↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第2章 炎天下の熱闘
85/215

11.夏の始まり① ダメ人間と茶番劇と

 テストが無事に終わり少し経った。

 外は日に日に暑さを増していき、すっかり季節は夏に入っていた。

 ……という感じで、現在は午後の授業に入り、科目はアビリティ実技なのだが。


「今日は、実技テストに向けて自習とする。テスト内容は前に言った通り、Ⅱ組と合同の1対1の模擬戦闘を1人3戦だ。アビリティ科目は基礎学と実技の点数の平均を成績とするので、基礎学で奮えなかった者は、実技で取り返せるように頑張ってくれ」


 六花先生はそう言うと始まりの合図を送り、生徒たちは各々テストに向けて、アビリティの練習や調整のために訓練場内に散っていった。


「だってよ学。良かったじゃねえか。これで実技で高得点取ったら基礎学の赤点だった分取り戻せるかもしれないぜ」

「はあ……別にそうだとしても、どうせ赤点あと2個あるから補習は確定だしな……」


 学はため息をついていかにもやる気なさげなオーラを放っていた。


「そんなに落ち込むなら真面目に勉強すりゃあ良かっただろ」


 聞いた話によると、学は須藤たちチーム仲間が勉強会を開いてくれたにも関わらず、ほとんど勉強することなく教科書を眺めるだけだったり、人の勉強している様子を眺めていたりしてたらしい。

 須藤が叱っても、勉強する振りだけで全然真面目に勉強しないので、もう呆れて放っていたと、須藤が愚痴っていたのを聞いた美穂が言っていた。


「いやさ、聞いてくれよ南」

「聞くだけなら聞いてやる」

「ほら、俺って中間はギリギリで赤点免れたじゃんか」

「本当にギリッギリでな」

「でさ、その時もノー勉だったから今回っもどうにかなるだろうって思ってたわけよ」

「結果ダメだったじゃねーか」

「……何か最近南俺に対して厳しくね?」

「気のせいだろ」

「無意識……だと……!」


 ……最近わかったことがある。

 (こいつ)は、結構ダメ人間だ。

 まずは入学してから1ヶ月くらいだろうか、学はいつも予鈴ギリギリに登校するようになった。

 まあ、最初は朝弱いのかな程度にしか思ってなかったのだが、最近は遅刻もするようになってきた。

 理由を聞くと、単に夜更かししてるだけらしい。

 そして、面倒臭がりである。

 授業でノートを取るのを面倒臭がり後で俺の写してたり、教室掃除の当番の時はバレないように密かにサボっていたり、あとはこれまた聞いた話だが、ダンジョンに行く時は大体面倒臭がるらしい。


 ……何故冒険者になった?


 そんなツッコミをしたくなる学は、ダルそうに辺りを見渡して……その後顔を引きつらせた。


「長谷川!」


 学が顔を引きつらせた原因、声の主である須藤は、ズンズンという擬音が似合いそうな足取りでこちらにやってきた。


「何だよ」

「何だよ、じゃないっつーの! ほら、やるよ! せっかくの赤点回避チャンス!」

「だから、これで回避してもあと2つ―――」

「いいから!」


 須藤はそう言って学の腕を掴んで引っ張る。


「ちょ、待てって! そう! 俺南と特訓する約束してたんだよ! な!?」


 おお、よくそんな咄嗟に嘘が出るもんだな。

 

 ある意味学に感心してると、須藤が俺の方を向く。


「本当? 日向」


 そして、俺に確認を取ってきた須藤は疑惑の目で俺に聞いてきたので俺は笑顔で答えた。


「いや。そんな約束全く以てしてないから心置きなく連れてってくれ!」


 そんな俺の言葉に須藤も笑顔になり、


「そっか。ありがとね」


と言ったあと、学を見て真顔になり、


「さ、行くよ」


と掴んでいた腕を引っ張ってそのまま学を連れていってしまった。


「この裏切り者ー!」という言葉を放ちながら連行された学を見送った俺は、辺りをキョロキョロと見渡す。


 茶番劇も終わったことだし、俺もそろそろ自主特訓しないとな。

 個人的には、この自習は実技試験抜きでラッキーなことだ。

 一応、今までも家では定期的にアビリティの特訓はしていたが、体育祭で見えた課題や古城での戦いで最近は特訓の量を増やしてきてる。

 だが、家では出来ることが限られてくるし、かと言って、ダンジョンで特訓しようものならいつモンスターが襲ってくるかもわからない状態となり常に警戒しておかないといけないので、思いきり特訓できる環境が欲しかったのだ。


「さて……」


 特訓場であれを練習するには少々狭い。

 辺りを見渡していたのは、場内で生徒の特訓の様子を回って見ていた六花先生を探していたからなのだが、少し離れているところにいるのを見つけた。

 そして、先生の元まで行き話しかける。


「先生」

「日向か。どうした?」

「ここ以外で使っていい場所ってありますか?」

「ここ以外? まあ、あるにはあるがどうしてだ?」

「ちょっとここではやりづらいフォースの練習を……」


 俺がそう言うと、六花先生は察しがついたのか、ニヤッと口元を緩ませた。


「……なるほど。さしずめ体育祭の時に使っていた“アカナギ”とやらの練習か」

「はい」

「なら、地下にある大特訓場を使うといい。あそこなら広いから思いきりやっても大丈夫だしな」

「わかりました! ありがとうございます!」


 先生にお礼を言って早速地下に向かおうとすると、先生に「あ、待て日向」と止められる。


「さっき、お前と似たようなこと言ったやつがいてな。先にそいつが使ってるから、使うなら話してから使うといい。あと、授業終わる前にはここに戻ってくること」


「? わかりました」


 先客? 誰だ……?


 まあ行けばわかるかと俺は思い、地下に向かう。


「南」


 ……というところで声を掛けられた。


「……どうした?」


 声を掛けてきたのは美穂で、その隣には紗奈もいる。


「さっき六花先生と話してたからどうしたのかなーって」

「ああ、それなら“朱凪”の練習したい旨伝えたら、地下の特訓場使っていいぞって言われたから今から行くとこだった」

「へえ……ねえ、私も行ってみていい?」

「まあいいけど……」

「よし! 紗奈はどうする?」

「ふっ……地下か……我の魔法は強大故、この狭きところでは大した練習も―――」

「じゃあ行くか」

「ちょ……人の話は最後まで聞かぬか!」

「どうせ来るんだろ?」

「うっ……ま、まあ……」


 紗奈少し不満そうにしながらも頷く。

 行くなら行くと一言だけ言えばいいのに、こいつは言い回しがいちいち長い。

 実技は2時間授業とは言え、貴重な時間だ。

 紗奈にはほんのちょっぴりだけ悪いような気もしなくもなくないが、こいつの長ゼリフで無駄にするわけには行かないのだ。


「さ、行くぞ」


 俺はそう言って、美穂と紗奈とともに地下の特訓場へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。