そんなこと言ったら俺があの後の反撃で南に勝ってた可能性だってあるだろ?」
「……可能性って考えれば晃太が反撃する前に俺が“エアロブースト”でもう一回距離詰めてお前を押し出して勝ちだった可能性の方が高いぞ?」
再び流れる沈黙。
「ちょ……2人とも?」
そこで美穂がどうしたんだと言わんばかりに声を掛けてくる。
「南……これじゃ埒があかないな」
「奇遇だな。俺もそう思ってたところだ」
「こうなったらあれだな」
「そうだな……あれしかないな」
俺と晃太は互いの意志を確認し、決着を着けるべく構える。
「え……え? 南? 晃太?」
「おお……これはまさか……!」
俺は集中力を高め、思考を巡らす。
「……行くぞ」
「ああ」
俺と晃太は互いに拳を突きだし、勝負の体勢に入る。
そして。
「「じゃーんけん!」」
「お前らさっきからうるさいぞ! 静かにしろ!」
俺と晃太の恒例となりつつあるじゃんけん勝負を行おうとしたら、うるさくしすぎたのか周りからは注目を浴び、普段大声を出さない六花先生に怒鳴られてしまった。
その後、俺と晃太と巻き添えを食らった美穂と紗奈は実技テスト終了後、六花先生と斉藤先生に呼び出しをくらい、ガッツリと絞られたのであった。




