11.夏の始まり② 知られざる過去
―――目の前に立つは、激戦を重ねに重ね、すっかり顔つきが逞しくなった男と、その仲間たち。
「―――う!! お前を倒せば終わりだ!」
そう言って、男は我に向かって剣を突きつける。
「ふっ……! よくぞここまで来た……! さあ、最終決戦と行こうではないか!」
我がそう男たちに言い放った直後、史上最高の戦いが始まった―――。
「ふっ、懐かしいことを思い出したものだ……」
この広い空間に1人でいると、ふと昔のことを思いだし、誰に言うわけでもなくボソッと呟き、我は高い天井を見上げた。
特訓場を出て少し歩いたところに、地下へと続く階段があり、そこを下っていくと大特訓場の扉が見えてくる。
扉を開けると、中にはサッカーグラウンドぐらいの空間が広がっていて、まさに大特訓場と言うに相応しいところだった。
「へえ……結構広いんだな」
今までここに足を踏み入れたことはなく、中の広さに関心していると、美穂と紗奈も同じように場内を見渡して「おお……」と驚いていた。
「ん? あれは……」
そして、六花先生が言っていた通り、場内の中心で天井を仰いでいる人物が1人いた。
「……む? ヒナタではないか」
「よ」
天井を仰いでいた人物、鹿央は俺たちに気がつき、声を掛けてきたので俺たちは鹿央のところまで近づいていく。
「鹿央もここで特訓か?」
「うむ。我があそこで特訓すると危険なのでな……」
「そうか……」
鹿央の操るアビリティ、闇のフォースはその強い力のためか、普段は力を抑えているらしいのだが、万一にも力の調整を間違えてしまったら周囲を危険にさらしてしまうとか前に言っていた気がする。
こいつの中二病のせいで、いまいち信じきることもできないが、その実力もまた本物なのできっと本当のことなのだろう。
「ところで、“も”ということは、ヒナタたちもここで特訓か? ……まあここに来たということはそうなのだろうが」
「まあな」
「そうか。……ところでフクヤマよ、何故さっきから我をそんな敵意の目で見てくるのだ?」
紗奈の顔を見ると、鹿央を睨み付けるような視線でずっと見ていた。
「……何してんのお前?」
「……こいつ、闇の使い手、我とキャラ被る、敵」
「何その喋り方」
最近思うんだが、紗奈ってキャラが一貫しないよな……。
「……故に、鹿央! 貴様に勝負を申し込む!」
「断る」
そして、唐突に鹿央に勝負を申し込む紗奈だが、鹿央に即答で断られビックリする紗奈。
「何故!? ……! そうか、我の力に恐れをなして……!」
そんなことを言う紗奈だが、こいつは体育祭の時に鹿央に対して自分がビビっていたのをもう忘れているだろうか?
「そういうわけじゃないんだが……ふむ、困ったな」
指を顎に当てて、この状況をどうしようか悩んでいる鹿央。
正直、俺としては放っておいてさっさと自分の特訓したいのだが、一応うちのメンバーが鹿央に迷惑をかけている形になっているからそういうわけにも行かない。
……そうだ。
「鹿央、ちょっとこっち来い」
「何だ?」
俺は鹿央を連れて、少し離れたところで声量を抑えつつある提案を持ちかける。
「鹿央、紗奈と戦ってくれ」
「むう……フクヤマの力は確かに強いが、それでも我と勝負にはならんぞ?」
「なら一瞬で終わらせりゃいいじゃねえか」
「しかし、それをするとフクヤマの性格的に落ち込むのではないか?」
……ほう。紗奈と大して絡みがない割にはよくわかってるじゃないか。
「じゃあ手加減するとか……」
「それはフクヤマに失礼だろう」
鹿央も中々に面倒くさいやつだな。
だが、それも想定済みだ。
「なら、お前は特訓のつもりで紗奈の相手をしてやればいい」
「? どういうことだ?」
「つまりだ。鹿央は紗奈に特訓相手になってやるつもりで勝負してやればいいんだよ。鹿央には申し訳ないけど、紗奈はああなると面倒くさい。なら、紗奈の弱そうなところを突いていってあいつにそれを気づかせながら戦えば、紗奈はそのうち疲れるだろうし、鹿央も手を抜いたことにはならない。これが一番丸く収まると思うんだが……どうだ?」
「ふむ……」
鹿央は一瞬考えるように黙り、そして口を開いた。
「まあいいだろう。それで役に立つというのも悪くはないしな」
「サンキュー。あとでジュース奢るよ」
こうして鹿央の説得に成功し、俺たちは2人の元へ戻る。
「……2人で何をこそこそ話していたか知らぬが鹿央、我と勝負―――」
「いいぞ」
「……え?」
「だから、受けて立つと言っている」
「……ほ、ホントに!?」
一瞬、素が出た後、紗奈は「あ……」としまったみたいな顔をした後、慌てて決め顔をする。
「コホン……ふっ、では勝負と行こうでないか……!」
「では……」
紗奈と鹿央は互いに距離を取り、それぞれ戦闘体勢に入る。
「どこからでもかかってくるがいい」
「……その言葉、後で後悔することになるぞ!」
そして、紗奈の先制で2人の勝負が始まった。




