12.期末実技① テスト開始!
「―――全員いるな。ではこれより実技試験を始める!」
実技テスト当日、大特訓場に集まっているⅠ組とⅡ組の前で、六花先生がいつもより凛とした張りつめるような声でそう宣言した。
生徒たちの間には六花先生の声のおかげか、緊張感が迸りほとんどのやつらが顔を強張らせていた。
「改めて、実技試験の詳細を説明する。試験内容は1対1の試合を1人3戦行ってもらう。試合相手は直前まで伏せておくが、それぞれが有利な相手、不利な相手、そして同じくらいの実力の相手になるべくなるようにこちらで組んだ。制限時間は5分。その間にどちらか一方が場外……アンチアビリティで囲まれたフィールドから体が出るか、降参を申し出た場合はその時点で試合終了とする。また、こちらで試合続行が危険、もしくは不可能と判断した場合も試合終了とさせてもらう。尚、この場外や降参等はテストの点数にはあまり響くことはないので遠慮なく申し出てくれ。あくまでこれは、各々が自分のアビリティをどれだけ理解し、扱えるかを見るテストであることを忘れないように」
……なるほど。
自分の実力を見極めて降参するのも、自分のアビリティに対して理解があるってことなんだろう。
「質問のある者はいるか? ………………いないようだな。ではテストに入る! 審判は私と斉藤先生が努めるので呼ばれた者はフィールドに入るように!」
六花先生と斉藤先生がそれぞれ手に持っていたリモコンを使って、アンチアビリティを起動させ、アンチアビリティがフィールドを形作るように張り巡らされていく。
大特訓場にバレーコート2つ分程の大きさのフィールドが2つ出来上がると、その2つのフィールドの間に生徒たちがごちゃっと集まる。
自分の番以外は、テストの邪魔にならなければ自由にしていていいらしいのだが、この中にいないとダメなので、全員試合を見ようと楽な姿勢で場所を確保していた。
「では行くぞ。まずは、赤柳陸! 神崎美穂!」
六花先生に呼ばれ、初っぱなから美穂が呼ばれ、俺たちのクラスの出席番号1番、赤柳 陸と試合との試合になった。
陸は、その名に相応しい地属性のフォースのアビリティで、持ち前の攻撃力とトリッキーな動きで相手を翻弄するのが得意なやつである。
一方、美穂は言わずと知れた〈詠唱破棄〉を最大限に活かし、“プロテクト”で相手の攻撃を安定して受けられるのと、6属性の魔法攻撃でほとんどの相手に相性的に有利を取ることが出来る。
これだけだと、美穂の方が若干有利に見えるが、美穂には協力な攻撃魔法が“グングニル”以外にはないので、決定力に欠けることが多い。
なので、この組み合わせは実力が均衡していると言っていいのかもしれない。
「ではこっちのフィールドも始めるぞ。最初は二階堂瞬、それと日向南だ。」
おっと、いきなりかよ。
美穂の試合を見ようとした矢先、斎藤先生に名前を呼ばれ、俺はもうひとつのフィールドの方へと向かった。
そして、フィールドに入ると、先にフィールドに入っていた二階堂と目が合う。
二階堂のアビリティは水のフォース。
これは相性的に見て、明らかに俺が不利の試合である。
「よお日向、悪いけど勝たせてもらうぜ」
二階堂は青い瞳を俺に向け、自信満々の表情を浮かべる。
「それ、負けフラグだぞ」
俺が挑発がてらそう言うと、二階堂はムッとした顔になる。
もちろん、俺はフラグなんてもん信じちゃいないが、二階堂には少し効いたみたいだ。
「では、始め!」
そして、俺と二階堂の試合が始まった。
「“水流弾”!」
まずは先制で二階堂が水の弾丸を勢いよく放ってきた。
「よっ」
俺はそれを横に跳んで回避し、即座に“風手裏剣”を何発か放つ。
「“水壁”!」
二階堂は、水の壁を自身の前方に出現させて“風手裏剣”を防ぐと、両手から水をジェット噴射の要領で発射させ、俺との距離を縮めてくる。
「“水流刃”!」
勢いそのままに右手に発動させた水の剣を横一文字に払ってきた二階堂。
「“火炎刃”!」
俺は攻撃を受けまいと、“火炎刃”で迎え撃ち“水流刃”を受け止める。
「おい日向、このままだと相性的に俺の方が有利だぞ?」
ニヤリと笑う二階堂。
確かに二階堂の言う通り、相性差というのはどうしてもあるもので、俺の“火炎刃”は徐々にその力が弱くなっていき、二階堂に少しずつ押されていく。
だが。
「このままだったらな」
俺はそう言い返し、一呼吸置いた後、レッドモードになり、フォースの力を上げた。
レッドモードになると、“火炎刃”の力は戻るだけでなく、逆に“水流刃”を蒸発させていく。
「っ……! そういえばそれもあったな!」
二階堂は慌ててもう片方の手で“水流刃”を発動させ、俺に降り下ろしてくる。
「させるかよ」
俺はすかさず“火苦無”をもう片方の手で発動させ、水流刃を相手の刃の根元の部分で受け止める。
そして、お互いの両手が塞がれた状態になったところで、俺は二階堂の腹部に向けて蹴りを放つ。
「おぐっ!?」
蹴りは予想外だったのか、もろに腹に食らった二階堂は後ろによろめいて腹を押さえる。
「ぐっ……それありかよ……!」
「試合だしありだろ」
そう言って、お互い斎藤先生の方を向くと、うんうんと頷いていたのでどうやらありらしい。
「というわけで行くぞ。“大火手裏剣”!」
まだ万全の体勢を整えていない二階堂に対して、俺は容赦なく“大火手裏剣”を放った。
「くそ……“水壁”!」
二階堂はすかさず“水壁”で防御体勢に入るが、“水壁”が完全に出来る前に“大火手裏剣”が二階堂に直撃する。
「うわっあっっっつ!!」
咄嗟に両手をクロスさせてガードしたのか、腕の“大火手裏剣”が直撃した部分が赤くなっていた。
……一応手加減したし、あいつの水のフォースで少しダメージ軽減されてるはずだし大丈夫だろ……多分。
二階堂はすぐに腕を水で覆い冷やしていた。
「この野郎……やってくれるじゃねえか。こうなったら本気出し―――」
―――ビイイイイイイイイイイイイッ!!
「そこまでだ!」
二階堂が何か喋りかけてると、例のごとくタイマーのブザーが鳴り響き、俺と二階堂の試合が終了を知らせる。
「よし、次の試合まで時間あるから休んでおけよ。二階堂は、そろそろ保健室の先生が来るはずだから、来たら火傷したところ回復してもらえ」
斎藤先生はそう言うと、次の試合をする生徒の名前を呼び始めた。
「二階堂……その、悪かったな、火傷」
「あ? いいよこれなら。どうせ治してもらうし。それより日向、次は勝つからな」
二階堂はそう言うと、歩いていってしまった。
うーむ、実技テストだし、多少の怪我もありの想定で先生たちもやってるんだろうけど、二階堂には悪いことしちまったな。
次は気を付けないと。




