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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第2章 炎天下の熱闘
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12.期末実技② 美穂VS綾

「―――“噴火鉄拳”!」

「きゃあっ!」

「場外! そこまで!」


 二階堂戦からしばらく空いた俺の実技テスト2戦目。

 相手は須藤ということで、氷のフォースを操る須藤は俺に取って有利対面の試合となり、少し粘られながらも場外に押し出し、時間切れになる前に決着が着く形となった。


「くうっ! やられたー!」


 フィールド外で須藤が悔しそうに叫ぶ。


「残念だったな。これが相性差ってやつだ」


 俺は須藤の元へと近づきそう言うと、須藤がさらに悔しそうな顔をする。


「……確かにそれもあるかもだけど、そんなの関係なしに日向がすごい余裕そうなのが腹立つんですけど」

「いや……別にそんなことはないけど……」


 実際、試合開始早々からの須藤の猛攻には俺も攻めあぐねたし、相性的に有利なところを突いて強引に攻撃して、何とか隙が出来たところを“噴火鉄拳”で押し出したって感じだったし。


「そんなことあるし……。ま、あんたと二階堂の試合見てたけど相性関係なしに日向優勢だったし、元々私と日向の実力差があるってことか……」


 須藤は1人で納得したような顔をすると、


「さて、次は頑張らなきゃ」


と、すぐに次の試合に向けて切り替えていた。


「次は神崎美穂! 冬木綾!」

「あ、美穂と綾の試合だって! 見ようよ日向!」

「おう、いいぜ」


 俺は須藤と共に試合が見やすい位置まで移動し、そこに座り込んだ。


「そういや、美穂の1試合目、俺と被ったから見れなかったんだよな」

「ああ、そう言えばそうだったわね。とりあえず、美穂と陸の試合は互いの攻防がずっと続いて時間切れ。陸がガンガン攻めに回ってたけど、美穂が上手く防御で攻撃を防いでるっていうのがずっと続いてた感じ」

「へえ」


 ま、あいつダンジョンとかでモンスターとの戦闘になれば全員の防御してくれるから、防御系魔法に関しては既にお手のものだろう。

 そして、俺はもう1つあることを考え、ため息が出てしまった。


「……はあ」

「何? 急にため息なんかついて」

「ああ、いや、うちのチームって美穂が主に防御役やってくれるんだけど、そう言えばもう1人防御魔法使える癖に、モンスターとかとの戦闘中に全く使う気のない痛い中二病のやつがいたなーって……」

「おい、それはもしかしなくても我のことか?」


 俺の愚痴みたいなものに対して、背後からそんな言葉が返ってくる。


「って、いたのかよ!」


 後ろを向くと、そこにはムッと機嫌を少し悪そうにした紗奈が突っ立っていた。


「日向、うるさいぞ」

「あ……すいません……」


 六花先生に注意され俺が謝った後、紗奈が変わらず不機嫌な顔をしたまま俺の隣に座りこんできた。。


「それでは、試合始め!」


 直後、美穂と冬木の試合が始まり俺たちはそれを見る。

 すると、紗奈が試合に目を向けたまま、口を開く。


「……言っておくが、我が“プロテクト”を自分で使わないのは美穂が防御を含めてサポートをやってくれているから任せているだけであって、必要とあらば我も“プロテクト”ぐらい使うわ」

「…………」

「……これは本当だぞ」


 無言で紗奈を見てると、紗奈もこちらを向き、俺の顔を見て本当だと言わんばかりの目で見てくる。


「……わかったよ、信じるって。……とりあえずそれはわかったけどよ、さっきから何でそんな機嫌悪そうなんだよ? 俺の言ったことがそんなに気にくわなかったのか?」

「……いちいちそのぐらいのことで怒ったりしないわ。……別に何でもない」

「だったら何で―――」

『おおおっ!!!』


 その時だった。

 周囲から驚くような声が聞こえてきたので、視線を紗奈から美穂たちが試合をしているフィールドに戻すと、そこには美穂の攻撃魔法をことごとく跳ね返していく冬木の姿があった。

 冬木のアビリティはサイキック。

 俗に言う超能力である。

 超能力もいくつか系統が分かれており、操作系や強化系、伝達系等の系統が存在する。

 この中で冬木がメインで使うのは操作系で、“サイコキネシス”で相手の自由を奪ったり、相手のアビリティを跳ね返したりするのが得意らしい。

 冬木は普段は大人しめというか、あまり目立たないタイプなので、今でこそ落ち着いてきてはいるものの、入学初っぱなから騒がれて目立ち、天才魔法少女と呼ばれた美穂とはある意味対極的な存在である。

 その冬木が美穂と今のところ互角にやりあっているというのが周囲……特にⅡ組の連中に驚かれていた。

 ギャラリーの声には、「あんな子いたっけ……」とか、「冬木って意外とやるのな……」とかそんな声が飛びかっている。


「くっ……“プロテクト”!」


 冬木が跳ね返した攻撃は全て美穂の方向に跳ね返され、それを美穂は“プロテクト”で何とか凌ぐ。


「ふっふっふ……うちの綾はやれば出来る子なのよ……!」


 試合を見ながら誰に言うわけでもなく、嬉しそうにそう呟く須藤。


「よっしゃあいいぞ! そのまま行け冬木!」

「うるさいぞ長谷川!」


 そして、少し離れたところで大声を出して冬木を応援して六花先生に注意される学。


 ……やっぱりこいつら気が合うんじゃないか?


 さて。

 試合の方は、美穂が珍しくガンガン攻撃魔法を放っていくが冬木はそれを全て跳ね返していく。


「“エンチャント・ハイスピード”!」


 美穂は跳ね返された攻撃を高速移動でかわしていき、尚且つ自身が“サイコキネシス”の標的にならないように動き続ける。

 多分だが、この試合は美穂が不利な相手、冬木が有利な相手として組まれている。

 美穂は支援系全般に6属性の攻撃魔法に加え、〈詠唱破棄(ノットスペル)〉とパット見はとんでも性能の持ち主のように思えるが、その万能性故に逆に覚えらることが多すぎたためなのか、決定打になる攻撃魔法を持ち合わせていない。

 厳密に言えば、“グングニル”があるのだが、あれは一撃必殺とも言える魔法で燃費も悪いので使用するならば、文字通り一撃で決める必要がある。

 そのため、ごり押しできる攻撃手段がないのが弱点とも言え、冬木みたいなタイプを相手にするとどうしてもジリ貧になってしまうのだ。

 逆に冬木はサイキックを使う力、想力(そうりょく)が切れないか、自分の力を上回る攻撃をされない限りは大抵“サイコキネシス”でどうにかできる。

 ま、多分この試合は時間切れで終わるだろうな。

 そう俺が予想した数分後、美穂と冬木の試合は予想通りお互いに決め手に欠け、時間切れになって終了した。

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